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1-2 出会い

ああ、なんか見たことない生き物の鳴き声が聞こえる。

よく分からない生き物が飛んでるー!

何これ、どういうことなの…。

私はこれ以上、声をかけてくれた親切な人に何と言っていいのか言葉が出てこなくて

そのまま呆然と立っていたのですが、彼はありがたいことに話を続けてくれました。


「もしかして迷ったのかな? 私はアリック。君は?」


「私は、豊里絵梨。日本という国からやってきた者です」


「トヨサトエリ…?不思議な名前だね。ニッポンという国も聞いたことがない」


「ですよね…鬱だ」


「それでトヨサトエリ…は、どこへ行きたいのかな?この近辺だとブローレって町が近いけど」


「日本に帰りたいです…」


とは言っても、帰れないのは明白でした。

帰れるわけがない。どうしてこんな場所にいるのか全く分からないし。

もう愛猫に逢えないかもしれない。

気になる漫画や小説の続きも読めないかもしれない。

ありえない…!


「悪いね、私では君の希望には応えられないみたいだ。せめてブローレまで送ろう」


「ありがとうございます」


「えーと…トヨ……」


アリックと名乗る彼は、早くも私の名前を忘れてるみたいだった。

分かるよ。私も人の名前覚えるのすごく苦手なんだよね。最速2秒で忘れるね!


「豊里絵梨です。絵梨でいいですよ。私もアリックって呼んでいいですか?」


「あ、ああ…すまない。エリ、よろしく」


「はい、よろしくお願いします」


ブローレという町は私とアリックが出会った森から歩いて10分ぐらいでした。

奇麗な湖がいくつも周囲にある町で、町の中心には大きな噴水もあって多くの人々で賑わってる。

なんか奇麗な女の人の像も噴水の傍に立ってる。よく出来てる。

果物が売ってるお店がいっぱい並んでて、剣や弓が主体の武器屋とかもある。

果物を見てると、そういえばお腹がすいてきた。

森に行けば、果物ぐらいあるよね……あとで獲りに行こう。うん。

はっ…!


「えっと、アリック…この国ってモンスターとかいたりなんか…」


もしもモンスター的な存在がこの世界にいるのなら、気軽に森に入るのは危険だ。

そしてその場合果物が取れないから私のお腹が心配だ。


「あまり凶暴なモンスターはこの付近にはいないがエリには少し、いやかなり危険かもしれない」


マジか。

私もオタクの端くれ。多少はバトルアニメも嗜んでいるけれど、知識だけでは戦えない。

襲われたら、やられる―。


「……やはり、忘れているようだね」


深刻な表情を見せて私のことを見つめるアリックに、私はアリックが

何をそんなに悩んでいるのか分からなかった。


「あ!やっと見つけましたよ。アリック!」


「シェリル。すまないね、ここまで来てもらって」


シェリルと呼ばれた女性は15~16歳前後ぐらいの子で奇麗な金髪ロングストレートだ。

アリックも金髪だけど短髪で、二人とも奇麗な青い目。アリックは23歳ぐらいかな?

黒いコートを着ているアリックとは違って、シェリルは銀色の軽鎧で武装してる。

シェリルが私のすぐそばまで近づいてきたと思ったら。

ううん、近い!近い近い近い!あと数ミリで触れてしまいそうな距離まで顔を近づけて

シェリルは私のことを凝視していた。


「アリック、この人は誰ですか?」


シェリルの質問にアリックが答える前に私は自分から名乗り出てみた。


「あ、初めまして。豊里絵梨と言います。絵梨と呼んで下さい。日本という国から来ました」


「初めましてシェリルです。よろしくお願いしますね。 …アリックちょっといいですか?」


シェリルは少し強引にアリックの腕を掴んで私から距離を取り、密談を始めた。


「アリック、あのエリとか言う女の人とはどういう経緯で出会ったのですか?」


「…モンスターに襲われ死にかけていたところを魔法で治療して助けた。エリはモンスターに襲われていたところをショックで忘れているようだが」


「あの事件との関係は?」


「見ての通りだ。あの事件に関係する襲撃者達は、私達と会話をすることが出来ない。エリは私達と言葉が通じるし、そしてこの近辺のモンスターに遅れをとるぐらいとても弱い。襲撃者達とは無関係だよ」


「不思議な子ですね」


「ああ、全くだ。だから困っている」


何やら深刻そうな話をしている二人にこんなこと言うのは大変申し訳なく思うのだけど。

町に来て、人がいっぱいいる場所に来て、きっと少しは落ち着いたのだと思う。


「おなか、すいた……」


そんな空気の読めない言葉を、言えるぐらいに。

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