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憎悪と感謝と……  作者: アッキー
第4章 祭典と凶報と……
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4.26 誕生日を祝おう

「今日が誕生日なのトルク!」


 リガンは叫んだ。トルクが二十歳というのも驚きであるが、今日その記念すべき誕生日というだと言うのだ。驚くのは無理もない。それに比べ今日誕生日であるトルクは落ち着いていた。


「その記念としてという部分もあるんだ、こんなに酒を飲む理由は。もちろんこれだけ飲んでも飽きないほど美味しいというのもあるけど」


 言い終わると、トルクは酒を飲む。そんなトルクの言動を見てリガンは、トルクは内心祝ってもらいたいんじゃないかと思うようになっていた。

 そうでなければ自分が誕生日だなんていうだろうか、その思いはテストやリガンの件で若干トルクを敵視していたマルトも同じである。


「誕生日なら盛大に祝ってやらなきゃな、おいマルト酒だ酒。もっと酒を持ってこい」

「おじさんは酒しか頭にないの。けど誕生日なら祝ってやらなくちゃ」

「そうよ、祝いましょう。盛大に」


 そんな浮き足だつ連中をトルクは制した。


「いやそこまでしてくれなくていい、誕生日といってももう20歳だからな。一人でこの気分を味わうさ」


 出鼻を挫かれ、テストやマルトは黙ってしまう。しかしながらそんな二人とは打って代わり、彼と3ヶ月も一緒に旅をしていたリガンは続けた。


「でもトルク誕生日ですよ、祝い事じゃないですか」


 両手を広げ自身の気持ちを表現しようとするリガンである。

 そんなリガンを後押しするかのごとくテストやマルトのそうだそうだという掛け声が続く。

 しかしそんなリガンを見るトルクの目は諌めるような瞳になっていた。


「君は本当にお人好しだな、またお得意の人助けか」

「そうですよ、悪いですかそんなに人を幸せにしようとする事が」


 トルクの発言内容はキツいものであったが、何故だかその声音は以前のような冷たく責めるような物ではなかった。

 その為リガンは恐れることなく、前へ進む。

 トルクは反論しようとしたが、口をつぐむとまた酒を煽る。場が場であるだけに言い合いを避けようとしたらしい。

 しかし立ち止まったトルクとは打って代わりリガンは立ち止まらない。


「そんなに嫌ですか、祝ってもらうだけなのに」


 トルクは嗜めるような目をリガンに向けるがリガンは引こうとしない。

 やがてトルクが先におれたのか、ため息をつく。


「ハァ、二十歳にもなって祝ってもらえということか」

「そうです、誕生日は祝うべきです」


 リガンは幼少の頃、家族から浮いた存在であるが故に誕生日を祝ってもらうことがなかった。

 リガンが誕生日を初めて祝われたのは貴術の村にいた時である。その時の気持ちは言い表せぬ程であり、その思いから幾つになっても誕生日は祝うべきだと考えていた。

 しかしそんな思いがトルクに伝わるわけでもなく、話は水平線かと思われた。

 しかし物事には必ず終わりが来るように話し合いにもいずれ結末が出るものである。

 そしてその時が来た。


「どうしたら、祝う気分になるんですか。トルクを祝う為なら何でもしますよ」

「そうか、何でもか。じゃあ酒を飲んで貰おうか、しらふの奴がいると場がしらけるからな」


 もちろんトルクは冗談でいったつもりである。つい先程まで座談してた際、酔っているのはテストぐらいなもので、酒を飲んでいないリガンやマルトは無論のこと、酒を飲んでいたトルクも酔っているとは言いがたい程意識を保っていた。

 そこまで言うなら飲みたくない酒を飲む位の覚悟を持っているのか、暗にそう言っているのだ。

 無論トルクはリガンが酒を飲めないだろうと踏んでいた。その為にこんな事を言ったのだ。


 しかしトルクの、リガンの意思に対する認識は間違っていた。

 トラルンでも見せた通り、リガンの人を笑顔にしたいという気持ちは大層大きいものであったのだ。


 リガンは急に今まで一口もつけていなかったマットラー酒の入ったグラスに手をつけると、こともあろうに一気飲みしたのだ。

 それはたいそうな飲みっぷりであり、リガンの喉がゴクゴクと動く。テストやマルトは無論のことトルクすらも驚く表情をする。


 やがてグラスが空に成ると、リガンはいきよいよくカウンターに置き、トルクの方を向いた。


「ハァハァ、これでいいんですよね」


 赤くなった顔で勝ち誇ったようにリガンはトルクの方を向いて笑った。

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