僕と妹と靴下と
カレキ様がくださったお題にそって作ったお話です。
私は東雲楓。今をときめく小学2年生!
私には十個離れた兄貴がいる。
「おはよ、楓」
「…」
まったく、話しかけんなって!でも、まあ、返事くらいはしてあげてもいいかな!
「…はよ」
「うん。今日のご飯は?」
まったく、兄貴は私がご飯を作ってあげなきゃご飯もたべれないダメ人間なんだから!
「ん」
指だけさしてご飯を教える。
「いつも、ありがとうな」
急に体が熱くなった。
「べ、別に!」
どーしよう、ダメ人間の兄貴なのに!兄妹なのに!
やっぱり、私兄貴のこと好きみたい…。
「楓?」
「な、なんでもない!…いってきます」
「おう、小学校頑張れよー」
もう!兄貴のバカバカバカ!なんで私の気持ちに気付かないの!?ダメ人間なのに!
「おはよー楓ちゃん」
そこに同級生の女の子、鍵朱陽子ちゃん。私の兄貴を褒めてくれる唯一の理解者…じゃなくて、ダメ人間の一人!私が学校で一緒にいてやってる女の子。
「陽子ちゃんおはよー」
「今日はなんか寒いね」
「そうだね」
でも、兄貴の靴下は温かいなぁ。って!べ、別にわざとじゃないんだけど!朝、急いでいて、履き違えただけだし!本当にわざとじゃないし!
「あ、楓ちゃんの今日の靴下かわいいね」
「え!?別に!兄貴の靴下だし!かわいくないし!」
「お兄ちゃんの靴下なの?履いてきちゃったの?」
「わ、わざとじゃないもん!こんなの、気持ち悪い!」
「(それでも脱ごうとはしないんだ。やっぱりお兄ちゃんのこと好きなんだね、楓ちゃん)」
「ん?なんで急に黙るのよ!」
「いや、やっぱり私は楓ちゃんといると楽しいなって思っただけだよ」
「なにそれ!意味わかんない!」
そうこうしていると、学校についた。
「よお楓!お前の兄貴、今日も学校休みか?ずっと部屋にこもりっきりなんだろ?」
「うるさい、あんたたちには関係ないでしょ」
なにも知らないくせに、兄貴のこと侮辱すんな。
「へっ!どうせ高校に入って俺のにーちゃんにでも負けたんだろ!お前の兄貴ひょろひょろしてるもんな!」
「うるさい!」
あーもう!怒り爆発ですけど!
「あんたになにがわかるの!朝起きておはようって言ってくれて、ありがとうも言ってくれる、とっても優しい私のたった一人の家族の何がわかるのよ!」
そう言って私は相手にのしかかり、ぶん殴った。
カタカタカタ、とパソコンのキーボードを叩いていた指が止まった。玄関が開く音が聞こえたからだ。
玄関にいくと、そこには楓が涙を流しながら立っていた。
「楓?」
「こっち見ないで!」
「どうしたの?学校は?」
「うるさい!」
「そっか、またケンカしたんだな?」
図星をつかれたように楓がこっちを向く。
「おいで」
僕のその言葉には突っかからず、こちらによってくる。
僕は楓を両手で抱き上げ、ただ一言「よしよし」と、言うだけだった。
「ねえ、兄貴って弱いの?兄貴は、私のために家にいるんじゃないの?」
「ん?どうしたんだ急に。当然、お兄ちゃんは楓のために家にいるし、弱くなんかないぞ」
「じゃ、どうして皆はそう言うの?」
世間の方々は、僕のことを引きこもりや、ニートなんて呼び方もあるのかもしれない。
でも、僕は決して働いていないわけじゃない。
僕の職業は小説家、ほとんど家からも出なくていいと思う仕事だ。
2年前、楓が学校に通う前に親が交通事故で亡くなり、引き取ってくれた叔父は僕らを二人にしてどこかへいった。もちろん、マンションの家賃や生活費は贈られてくるのだが、それは楓の給食費や集金の分はなかった。
そして始めた小説家、最初は苦労を重ねる日々だった。
応募した小さな文庫で書籍化してもらい、僕は今の職を手にいれた。
「楓、皆がそう言うのはね?楓が可愛いからだよ。だから、僕がなんて言われようときにしなくていいんだ」
「気にしないわけ泣きじゃん!だって、自分の好きな人をバカにされてなんとも思わないなんておかしいもん!」
「そっか、ありがとう。俺も楓が好きだぞ」
「兄貴、ごめんなさい」
「学校途中で帰って来たことか?」
そう言うと、楓は首を横に振った。
「これ」
楓は自分の足を見せてきた。
「兄貴の靴下、履いていっちゃった」
「あぁ、なんだ。別に、謝らなくていいよ?だってそれ、楓に似合うと思って買ってきたんだ」
「そうなの?」
「おう、てか、大きさで分かろうぜ?」
「るっさいバカ兄貴!ありがとう」
「これからも僕ら兄妹は、ずっと二人一緒だ。いつか楓がお嫁に行くまでは。それまで、お兄ちゃんの面倒見てくれるか?」
「もう、仕方ないんだから!」
そう言って笑った楓を、僕は一生お嫁にはだしたくないと思ったのは、内緒である。
こな兄貴は、爆発しろ!と、書いた私が思ってしまうほど羨ましいと思います。
たまたま読んでいただいたのであれば有難うございます。