2.21 夜は更け日は昇る
リガンは木目の天井を見つめ続けている。
そうしてどれくらいの時間が流れただろうか。しかしそこに答えてくれる者などいるわけがない。
リガンらは偽勇者の件の後、夕食を取った店へと戻り店主に泊まらせてくれるよう懇願した。
結論として事前にトルクが話をつけた事もあり、交渉は順調にはこび無事に泊まることが出来た。
しかしリガンがトルクと別々の部屋で寝たいと申し込んだ時は流石の店主も快くは思わなかった。
理由としては部屋を二つ用意しなければならないからなのだが、リガンが金額を上乗せすると店主はあっさりと了承した。
深夜のマリエルは光、音がなくなりまるで街全体が眠ってしまったかのような雰囲気を帯びている。
睡魔が活発する条件が整うなか、毛布を被せたリガンは天井を見つめていた。
別に寝心地が悪い訳じゃない、不安になっている訳ではない。
ただリガンは今後の旅の事、それに加えトルクの事も考えていた。
この時、トルクは別の部屋で寝ておりリガンは一人きりである。
リガンが最初考えていたのはトルクが何故助けに来てくれたのかということであった。
リガンが店でトルクに行った態度、普通ならあのような態度を取られれば縁を切り助けに来ないものである。
それに加えトルクは別に人が良いわけではない、まして人助けを嫌ってるときている。そして何よりもトルクの旅の同行はマリエルまでという契約であったのだ。
それらを含めてリガンを助ける動機など無い筈である。
なのにトルクは助けに来た。その事にリガンは疑問を抱かずにはいられなかった。
考えれる事と言えばトルクが何かしらの責任をリガンに対し背負っていたからなのだが、その事にリガン自身心当たりはない。それ故に考えざるを得ないのである。
リガンを何故助けたのか、結局その理由が分かることは無かったが、そのトルクの行動にリガンが感謝しているのは事実であった。
これまでも幾度かあのような場面にリガンは出くわした事が合ったが、そのたびにメガトリ粉等を用いていつも逃げ延びて来ていたのだ。
しかし今回は逃げ延びる事が出来なかった。リガンが旅して約一ヶ月半これほどまでに危機的状況に陥ったことはなかった。
それだけにもし万が一トルクが助けに来なかったら、一人旅の時だったらと思うとリガンは身の毛がよだつ思いを感じるのだ。
トルクとの旅は自分に安全をもたらしていたと改めて思いしる。
それにトルクの魔具を用いた戦闘における実力は舌を巻かんばかりである。
前々から只者ではないと思っていたがトルクの力量があそこまでとはリガンは想像していなかった。
そんなリガンはあることを頭に思い浮かべた、トルクの実力ならあそこに行けるかもしれないと。
リガンの考えはトルクの事から今後の事へと移り変わっていく。
予定通りトルクとこの街マリエルで別れたらリガンはまた一人きりとなってしまう。
かつての変装、そして危険に再び呑まれることとなるのだ。
それに引き換えトルクとの旅は楽しくはなかったものの、変装をしなくていいことによる開放感と安心を得ることが出来た。
それにトルクの実力ならあそこに行くことができる。リガンはそう確信するようになっていた。
しかしトルクと今後も旅をするとなると問題がある。それはトルクに取ってはリガンと旅することに何の益もないことである。
それはリガン自身感じていることであった。トルクに対して自分は何もやれていないと。
そんなリガンと一緒にトルクが旅をする利点、義理はないのである。
トルクと一緒に旅をしたいのなら、彼に自分と旅をすることの利点を示さなければならない。
そしてそんなトルクに出せるカードはリガンにはひとつしか持ち合わせていないのであった。
リガンは悩んだ、それをトルクに出すかどうか。何故ならそれはリガン一人の問題ではなかったからである。
こうして考えている間にも時は流れ陽が登り始めた。
そしてリガンは決断する。その決断した選択はリガンらの今後を大きく左右するものであった。




