4.21 歳はいくつ?
「広語喋れるんですか」
貴術族特有の白き服装、白く長い髪をたびなかせるマスターにリガンとトルクは視線を向ける。
人間の言葉である広語が分かる者がこの場に居るだけで、幾分感じていた疎外感が和らいでいくのを、リガンは感じた。
「まぁね、魔王が現れる前は貴術族の酒を人間相手に販売していたから広語は喋れるんだ」
柔らかく、聞き覚えのある言葉にリガンはほんわかする思いである。
しかし、そんなマスターに物申す者がいた。
「おい、俺の時とは随分と違うんじゃないか」
テストが口を尖らせてマスターに言う。勿論魔岩語で。
テストは広語は分からないが、マスターの声質が自分の時と比べ幾分変わっていることに気づき、その事を責めた。無論冗談混じりである。
話しかけられたマスターは、魔剛であり知り合いのテストの方を向く。
「それは客商売ですからね、初めての人には優しく、それが女性ならなおさらね」
「ふん、けどこいつらは俺が連れてきたんだ、あんまりちょっかい出すなよ」
「分かりました、私は仕事に集中しましょう。それでご注文は」
「それなら少し待ってくれ」
テストはトルクを挟んだリガンを見る。
「お前さん方、何を飲む。テットラー酒かそれともマースト酒かそれとも他のか」
貴術語でそう問われるリガンではあるが、酒を飲んだことがない以上どう受け答えしたらよいか分からない。
そしてこのような場面には、経験者に聞くのが一番である。
「トルク、テットラーかマースト?、それか他の酒か、何が飲みたいて聞かれたけど、どう答えればいいかな」
首を傾げながらリガンは尋ねる。そしてトルクは隣にいるリガンの方を向いた。
「僕はテットラーかな、君は弱めのマーストの方がいいと思う」
あっさりと悩むことなく答えるトルクに、質問した側のリガンは驚いた。
「トルク、貴術族の酒が分かるの?」
「三連の戦いの時、飲む機会があってそこで覚えた」
端的に言い放つトルクの説明に納得するリガンである。そんなトルクの答えを受け入れ、リガンはテストにテットラーとマースト一つずつ頼み込む。
それを受け入れ、テストは注文した。
しかしそこでリガンは有ることに気がついた。それはトルクの年齢である。
リガンは今現在16歳であり、まだ大人というより少女と呼ばれる年頃である。
そしてトルクの年齢をリガンは今だ知らない。予想としては自身より同じかせめて1、2歳上の同年代と思っていた。
しかし三連の戦いが行われたのは今から約4年前のE.W526年2月である。
もし仮にトルクがリガンと同じ16歳だとしたら三連の戦いに参加したのは12、13歳ということになる、これはいくらなんでも若すぎる。
となるとトルクは自分が思っていたよりも年上なのか、その可能性に思い至ったのだ。
そう考えている間に、酒がこれまた石で出来たグラスに注がれ、各々の前に置かれる。
その臭いは強烈であった。弱めと呼ばれた筈のマーストの臭いに酒初心者のリガンは目眩がする思いである。
しかしながらそのマーストよりはるかに強い酒と思われる物をテストが一口で飲み干したことに、リガンは信じられないといった表情となった。
「くはぁー、生き返るなぁ。やっぱり酒はテットラーだな、お前もそう思うだろ」
テストに続きトルクもテットラーを飲み干す。そして再び赤くなった顔でトルクの方を向く。そんなテストの言葉にトルクは首肯する。
「やっぱり、美味しいなテットラーは。ずっとこれが飲みたかったんだ」
「おぉ、人間なのに分かってるじゃねぇか、そうだよ酒はやっぱり強くなくっちゃな」
テストとトルクが仲良く談笑していることにリガンは違和感を覚えた。
それはあまり人付き合いが良いと言えないトルクが他の者と打ち解けていた事にではなく、魔岩であるテストと人間のトルクが普通に会話をしているという点においてである。




