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憎悪と感謝と……  作者: アッキー
第2章 彼と勇者と……
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2.4 旅の終着

「僕は何もやってないよ」


 何もやっていない?

 リガンは聞き間違えたのかと思った。昼でさえ危険だと言うのに更に危なくなる夜中に何もやっていないとは正気の沙汰ではない。


「ほんとに、ほんとに何もやっていないんですか」


 そうリガンは尋ねずにはいられなかった。それほど信じられぬ事なのだ、夜中に何の対策もしないということは。


 魔剛は昼間でも活動しているが、本質は夜行性である。その為夜間こそ魔剛への警戒を最も高めるべきなのだ。

 そして寝ている時間帯、魔剛に出会ったら人々は成す術がない。


 大半は寝ている最中にこっそりと近づかれ、当人が起きた時には荷物がごっそり奪い取られているのだ。魔王が支配する前、旅人や商人が大勢いた時代では旅の間もし荷物が奪われても、他の旅する人に助けを求めることも可能であった。

 しかし今のエラントは違う。旅人や商人がからっきしいなくなったこの情勢下では道中手を差し伸べてくれる人などいないのだ。


 この世界エラントは広大であり、その上人口も多いとは言えない。そのため街から街へ移動するのに一週間かかるなんてざらなのだ。そのため旅の途中で食糧が入った荷物を奪われでもしたら命に関わる事なのである。


 そのため夜間の警戒はこれまで以上に注意を払わねばならない。そして寝ている間もである。

 リガンはその問題をチッ光を用いることで回避していた。だがトルクは何もやっていないというのだ。それを驚かないことなんて出来る訳がない。


 リガンの問いかけに対するトルクの返答は簡素なものであった。

 

「何もやっていないよ。気配で分かるから」


 気配で分かるって本当なのか。リガンは疑問を抱かずにはいられなかった。それが本当なら相当の手練れである。リガンが知っている限りそんな事が出来たのは彼ら、勇者達だけであった。

 確かにトルクには人には無いような何がある。リガンはそう感じていたが、そのような事が出来るほど実力者であるとは思えないことも事実であった。


 結局その夜はチッ光による監視をリガンは続けることにした。トルクの言葉を信じることが出来ない故の行動であったが、後日魔剛と直面した際、この時の言葉をリガンは思い出すこととなる。

 

 トルクとの旅はリガンが思っていたのとは違うものであり、若干の不満こそあったが良かった点も確かに存在していた。

 リガンにとって変装せずに旅をすることが出来るのは大きな喜びであり、安全な旅というのも憧れの存在であったからだ。

 特に安全面では、トルクが気配を察知することが出来ると証明されて以降、リガンは周囲の警戒をトルク任せにし、自身は空想に浸るほど安心することが出来た。その点においてはリガンはトルクの事を信頼していた。


 こうして旅に出て一週間後の8月30日。

 ついに二人はラスルト地方最大の街であり、勇者がいるとされるマリエルへとたどり着いた。


 

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