第十話 二つの作戦
作戦名 「得体の知れないものはまず観察しよう」
何ともコメディーじみた作戦名だがこの作戦が日本の行く末を決める重要な役割を持つものなのだ。そしてこの作戦の裏では極秘裏に進められている作戦があった。
「ダメ。」
作戦の概要を説明し、輝の了承をもらった「した覚えはないぞ!!」後藤に予想していた壁が立ちふさがる。
「そこを何とか曲げてもらえませんか?」
「ダメなものはダメ。」
このままでは平行線だと思い、後藤は奥の手を使う。交渉に入る前にとある人物から困ったら私に電話をするようにと言われていた。
早速、その人物に電話をかけてその受話器を信濃に渡す
電話で会話していく中で信濃の頬が上がっていくのを後藤は見逃さなかった。
電話が終わると信濃は
「作戦の件、了解したわ。」
あっさり了承した。「じゃ、私はこれで失礼するわ。」部屋を出るときも信濃は終始ご機嫌だったことに輝は後藤に疑問を投げる。
「電話で何を話したらああなるんだ?」
後藤は答える
「実は、内容自体は俺もわからないんだ。話し相手が雪中佐ってことだけで」
(ひょっとして一番、やったらいけないことをしたんじゃないか?)と輝は思ったが後の祭り、結局なるようになるさと片付けた。
そのつけがまわってくるのはそう遠い未来の話ではなかった
二人のあずかり知らぬところで二つの作戦が動いていた。
白い館
二つの作戦を説明した後藤は伊部の要望を聞いていた。
「一つ目の作戦のオプションとして新しく発見された無人島に調査部隊を送りたいとのことだがあくまで軍が主導で行いたいのか?」
「はい、民間に主導権を渡すのは現時点では危険すぎます。」
「わかった、調査は軍が主導する形をとる。」
一通りの要望を聞いた後、伊部が問題をきりだす。
「一つ目の作戦は私の要望に沿ったものだった。その点に関しては大いに評価するが、二つ目の作戦は私の要望とは別のものだ。検討はするが決行するのは難しいと思う。」
後藤は今一度、伊部に理解を求めた
「総理、貴方が思っているより事は簡単ではありません。X日(Xデー)までに対外的に経済活動をしなければこの国が持ちません。マスメディアに気づかれるのも時間の問題です。作戦は漏れないように最善を尽くしますが漏れる可能性もあります。しかし、万が一に漏れたとしてもマスメディアが報道する前に表向きの作戦を公表し、時間を稼ぎ、第二の作戦がうまくいけば今後この世界で有利に外交が展開できます。」
「しかし、我が国でこのようなことを…表に出したらことだぞ。何とかほかの方法はないのか」
「……総理、時間が余りにも少なすぎます。この作戦はシンクタンクに限りある時間の中で検討し精査したものです。他の選択肢を考えている時間はありません。仮に未来でこの作戦の他の選択肢もあることに気付いたとしてもそれは結果論にしかなりません。今、私達がすることは覚悟を決めて前に進むことです。」
伊部はしばらく考えたのち答えをだした
「作戦を許可する。準備に入ってくれ。」