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憎悪と感謝と……  作者: アッキー
第2章 彼と勇者と……
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2.11 責任

「お待たせしました。こちらネリ実の燻し風キルンとカリン草混ぜ合わせトッコラーとなります」


 トルク・リガンの前にそれぞれが頼んだ料理が運ばれる。

 マリエルは狭苦しく窮屈であり外観も決していいとは言えないが、人口が多い分料理の質も他の街に比べ高くリガンはこの街に来たことを少しだけ良いと感じるようになっていた。

 現在二人はマリエルに唯一ある通りに面した料理屋で食事を取っている。


 トルクが偽勇者を倒し、奴らを追い払ったとき群衆は惜しみ無い喝采をトルクに浴びせた。

 大勢の魔剛が世界エラント全土に蔓延るようになり、街の中で日々を過ごしている人々にとってこの観戦は良い気晴らしの機会となった。

 そして人々は感謝の意を込め金銭をトルクの足元へ頬り投げる。一人ひとりの額は小さかったものの、大勢がやればそれは大金となる。実際トルクの足元には十分な旅が出来る程の金が積まれていた。

 しばらく金が積まれていく光景に見いっていたリガンではあるが、ふと今の自分の状況を思いだした。

 今リガンは危機的な状況下にある。何故なら勇者の事をしっているとトルクにばれてしまったからだ。

 本来なら直ぐにでもこの場を離れなければならないのだが、リガンはそうすることが出来なかった。

 何故なら助けてもらったのにその感謝も言わずに別れてしまうのは人として最低のことである。そんな事をしたくはないし、何よりリガン自身あの日を境にそんな事はしないと胸に誓ったのだから。


「有り難うございます。その……私を庇ってくれて」


 リガンはトルクに近づくと遠慮がちにそう述べた。しかしこの礼は正確にリガンの心情を表しているわけではない。何故ならリガンはトルクが自分を庇うためにとった行った行動とは思えなかったからだ。

 トルクは人とのかかわり合い、特に人助けを嫌っている。そのことは自明であり、そのためリガンはトルクが自分を庇おうとしてやったことではないと考えていた。

 では何故このような礼をしたかといえば、そう表現するしかトルクに感謝を伝えることが出来ないからである。


「いいよ別に。僕自身がやりたかったことだから」


 案の定リガンのための行動ではなかった。そしてトルクは足元に積まれた金銭、ガリー硬貨の一枚をつまみ上げるとリガンに提案した。


「このお金山分けでいいか」

「えっ!」


 リガンは驚き目を見開いた。それもそうである。こんな大金の半分をくれるというのだから。

 しかしトルクが何故そのような提案をしたかリガンは分からなかった。


「けど、何でそんな事を……、だってそれはトルクの物でしょう?」


 事実そうである。このお金は刺激的な闘いを見せてくれたトルクにたいし観ていた群衆がその礼として与えた金である。リガンにあげるどおりなどない。

 しかしトルクにはあるらしくリガンに説明する。


「君がいなければ奴は激情することは無かった。君がいたからこそ奴は怒りそして闘うことが出来た。だからこの半分は君が持つべきだと僕は思う」


 理由が分かるとリガンはありがたく金銭半分を頂いた。こんな大金を遠慮するほどリガンは大人ではなかった。

 この時リガンは通りで子供を助けた時、トルクの言葉の中にあった責任という単語を考えていた。

 自分が子供を助けた時トルクは責任という言葉を使って非難していた。

 トルクと会った時も食事を頂いたことに関する借りだとして旅の同行を申し出た。けどこの借りも責任という言葉に変えることが出来る。助けてもらったことに対する責任という形で。今回もそうである。金銭を貰う機会が与えた事に対する責任として山分けする。

 ひょっとしてトルクは責任という言葉を重く考えているのではないだろうか。リガンはそう考えるようになった。


 リガンは金銭を山分けしてくれた礼としてトルクを食事に誘った。

 本当ならリガンは一目散にトルクから逃げなければならないのだが、トルクが責任という言葉を重要視しているなら自分に危害を加えることは無いだろうとリガンは考えたからだ。

 そしてこの申し出をトルクは受け、今に至る。

 

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