3.20 悲劇の連鎖は止まらない
悲痛とも思えるか細い笑い声が響くなか、リガンは尋ねずにはいられない。
「そんな強いカタンが何故こんな所にいるんですか、だって都市キリヤルからここまで何千キロもあるんですよ」
この現状に笑うしかないハラルに、リガンは質問した。
ここマキアナ地方北部から都市キリヤルがあるキリヤル地方まで相当の距離があり、キリヤルの副隊長をしていたはずの男と、ここトラルン集落に接点が有るとはリガンには思えなかったからだ。
その質問に笑いを納めたハラルが答える。
「いや、それが私達にも分からないんだよ。カタンの奴らとは始めから一緒だったわけじゃないしね」
それからハラルはトラルン集落の成り立ちについて説明し始めた。
ハラルを含めた住民全員がここから何百キロ近く離れたタマハナ村出身だと言うこと。
魔王の支配、もとい魔剛による支配から解放された後も、魔剛達が村に居座ったため追い出されてしまったということ。
そして村の住民達はばらばらになり、その中でもっとも大きな集団を構築していた人達がこの草原にたどり着き、集落を形成したという。
カタンの手下であった、男達の言っていた事は本当であった。魔王亡き後も、街や村に居残り続ける魔剛がいたのだ。
ハラルの話は続く。
「あの時は参ったよ、村にいた獣丸から魔王が倒され人々が解放されていくと聞いて、自分達も自由になれると思ったもん。けど現実は違った。魔剛どもは居座り続け、私達は放浪者になったのさ」
そう言うハラルの顔はカタンの事を語る時よりは、少しばかり明るくリガンには思えた。
しかしカタンの話となると先程と同様、暗く苦痛に赴いた表情となる。
「私達がここで生活を始めてから一ヶ月ばかりが過ぎた頃、奴らが来たんだ。そしてこの支配が始まった。その時の事は今でも思い出したくもないほどさ」
眉間にシワを寄せ、重々しくハラルは語る。
結局の所、カタンがどのようにしてこの集落を制圧することが出来たのかリガンには聞き出すことは出来なかった。
それでもその後ハラルが語った言葉から幾つものことが判明する。
カタン率いる集団が、その時貧弱だったトラルン集落を完全に制圧下に置いたこと。そして住んでいた住民達は皆強制的にカタン様の為と称され働かされていること。
「それじゃあまるで……」
「まるで魔王による支配下と同じ、でしょ」
脆い笑みを浮かべハラルがリガンの言わんとするところを答える。
「カタンの奴のお陰で、トラルンは今の発展した姿になることができたし、頻繁におこる魔剛の襲撃もカタンの奴らが追い出してくれる。良いことずくめ……と思える?」
「いえ、魔王の支配の時と同じ悲劇……と思います」
「悲劇か良い点つくね」
リガンの指摘をハラルは褒めたが、本心からの言葉とはリガンには思えない。
「そうまさしく悲劇。魔王の支配から解放されたと思えば故郷を追い出され、着いた先では同じ人間に服従を強いられる。悲劇としか思えない」
その時リガンはハラルの事を心底同情し、やり場のない感情が沸き上がるのを感じた。いやハラルだけにじゃない、ここに住む全ての住民に対して。
そしてリガンはカタンへの怒りを強くすると同時に人々を助けたいと強く思うのだった。
そんな二人をある怒声が包み込む。しかしその声の方向はリガンらの後ろにいる監視係ではなく門側、建築地区があるトラルン集落の前半部である。
そしてその声はある事実を伝えていた、トルクが起き上がり逃げたしたという事実を。




