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憎悪と感謝と……  作者: アッキー
第2章 彼と勇者と……
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2.8 再会

 気がつくとリガンは騒ぎの方角へ向け走っていた。

 勇者、トレンさんがそこにいる。リガンはその思いでいっぱいである。

 人々が集まっていた所は通り途中にある広場みたいな開けた場所の中央であった。

 

「勇者だなんて本当にいるのかねぇ。だって勇者の顔を見たものはおろか名前さえ知られていないんだろう」

「ばかだなぁお前さんは。勇者っていう言葉自体魔王が無くなってから出来たものじゃないか。名前ができていないのに自分が勇者だって名乗る者がいるかよ」

「じゃ今目の前で勇者だって名乗ってるあの人が勇者だってことなのかい」

「それを確認するために見てるんだろ」


 集まった人々は会話に夢中になっておりリガンに道を開けようとしない。

 この時のリガンは変装をしていないため周りからみれば年端もいかぬ子供であり、退いてやる理由など尚のことなかった。

 なんとしてでも見たい、その思いが空回りしているリガンを尻目にトルクは人混みの前に立つと静かだがしっかりした声で頼み込んだ。


「頼むからそこをどいてくれないか」

「あぁっなんだいお前さんここは俺たちが……」


 突っぱねようとした男性であったがトルクの腰にある剣を見ると思わず息を飲んだ。

 トルクの剣はそこいらの剣と違い全体が白い色調で統一された美しい外観をしており、自ずと目についてしまうのだ。

 男性がトルクに道を開けると連鎖的に他の人達も道を開け群衆の先頭列までの道が開けた。

 それに何も言うことなくトルクは歩き出す。それを見ていたリガンは好機だと思いトルクの後ろについて行く形で先頭まで行くことが出来た。


 トルクは勇者のことを憎んでいる。その事はリガンにも分かっていた。しかし彼が勇者に会い何を仕出かすか、それは分からなかったしまた想像したくなかった。

 勇者との数年ぶりの再開を邪魔されたくないためである。

 そんな勇者がもう手の届く所にいる。リガンの心臓はこれまでにないほど速まり、脈を打つ。

 もうすぐで会える、あの人に。トルクの後に付いていき、リガンの視界が晴れた。


「勇者様のお通りだ。この世界エラントを救った英雄勇者がこのカイン様でおられるぞ。今こそこの世界を救ってくれた礼をしようではないか」


 カインと呼ばれる大男の他に周りに子分と思われる二人がおり、その者達が偉そうな声でそう述べていた。

 この時のリガンの気分はどん底のどん底。正に失望の極みにいた。

 それもそうである。勇者と別れてから早4年、リガンは勇者に再び出会うのをずっと願い続けていた。

 そしてようやく出会えたと思ったのに肝心の勇者は偽者である。そのため期待を裏切られたリガンが失望するのも無理はなかった。

 顔をうつむかせたリガンの視界には側にいたトルクの足が入っていた。そこでリガンの意識はトルクの方へと向けられた。

 自分は勇者を知っているから奴が偽者だと分かる。ならトルクは?リガンは不安にかられた。トルクが奴を勇者だと勘違いしたらどうしようかと。

 リガンは顔をあげると盗み見るようにしてトルクの表情をうかがった。しかしそんなリガンの目に入ったのはトルクの予想外の表情であった。

 トルクの顔はがっかりした、失望した顔をしていた。トルクが奴を勇者ではなく、偽者であると彼が考えているとリガンが確信するほどに。

 ひょっとしてトルクも自分と同じ勇者のことを知っているのか、リガンはそう考えた。

 少し経ちそんな表情を打ち消すとトルクはリガンの方へ顔を向けた。


「君、勇者を探しているんだろ。それにしては喜んでいないようだが」

 

 よく言うよ勇者じゃないって知っている癖に。リガンは内心呟いたが無視する訳にもいかないのでトルクの質問に答えた。


「勇者はあんな顔をしていませんから」

「なっ、君勇者を知っているのか!」


 突然トルクが大声で叫ぶのでリガンは驚いた。

 知っているからこそ奴が偽者だと分かったんじゃないのか。しかし先程の言葉でトルクが勇者の事を知らないことが明らかとなった。

 リガンは責めたくなった。勝手に勘違いして要らぬ失言をしてしまった自分に。

 案の定追い討ちをかけるようにトルクが詳しく尋ねようとした、しかしそれは防がれた、いや出来なかったのだ。

 何故なら今やリガン・トルクの周りに大勢の人がおり、二人を囲んでいたからである。

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