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憎悪と感謝と……  作者: アッキー
第2章 彼と勇者と……
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2.22 勇者との出会い

 リガンはマリエルでただひとつある門の傍らで人を待っていた。

いや正確に表現するなら、リガンが勝手に約束事を取り付け、来るかどうか分からぬ人を待ち続けていたのである。

 しかしそんな自分勝手なリガンの待ち人はやって来た。

 この時マリエルは夕焼けに包まれており通りからは人ごみが消えかけていた。そのため人一人ひとりに注意を払うことができ、リガンは直ぐに見つけることが出来たのである。

 待っていた人はリガンへと近づきやがてその前へと立つ。


「用は何だ。君との契約はこの街までのはずだったが」


 開口一番にリガンの待ち人、トルクはそう口にした。


 リガンはトルクより先に寝泊まりしていた店を出たのだか、その時そこの亭主にトルク宛の言付けを頼んだのだ。

 それは旅の準備をして門に来て欲しい、というものであった。

 これだけ聞けばまだ一緒に旅をしたいとリガンが言っているようなものである。

 そして実際リガンはそう思っていた。


「少し歩きませんか。旅の準備は出来たんですし」


 そう言いリガンは重くなった背嚢を背負い直し、トルクを案内するが如く前に出て歩き出す。そしてトルクは意外なことに素直に従いリガンの後ろに付いていく。

 そしてリガンらは門を抜けマリエルを出た。

 正直な話リガンはトルクが来たことに驚きを隠せないでいた。

 トルクがリガンを避けるために門に来ず、街の周りにある柵を無理矢理にでも乗り越えて出て行く可能性もあったし、何より門に来ないでもう一日泊まって行く可能性だってある。

 リガン自身そのような可能性も考慮に入れてその日の内にトルクが来なければ前と同じく一人で旅立とうと決意していた。

 その為トルクが来てくれた事にリガンは驚き、その事がばれぬよう冷静になるまでの間時間を稼ごうと、トルクを歩きに誘ったのだ。

 こうしてリガンはマリエルの外へと出て、少しづつ冷静さを取り戻していく。

 しかしいつまでたっても用を言わないリガンに対し我慢ならなくなったのか、トルクが怪訝な声で尋ねた。


「いい加減何の用か言ってくれないか。僕には急がなければならぬ用があるし、君との旅は終わったはずだ」

「急がなければならない用って勇者の事ですよね」


 しかしそんなトルクもリガンの切り返しに顔に陰りが入る。しかしそれは何故ばれたかという驚きの表情ではなく、何が言いたいといった苛立ちの部類であった。

 

「私が勇者を探しているって事は前話しましたよね」

「聞いたがそれが何だ」

「実は私、以前勇者に助けられたんです」


 突然の暴露にトルクは目を丸くする。トルクがそんな表情をするのをリガンは見たことがなかった。

 しかしトルクがそんな表情をするのも無理なからぬ事である。何故なら今まで勇者を見たという人すらいないのだから。


「私、とある理由で家族の元から逃げたんです。その時私のいた街は既に魔剛に支配されていました。そんな状況下の中、家族から逃げ村の外へ出れたのは運が良かったことに他なりません。しかしその後に待っていたのは地獄でした」


 リガンは歩きながら前だけを見て淡々と自身の過去を話していく。そしてそんな中トルクは後に付いていきながらリガンの話を遮ることなく聞いていた。


「日に日に増していく空腹といつ発見されぬかもしれぬ恐怖心が私を蝕んでいきました。そんな時勇者が現れたんです。そして私は勇者に救われ、しばらくの間勇者やその仲間達と一緒に旅をしました。けれど私はその時心を開かぬ小生意気な子供でした。だから言えなかったんです。ありがとうって。本当にそれだけの言葉を言うことが出来なかったんです。そして勇者はこつぜんと私の前から姿を消しました。私だけをある村に残して。だから私は勇者に会わなければならないんです。あの時言えなかった言葉を言うために」


 リガンが自らの生い立ちを語るのは、旅に出てからトルクが初めてである。

 そしてそんな彼女の奇妙な人生を聞かされたトルクは、一呼吸を置くと、言葉を紡ぎ始めた。

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