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憎悪と感謝と……  作者: アッキー
第2章 彼と勇者と……
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2.15 メガトリ粉

 マリエルはすでに夜の静寂に包まれている。通りからは人が消え、昼間の活気が嘘のようである。

 通りには先程リガンらがいたような店からの光が照らすだげであった。

 そんなただ中にリガンは歩いていた。何故なら今だ寝泊まりする場所がないからである。今現在リガンは通りで今晩寝泊まりする宿屋をさがしていた。


 この時代旅人や商人が激減したため、それにともない宿屋も減少していたが、今だ全滅とまではいかず、僅かながら存在していた。家庭の事情などで家を飛び出た人が泊まる場所として機能しているからだ。

 小さな村とかはともかくも、ここまで大きな街なら宿屋ぐらいあると思われた。

 

 通りを歩いて宿屋を探している時、リガンは不意に人の視線を感じた。しかもそれは素人目なリガンが分かるほど、露骨な悪意ある視線である。

 それに周りに人がいない分、リガンは人からの視線に敏感になっていた。

 冷や汗が背中に流れるのをリガンは感じる。トルクが言っていた事は本当だったのだ。

 リガンは後悔し始めた。トルクの言うことを聞かずに出てきてしまった自分に。

 しかし後悔してももう遅い。あんな口をきいてしまった分トルクに頼ることは出来ない。もうリガンは一人なのだ。

 一週間前の生活と同様に今も、そしてこれからも一人で対処していかなければならないのだ。

 

 リガンはひとまず監視している者を撒こうと考えた。今いる広く見透しのよい通りだと隠れる場所がなく丸見えであったからだ。

 考えたすえ通りから外れ、家同士の狭い通路へと逃げ込んだ。

 既に住民達は眠っているらしく、通りから外れた通路は暗く、星からの光で辛うじて視界が保つことが出来る状態である。

 そんな通路に入るとリガンは走り出した。監視している者達を撒くためである。

 しかし相手側もそう簡単に諦めないらしく、リガンは後ろから幾人の人の足音を聴くこととなる。

 狭い通路をいくつも曲がり撒こうとしたが、相手はこの地を熟知しているらしく一向に撒けない状況が続く。

 それに加えだんだんと相手の足音が近づいてくるのをリガンは感じた。距離を縮められているのだ。


 このままでは追い付かれてしまうのも時間の問題である。

 リガンは右の腰にあるポーチからメガトリ粉の小袋を取り出す。しかしそれを投げるタイミングが重要であった。何故なら上手く合わなければメガトリ粉の効果は無為に帰してしまうからである。

 右手にメガトリ粉の小袋を手にしたままリガンは走り続ける。しかし今は走ることではなく相手の足音、音に意識を集中させていた。

 少しずつ相手が近づいてくる。10m……5m……3m!頭の中で相手との距離を見積もっていたリガンは持っていたその瞬間を逃さなかった。

 相手との距離が3mになった時々リガンは小袋を足元にいきよいよく叩きつけた。

 小袋が地面にあたり、中から黒色のメガトリ粉が巻き上がる。

 そしてリガンの後続にいた者達は止まる暇なく巻き上がったメガトリ粉に突っ込んだ。


 メガトリ粉は催涙性のある粉である。それこそ体内に入れば咳、涙が止まらなくなり動くことすらままならなくなる。

 足音が聞こえなくなり、確認のためリガンが後ろに振り向くとメガトリ粉をもろに吸い、悶え苦しむ三人の男達が目に入る。リガンを追跡していた三人組はトルクが指摘していた例の者達であった。


 リガンはトルクの正しさを再確認することとなり、トルクに対し申し訳なく感じることとなった。

 謝らなきゃ、ごめんないって。リガンはそう思い先程いた店に戻ろうとこの場を離れようとする。

 その時近くの家の上から物音がした。それと同時に男達とはリガンを挟んで反対側に、これまた三人の男達が飛び降りてきた。

 家の屋根を走って追ってきていたのだ。後ろで追っかけてくる集団に気をとられていたリガンは、家の上を走る存在に気づかなかった。

 しかも飛び降りてきたこの三人にもリガンには見覚えがあった、いや見覚えがある所ではない。その飛び降りてきた者達は偽勇者とその子分であった。

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