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憎悪と感謝と……  作者: アッキー
第3章 支配と解放と……
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3.22 彼の元へ

「しっかり掴まってて!」


 ラヒンの手を掴み引き寄せ、胸に抱くとリガンは勧告した。実際カタンの手下共から逃げきる為には常に走らなければならない。走ることに専念する以上、ラヒンに関心を常に向けることなど出来ないのである。

 しかし当のラヒンはリガンの服に掴みながら不安げに、リガンの背中越しに後ろ側を見つめている。

 何故ラヒンが後ろを気にするのか、今のリガンにはラヒンの気持ちを洞察することが出来た。


「大丈夫、あの人達も助け出す。けどその前に体制を立て直す為にもここから出ないと」


 リガンはラヒンに約束した。あの人達、つまりトラルンの住民をカタンの支配下から解放すると。


 ラヒンの考えはリガンと同じものである。また共通の思いを抱いていた点からリガンはラヒンに対し近信感を抱くようになった。二ヶ月一緒にいたトルクにはない近信感を。


 リガンの口約束に納得し、ラヒンは抱いていた心配事を取り払うとリガンの胸にしがみつく。それを確認したあと、リガンは走る速度を上げ建築地区方向へとむかった。


 しかし先程リガンがラヒンにした口約束は少しばかり嘘が混じっている。

 リガンは逃げる口実として体制を立て直すとラヒンに説明したがこれは正しくない。

 リガンの今の目的はラヒンをここから救い出すためであった。ラヒンをここまで連れてきてしまったのは自分であり、責任がある。

 ハラルの話を聞いて、リガンの中では住民達を助けたいという思いが確かに強くなったが、それ以上にラヒンの事が大事である。

 そのラヒンに対して責任を負っているという考え方自体はリガンが毛嫌いしているトルクの考え方に酷似しているが、あくまでこれは人助けとして自身に無理矢理納得させているリガンである。


 ラヒンを抱えたリガンは幾人いる監視係の制止を無視し、走り続けている。

 やがて農業地区の出入口が見えくると同時に一人の男が目にはいった。

 その男にリガン・ラヒン共に見覚えがあった。何せその男に会うのは三度目であるからだ。

 一回目はトルクの搬送の手伝いとして、二度目はここまでの案内役として。

 そして彼はリガンのポーチを奪った相手でもある。そしてそのポーチは今や彼の腰につけられていた。

 トラルンから脱出する際二つあるポーチの中にそれぞれ入っているメガトリ粉、メガユイ粉は役立つ物である。

 リガンは決意した、取られたポーチを取り返すと。


「しっかり掴まってて。これから粗っぽいことするから」


 胸元に抱えているラヒンに対しリガンは勧告する。それを聞き、ラヒンはリガンの服を強く掴み振り落とされないようにした。

 それを確認するとリガンはラヒンの体を抱えていた両手を自由にする。


 リガンの数メートル先には農地を分ける目印と思われる木の棒が地面に突き刺さっていた。

 リガンは走りながらそれを引き抜く。引き抜いた木の棒は女性のリガンでも扱いやすい重さ、長さである。

 そしてそれを手にした目的はひとつである。木の棒片手に農業地区の出入口にいる男目掛けて走る。

 男は声の方向、つまりは建築地区の方向へと向いていた為、背後に迫るリガンの姿を目にいれる事が出来なかった。

 その為素人丸出しのフォームで繰り出されるリガンの攻撃を後頭部にもろに食らう羽目となる。

 木の棒が折れ男が倒れる中、リガンは素早く男の腰から自身の持ち物である二つのポーチをもぎ取る。


「大丈夫だった?ずいぶん揺れたと思うけど」


 ポーチを回収し終えた後リガンはラヒンに確認する。その問いにラヒンは首を振って答えた。大丈夫だったと伝えるために。

 リガンはラヒンの答えに安堵し、両手でラヒンを抱えると再び走り出した。

 声の方向、トルクの元へと。

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