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憎悪と感謝と……  作者: アッキー
第2章 彼と勇者と……
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2.6 本来の役目

 開けた地平線の彼方からマリエルが見えた時リガンは茶色く汚れた岩石だと勘違いしていた。それほどまでにマリエルは家同士が密集し、かつ薄汚れた外見をしているためである。

 そのためリガンは歩いて近づきそれが岩石でなくラスルト地方最大の街であるマリエルだと気づいた時は心底驚いた。マリエルがこんな姿をしているなんて想像していなかったからである。

 しかしそんな景観でも人々の賑わいは変わらないようである。

 街へ近づく程にそこに住む人々の活発な声が響き渡っているのをリガンは感じることが出来た。それもうるさいぐらいに。


 リガン、トルクが歩いていた道はマリエルの門らしきところへ繋がっていた。

 そしてそんな二人を興味深く見る者がいた。門の両脇にいた番兵二人組である。一人は驚きもう一人は慌てふためくこととなった。彼らの任務はマリエルへ入る者を審査する役目であったが魔王が倒されて以降、マリエルに来る物など一人もいなかった。そのため彼らの役割は審査役というより柵が設置されてない門から魔剛が入ってこないようにする見張り役となっていた。

 しかしこの日審査役本来の役目が回ってきたのだ。魔王が倒されてから約一年初めての旅人であった。


 二人組の内後輩とおもしき人物が必死になって言うべき明文を思いだそうとしている間、リガン・トルクは近づき、遂に門へとたどり着いた。

 そしてマリエルへ入ろうとするのを門の両脇にいた二人組の内、先輩とおもしき人物が所持していた槍で旅人達の行く先を塞ぐ。

 しかしその行動に後輩が続かなかった。しばらくの間門は一本の槍で弱々しく塞がれているありさまである。そんな先輩の行動を見て己のすべきことを思いだしたのか、慌てた後輩が急ぎ槍を倒し、交差させ壁を作った。


「貴君らは以下のようあってここを訪ねたのだ」


 後輩が行動した後先輩が威圧的な態度でそう述べる。そこで後輩はようやく旅人に言うべき明文を思い出した。


「貴君らは以下のようあってここを訪ねたのだ」


 後輩が遅れて、かつ前の言葉をいったことに先輩は我慢ならなかった。


「ばかやろう。それはさっき俺と一緒に言うべきだったんだよ。遅れて言うやつがあるか」

「けどようこの役目を勤めるようになって一年間言う機会がなかったんだぜ。わすれたってしかたねぇよ。それよりお二方よく旅なんて出来たもんですねぇ。魔剛達にお会いになりませんでしたかい」


 役目を忘れた完全なる私語に先輩は頭を抱えたくなった。

 しかし言われた方は先輩のような堅苦しい詰問よりも後輩のような人情味溢れる質問のほうが遥かにうれしいものである。現にリガンは後輩とおぼしき人物と話すほうが気が楽であった。


「何回か会う機会があったけどこれまでのところ何とか切り抜けて来れました」

「ほうはうそれはそれはお嬢さんあんた見かけによらず強いんですねぇ。それともなにかいそこの彼氏さんに助けてもらったんかい」


 後輩はトルクの方を見やってそう述べた。しかしトルクは嬉しがる様子どころかむしろ苛立たしげである。


「番兵さん、手続きなら早くしてくれないか。ふざけるんじゃなく」


 相変わらす無愛想な返答にリガンは番兵の先輩同様頭を抱えたくなった。


「はいはい分かりましたよ……何、あの男いつもそうなのかい」


 最後の方は番兵がリガンの耳に囁いたものでありトルクには聞こえることはないはずであった。

 しかしその時トルクの顔が若干ではあったが険しくなる。それを見て後輩の番兵はこれ以上引きとどめるのは得策ではないと考えた。


「分かりました。どうぞお通り下さい。長旅で疲れているでしょうしねぇ」


 そう言い後輩の方の番兵は槍をあげた。先輩の方は納得していないようではあったが、後輩と同様トルクをこれ以上引きとどめるのは得策ではないと考えたようである。後に続く形で槍をあげ門への道を開けた。

 しかしながらリガンには聞きたい事があった。目的である彼がここにいるかどうかである。


「すみません。最後におひとつよろしいでしょうか」

「何でしょうか」


 今度は後輩の方ではなく先輩の方が答えた。


「ここに勇者がいると聞いてきたのですが本当でしょうか」

「何、あんたさんがた勇者を探しにきたんかいな」


 後輩がいきなり話に割り込んできたので先輩はより不機嫌となった。それを見て流石にこれ以上は不味いと感じたのか後輩は黙り、先輩が後をついだ。


「確かに近頃勇者と名乗る者が街中へ現れるようになった。しかしやつは神出鬼没。今度はいつ表れるか分からぬぞ」

「そうですか。有難うございます」


 リガンは番兵達に礼をした。この情報はリガンにとっては十分であった。何故なら勇者がこの街にいる、それが分かったのだから。

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