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憎悪と感謝と……  作者: アッキー
第3章 支配と解放と……
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3.10 医術士の魔術

 集落へとたどり着く際、リガンは三つの疑問を考えていた。

 一つ目はトルクが気絶した理由。二つ目は獣丸の惨状のこと。

三つ目は魔剛のことである。

 何故あんなにも腕が立つトルクが多くの死体を見て気を失うほどの衝撃を受けたのか。

 何故獣丸族の村があのような惨劇に直面したのか。

 そしてリガン自身が知らない新たな魔剛の生態。

 一つ目と二つ目は当事者であるトルクやラヒンに聞けば分かるだろう。しかし現在トルクは目を覚まさず、子供のラヒンに辛い過去を思い出させるのも、やはり憚れるというものである。

 疑問が晴れず、悶々とする気分のまま、リガンはトラルン集落の中へと入り込んだ。そしてその気分のため、リガンはこのトラルン集落の本質を結果的に見誤ってしまった。


 リガンが集落の中へ入った時に、気になったのは殺風景な風景だと言うことである。

 普通の街や村なんかは景観を少なからず意識し、花等を植えるものだが、ここではそういった視覚に対する娯楽のようなものは感じられない。

 本当に人だけが住めるような、最低限の街並み、それがリガンが集落の中に対する感想であった。


 ここでリガンにもう少し余裕があったら、トラルンの住民達から注がれる自身達への視線に気づくことが出来たであろう。

 実際リガンとは反対に、ラヒンは気づいていた。

 リガンらに集まる視線は集落の中へ入るごとに多くなっていく。

 ラヒンは胸に湧いた恐怖をまぎらわせようとリガンの胸を強く抱き締めたのだが、それによりリガンがラヒンの真意に気づくことはなかった。

 リガンはラヒンにとって異種族ばかりが集まる所に来てしまったので、緊張してしまいそれ故の行動だと誤認してしまったのだ。

 そして不幸な事にラヒンはいまだ子供であるが故に、周囲の視線に囲まれている状況で、自身の思いを他人に話せる勇気は持ち合わせていなかった。


 二人がこのような心情の状態で男達の後へついていき、ある家屋の中へと入る。

 その家屋は木造の新築らしく内部は小綺麗であり、清潔であった。

 どうやら病院として使われているらしく、中は病院特有の鼻の奥を透き通るかのような臭いが充満している。

 荷車からトルクを背負って上がった男達へリガンらは付いていき、やがてある一室へと入る。


 建物の中には幾つもの部屋があり、それぞれの部屋がどのような内調をしているかリガンらには分からなかったが、彼女らが入った部屋はベットが一つと椅子が一つ置かれたシンプルなものであった。そしてベットの傍らには布製の大きなかばんを近くに置いた老人が立っている。

 その老人が白い白衣を来ていたため、説明を受ける前から医術士であることがリガンには洞察出来た。

 

 男達がトルクをベットに寝かした後、老人に挨拶をする。しかし、挨拶された側の老人は男達を無視した。

 老人の無視が日常茶飯事なのか、男達は無視された事に何も言わず、部屋を出ていく。

 そんな男達が完全に居なくなったのを老人は確認した後、リガン達の前で始めて言葉を発した。


「お嬢さん方ここに初めてきた口か」


 老人がリガンらに目を向けることなく尋ねる。

 だが、尋ねられたリガンとしては疑わずにはにはいられない。老人の先程の男達への態度に、リガンは言い得ぬ違和感を感じたからだ。何か裏があるような、そんな怪しい雰囲気がそこにはあった。


「そうですが……それが何か?」

「いや……何でもない。忘れてくれ。」


 リガンの問い返しに、老人は頭を振りつつ答える。

 そんな老人の目に、他の住民と同じような憐れみの色を宿していることにラヒンは気づいた。

 そして老人の瞳を見てラヒンが感じたのは先程までと同じ恐怖である。理由が分からないものほど怖いものはないのだ。

 一方のリガンは、老人の態度には気づいたが、老人の憐れんだ瞳には気づかず、ましてラヒンの状態すら気づかなかった。

 リガンは怪しみ、ラヒンが怯えるなか、老人は抑揚のない、事実だけを述べるかのような声音で声を発した。


「治療を始めよう」


 静かに口にすると、老人はかばんから杖と透明な液体が入った瓶を取り出し、瓶を左手に、杖を右手に構えた。

 

「汝我が意のままに行動し、実行せよ」


 杖を振りながら魔術の詠唱を唱える。すると瓶の蓋が開き、中から透明な液体が溢れだす。

 そして出てきた透明な液体は杖の動きと連動しトルクの全身を包み込んだ。

 

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