沢尻瑛子の場合 47
第九十七節
「瑛子さんさ」
「何?」
「そいつらの精神とかどうしたの?まさかそのまま?」
「うんにゃ。中の一人に言われた。このままだったら身体は女になっててもモノ使ってでも女を犯し続けてやるって。だから二度とそういうことが出来ない様に、おしとやかで女らしい人格になってもらった」
「精神も操れるんだ…」
「みたいだね」
「瑛子さん、さらっと言ってるけど凄いことだよ」
「つーかあんたが信じてくれた上にここまで食いついてくれる方が予想外だったよ」
「あ…そうだね。ゴメン」
「いーよ謝んなくて。つーかなんであんたそんなにすぐ謝んのよ」
「いやー何となく」
「いいけどさ別に…」
「で?その後キングスたちはどうしたの?行方不明らしいけど」
「えーと…言わなきゃ駄目?」
包容力のある笑みでにっこりする群尾。
「いいよ大丈夫。言ってみて」
「…制服姿にしたったから、パンツ脱がしてノーパン状態で山手線一周しに行けって言って行かせた」
「ええええっ!?」
「その後、誰かに声掛けられるままノーパンで新宿歌舞伎町うろうろしてろって放り出しちゃった。後はしらね」
ひきつった表情の群尾。
「そ…れはまた過激な…」
「本当はぶっ殺したかったの!あれくらいで勘弁してやったんだから」
「む~ん…これで元に戻れないとなるとこれはかなり過酷だよ。ある意味死ぬより辛いペナルティだね」
「やっぱそうなんだ」
「しかしこれは凄い。画期的だよ。本当の意味での物理的去勢を実現しちゃってる。性格まで変わるとなったら犯罪者の更生にもなってるし…スゴイやこれは」
第九十八節
「べっつに更生目的だった訳じゃないけどさ。でも清美は勿論、これまで餌食になってきた女の子のこと考えると腹立ってさ」
「正直、無理強いされた女性たちの怒りを買ってしまうのは仕方が無いと思うけど、イケメンにひかれてのこのこ付いてきた成人女性に関しては余り同情の余地は無い気がするけど」
「まーね。でもあいつらはウチの高校の女子をもう何人も食ってて、しかもこれからもやるって言ってたんだからそりゃやるでしょ」
「素晴らしい!正にサージカルストライク!」
「何だって?」
「要するに敵がこちらを攻撃する可能性のあるミサイルを先回りして出発前に破壊することを言うんだ」
「えーと…つまり、あたしのやったことは正しかったってことでいいのかな?」
「正しいね。しかも殺さないから人道的にもいいし、去勢も成し遂げられ、精神まで操れるとなれば一石二鳥。いや一石三鳥だろうね」
「あ…ありがと」
「どうした?」
「まさか褒められると思ってなくて…勢いに任せてやっちゃたことをちょっとだけどうかと思ってたからさ」
「瑛子さん…凄いよキミは」
どう答えていいか分からず、沈黙してしまう。
「…はあ」
「その…お願いがあるんだけど」
「…何よ」
「…握手してくれる?」
瑛子はずっこけた。
(続く)




