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憎悪と感謝と……  作者: アッキー
第2章 彼と勇者と……
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2.5 逃げ惑う人々

 マリエルはラスルト地方最大の街である。

 しかしながらこの街の成り立ちは他と比べ異色であった。


 魔王が支配する前、マリエルは人口数十人の小さな村であった。この時のマリエルの特色としては村の人口に似合わぬ広大な農地を有している点にある。しかしその農地のほとんどが手入れが行き届いておらず放置されている状態にあった。


 そんなマリエルに急転換が訪れたのはE.W518年8月15日、人間社会の首都ともいうべき都市キリヤルが魔王率いる魔剛族によって制圧された時である。

 エラント南東部の都市キリヤルを足掛かりとして魔王は人間社会への侵攻を開始した。

 そしてエラント南東部から伸びてゆく魔王侵攻を前に人々は三つに分けられることとなる。抗う者、抗わぬ者、そして逃げ惑う者、この三つにである。

 そしてその中で逃げ惑う事を選択した人々が、本来人口数十人しかいない村マリエルがラスルト地方最大の街となった原因でもあるのだ。


 エラント南東部から始まった魔剛率いる魔王の侵攻は幾度か止まることはあったものの押し戻されることなく着々と侵攻した。そしてそれに呼応されるように人々はエラント西側へと逃げていった。魔王が西へと進むにつれ人々はより西へと移動し、逃げ延びていた人々は世界エラント最西端ラスルト地方へとたどり着き、更にはその中でもより西側へと移動することとなる。そんな人々が移動した先にあったのは広大な農地を有するマリエルであった。

 人々は懇願した、ここに住まわせてくれと。そしてマリエルの村民達は放棄されている農地の手入れを行わせることを条件として逃げてきた人々を受け入れた。そして魔王の侵攻が進むにつれ加速度的に人々はマリエルへと集まってきた。そしてそんな人々が増えていくに従いマリエルの元々いた村民達の意見は聞き入れなくなるようになる。幸か不幸かマリエルには大勢の人々を養える程の農地があったために起こった出来事であった。

 

 マリエルへ移り住んだ人々はここで永住するつもりなどさらさらなかった。それこそ魔王による侵攻が止まり、魔剛達が敗れるそれまでの間だけでいいのだ。そのため作られた住居は家というより子供達が作ったハリボテ小屋が当てはまる雑かつ質素なものとなっていた。

 しかしマリエルの街事情はこれだけではない。人口密度がとてつもなく大きいのだ。


 魔王が生まれる前から魔剛は存在している。そのため人々は常に魔剛に襲われる危険を有していた。それこそ旅の間だけじゃなく街や村でも。そのため世界エラント全土の街や村は魔剛が入るのを防ぐ柵を、街や村の周りを取り囲むように建てていた。

 そしてマリエルへとやって来た人々はその柵の中へ建物を建て始めた。だが、逃げ惑う人々全員が柵の中で暮らすなど無謀と言うしかない。結果予め決められた土地に、想定以上の人々が暮らす事になり、人口密度は冗談にならぬほどになった。

 家と家が接触し合い、道は狭く、雑多とした街並みがマリエルの特徴でもあった。


 このような状況は街に住む全住民の意識を統括する人物がいれば回避し得たかもしれない。だが不幸なことに、そんな人物が現れることはなかった。

 雑多な街並み、過度な人口、人が住める環境ではなかったが、それでも人々は集まり続け、出て行こうとしなかった。何故なら魔剛どもに支配されるよりましと思う人々が集まって造り上げた街であるからだ。そしてマリエルにはそんな人々を養える程の広大な農地が存在していた。

 しかしそんな人々の願望と反して魔王の勢力は広がり続け、遂にマリエルまでも支配下に置く時がきた。

 

 そして月日がながれ魔王が倒された今でも人々はマリエルに残り続ける。今度は世界エラントから魔剛がいなくなるその日まで。

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