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憎悪と感謝と……  作者: アッキー
第3章 支配と解放と……
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3.4 魔剛との出会い

 人間は世界エラントへ来て初めて自種族以外の知的生命体に遭遇した。

 そして人間は自分達以外の知能を有する種族を他人間族と呼称するようになる。

 そのなかでも自分達人間に似ている背格好をした種族を擬似人間族、人間とは違い獣に似た種族を擬似動物族と区別するようになった。


 魔剛はその二つの中で人間と体の造りが似ている擬似人間族である。獣丸族と違い毛皮はなく、手足も五本指である。

 そんな魔剛は人間より少し高めの身長であるものの体格は大きく異なる。魔剛の体は全身の筋肉が肥大化しており、見た者は威圧的な印象を受けるであろう。

 魔剛の皮膚の色は本来は人間と同じうすだいだい色をしているが、日中の大半を外部で活動する魔剛の皮膚は黒く焼けている。それに加え魔剛は汚れを気にしないたちであるため皮膚が汚れており、一目見て魔剛本来の皮膚の色を当てるのは不可能なほどである。

 また魔剛は自種族で生産を行わない為、着る服すらも他種族から強奪するのだ。

 しかし魔剛族と体の造りが似ている他の擬似人間族や人間にも魔剛のような筋骨たくましい持ち主は数少ない。

 その為魔剛は他種族から服を強奪した後、服を破く等をし一枚の大きな布にするとそれを体に巻き付け服としてしまうのだ。当然ながら一枚だけでは全身を覆いきれないため、いくつかの服、もとい布を使用し体を纏う。その為魔剛の外見は大変みすぼらしいものとなる。

 また魔剛の顔も擬似人間族と言えど人間と細部が異なる。

 顔立ちは擬似人間族ではない擬似動物族らと比べ人間と似ているものの、髪はなく、目は知性を有している目と言うより野生の動物を思わせる鋭さを持ち合わせており、顔全体のほりも深い。そのような顔は一種の恐怖心を他種族に与えるだろう。


 以上の事より魔剛による実害を被っていない者でも外見から、魔剛の事を快くは感じないであろう。実際大半の人間は魔剛のことを快く思っていなかった。

 しかしそのような中でリガンは異なる見解を持っていた。リガンは魔剛をこう感じていた、可哀想だと。


 リガンは本が好きである。幼少の頃リガンは家で沢山の本を読むことが出来た。

 リガンの家系はインドアよりアウトドア派の気質があり、部屋に本は一冊もなかった。

 だが、リガンは他の家族とは違い、根っからのインドア派であった。

 そのような家庭に生まれながらリガンが本に興味を持ち、また読むことが出来たのは隣家のご老人のおかげであった。

 ご老人は人付き合いを絶った孤独な、変わった老人だとして街では有名だったが、そんな老人にリガンは何故かなつかれた。

 その老人は豊富な蔵書を所有していた。その影響もあり、リガンは本に興味を持つようになったのである。

 

 リガンが頼んだ所ご老人は喜んで本を貸した。子供のいないご老人にとって幼少のリガンは可愛い孫娘と思えたかもしれない。

 そのような環境下であった為リガンは本に興味を持ち、また読むことが出来たのだ。


 リガンが読む本には様々な事が書かれていた。世界エラントの事、宗教、人間の歴史、他人間族……。それらの中には魔剛族に関する書籍も含まれていた。

 リガンは魔剛の事を知るにつれ、子供心ながらこの種族にたいし可哀想だと感じていた。


 強奪するから悪者?強奪することしか出来ないからしょうがないじゃないか。魔剛だって成りたくてこんな種族になった訳じゃない。

 そのような考え方をするものは稀であり、故に幼少のリガンは人と相容れることが出来なかったかもしれない。


 無口な上、自分達とは違う考え方、感じ方をするリガンを家族は理解出来無かったが、だからといって放置するようなことはせず家族の内の一人としては扱っていた。

 しかしそんなリガンらに転機が訪れたのは魔王の配下である魔剛が街を支配してからである。

 娯楽を魔王によって壊され、また日々続く強制労働。

 溜まっていく不満の避け口として家族が取った行動はリガンへの虐待であった。

 娯楽を壊すといっても本までは魔王は取り上げなかった。何故なら利口な魔王にとって知識の泉である本を処理するなど到底出来ぬ行為であるからだ。

 また仮に本を取り上げたとしたら人間の不満にたいする避け口が完全に失い、一斉蜂起してくる恐れもあった。


 そのためリガンは労働の後も、相も変わらず本に熱中する事が出来たのだ。しかしリガンの家族は本を読むような人間ではないため、本を楽しそうに読むリガンの事を最初は理解出来ず疎んじ、そして次第に憎むようになっていく。

 何故なら自分達は娯楽がないのにリガンには本があるのだ、しかし自分達が本を読んでも楽しくはない。

 不満の避け口をリガンだけが持っていることに家族は妬みそして憎んだ。元から自分達と違う異質な存在だという火種もあり、火は簡単についた、暴力という火が。

 その暴力行為が家族の不満の避け口となっていたのは事実である。

 そしてそのせいでリガンはますます心を閉ざし、より本の世界へのめり込んでいく。


 しかしこのような状況を作りだした魔剛に対しリガンは恨みを抱くことはなかった。

 むしろリガンが恨むようになったのは魔剛を指揮した魔王である。

 リガンの中では魔剛は魔王の指示でそうしただけであり、全て悪いのは魔王であるという考え方であった。


 故にリガンは魔王を憎み、魔剛を憎まず。

 その考えは魔王、魔剛ともに嫌悪する一般的な人々と比べ異質であった。

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