2.14 決裂そして……
リガンはトルクを信用していない。
トルクと旅をして一週間、それだけの日数で人を理解し全面的に信用するほど、リガンはお人好しではなかった。
しかし信頼はしてきたつもりである。だからこそ男と二人旅が出来たのだ。
トルクの考えていることはリガンにはよく分からない。しかしこの人は私に危害は加えない、そう感じることが出来た。故に彼、トルクを信頼し旅をしてこれたのだ。
だがトルクの言葉はそんなリガンの信頼を打ち砕くものであった。
リガンが変装する前、つまりまだ女の子の格好をしていた頃、トルクと同じ言葉を吐いた人がいた。
その人は一見気さくそうでありリガンはこの人の言葉を鵜呑みにし付いていったのである。
この頃のリガンは純粋過ぎた。その相手のついた嘘にまんまと引っ掛かり、危うい場面までいったのだ。
この時の事をリガンは今でも鮮明に覚えている。そしてそんな相手の口車にまんまと乗った自分自身にも腹がたったのであった。
この時のトルクの提案はあの時の物と酷似している。
そのためリガンとしてはあの時の事を思い出さずにはいられないのである。
結局この人もそうなのか。リガンは前の経験と照らし併せトルクの真意をそう判断してしまった。
料理を残し急にリガンは立ち上がる。それを少し驚いた様子でトルクは見ていたが、そんなトルクの様子もリガンにとってはもはやどうでもよかった。
「ご馳走さまでした」
聞いてる者がみな分かる程の不機嫌な声をリガンは出すとテーブル上にある小袋を取り、中から自身が食べた料理分の代金を取り出しテーブルの上に置く。
この小袋は山分け分のリガンの取り分である。それを自身の背曩に入れると、リガンはトルクに顔を向けることなく店の出口の方へと体を向ける。
その時リガンはトルクが指摘していた者達を観ることが出来た。
その者達はリガンの突然の行動に周りの客同様驚いた表情をしている。
その者達はリガンから見ると只の善良な人達であり、トルクがこの者達を不振がる理由がリガンには分からなかった。
その者達から目をそらしリガンは出口へと歩き出す。しかしそんなリガンをほおっておく事が出来なかったのかトルクが引き留めた。
「君は今の状況が分かっているのか。安全を考えるならこの手が最善だ、それなのに君は一人で行くのか。この手がそれほど嫌か」
トルクは先程から変わらず椅子に座りながら、リガンに対して顔を向けずそう尋ねる。その声には微量ながら熱がこもっていた。
そして同様にリガンも顔をトルクの方へ向けずに答える。
「トルク、あなた人助けは嫌いではなかったんですか。それともなんです、これがあなたなりの責任という奴ですか……これまでありがとうござました。そしてさようなら」
トルクが顔を向けた事に気づくことなくリガンは店の出口の扉を開ける。乾いた、ひどく寂しげな音が店の中に響いた。




