第七話 緊急閣僚会議
随分間が空きましたが続きをどうぞ
白い館
「今回集まって頂いたのは現在日本で起きている不可解な現象にどう対応するかです」
伊部総理が切り出して始まった閣僚会議の面子は林副総理 菅原官房長官、外谷防衛大臣、沖田外務大臣、後藤准将などである。
「では、私から報告をさせていただきます。」
「地震後に起きた異変は数万件に上りますが早急に解決するべき問題をまとめました。」
後藤は報告書を渡しつつ説明する。
「我々は稼働を再開した複数の衛星を駆使し以下のようなことを確認しました。
日本本土の喪失、日本本土に展開している軍の喪失、日本国籍不所持の消息不明、軍事衛星の半数を喪失、未確認の陸地の発見、未確認生物の発見、未確認文明の発見。
これらの情報を精査した結果、我々は別の世界、つまり異世界に迷い込んだという結論がでました。」
後藤がそう言うと閣僚はざわついた。
「シンクタンクも同じ様な結論に至っている。ここは異世界に来たことを認めるべきだと思うが。」
唯一、微動だにせずいた菅原官房長官がそう言った。
「仮にそれらが事実だとして、これからの対応はどうする?」
伊部の顔を伺いつつ林も続けて言う。
「やらなければならない事はたくさんあるが、対策委員会の設置、事実の報道だろう。」
沖田外務大臣がそう言う。
「一先ずは経済、安全保障などに対策を講じなければなるまい。」
外谷防衛大臣も続く。
「しかし、混乱は避けられない。警視庁に普段より当直の動員数を増やすように通知しておけ」伊部が菅原官房長官にそう伝えると能面の様な顔はゆっくり頷いた。
記者会見で公開する部分を協議した後、緊急閣僚会議は終わった。
後藤は閣僚が出て数分したところで伊部に話しかける。
「伊部総理、先日の件ですが」
後藤がそこまで言うと伊部はさえぎるように答えた。
「後藤准将、あれは時期尚早だ。まだその時ではないように思う。」
「しかし」
「大丈夫。まだ私はこの座を譲るつもりはないよ。」
後藤は言葉が続かず、そのまま何も言わず退室した。
警視庁
「官房長官から動員数を増やせと要請がきた」
青い服に身を包んだ壮年の男性が隣の男性に話かけた。
「ああ、何でも異世界に飛ばされたとか言ってたな。治安維持の為にもやむを得ないだろ。」
「しかし、難しい局面だな。」
「ああ、首相を狙うか…はたまた恩を売っておくのかきわどい判断になる。」
「官房長官もいいころだ。総裁選に出てもいいんじゃないか」
「いずれにせよ、総選挙はするだろうな。」
「赤は監視しとけ、在日がいなくなって勢いは堕ちているが暴走されても困る。」
「他にもリストに載ってる組織は注意を払うよう通達」
とある党本部
「異世界に迷い込んだ?」
「はい、確かな筋からの情報です。」
「…となると、……幹部を集めてくれ」
党本部会議室
「恐らく、この情報は本物だろう。となるとあの首相のことだ、総選挙に出てくる」
「未曾有の状況下でそんな呑気なことをやりますかね?」
「既に自民党は動き出している。動きからして選挙に出る公算大と見るべきだろう」
「口実はこの未曾有の事態で最も信頼できる政党は?かな」
「我々の選挙方針はどうしますか?」
「新しい政策を検討する時間が無い。過去に行った政策の実績を全面に押し出していく他ないだろう。」
「会議中失礼します。自民党から協議会の要請がありました。」
「自民党の要請は受けるべきだ。」
「都民会からも来そうだが?」
「国会議員としての経験数が違う。都民会が事態脱却を図るのは不可能だ。」
「が、伊部への不満が溜まっているのも事実だ。」
ここで沈黙が流れるがすぐに破られた
「自民党の要請は少し待たせてもいいのでは?」
「そうだな、とりあえずは学会幹部にそれとなく匂わせておけ。」
自民党本部
「少々遅いな。」
自民党の本部で幹部はイライラを募らせていた。
長い沈黙が会議室を包んでいた。
「公明党より維新の会」が本音の議員が大半を占める自民党にとって今の状況は気に食わなかった。根本的に考えが合うはずがない政党なのだ。水と油の関係と言える。しかし、支持基盤が強固な公明党は選挙において安定した強さがある。都議選前までは優位に立っていた自民党は最早ない。問題もある「公明党と選挙協力したくない」という声が自民党支持基盤で少なからず上がっているのだ。自民党はジレンマを抱えた状態で選挙を迎えることになる。「公明党と組まなくても選挙で勝つ」が暫くの命題だろう
とあるカフェ
ブラックコーヒーは嫌いだ。偶には飲むが、その度に後悔する。
窓から見える景色は車の列。なんのことはない、いつも道理のカフェだ。
ブーブー
携帯に来た通知を見ると見慣れた懐かしい相手からのメールだ。
開くと
「今どこにいる?話したい件がある」
とあった。
俺は「いつものカフェ」と返信すると「後十分」と返ってきた。
それからきっかり十分、彼は来た。
「久しぶり、いつぶりだっけ」
「富士演習場以来だ。」彼はそんなことはどうでもいいとばかりに早い口調でこたえた。
「手短に話す、まずこの写真を見てくれ」
黒いカバンから彼は書類を手渡した。
そこにはあまりにも眉唾ものの情報を纏めたものだった。
「これはいったいなんだい?」
「書いてある通り国家存続計画だ。」
よく都市伝説の中で出てくるその計画を聞いて俺は失笑した。
「まさか…」
「そのまさかだ。いいか、今各省のエリートが同時に居なくなっているんだ。そしてその書類に書いてある通り彼らは国家存続計画の中で臨時政府に選ばれるものたちばかりだ。」
「…この書類が本当として俺になぜ話した?」
頭の中はその疑問で埋め尽くされる
なぜ俺に話したのか。
「これを君に渡したくて会いに来たんだ。」彼はそう言うとUSBメモリを机の上に置いた。
「君の疑問はこいつが答えてくれるよ。」彼はそう言うと席を立ち店内から出ていった。
俺はその背中を見ることしか出来なかった
誤字脱字はすみません。これからもマイペースでいかせてもらいます。今後もお酒は二十歳になってからをよろしくお願いします。