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沢尻瑛子の場合 46


第九十五節


「つまりどういうこと?」

「日本の法律だと、人を殺しちゃいけないことになってるんだ。それは知ってるよね」

「…馬鹿にすんなって。それくらいわかる」

「でも、人を殺してもいい場合があるんだ」

「はぁ?何それ」

「その法律要件に従えば人を殺しても罪に問われない」

「戦争とか?」

「いや、それはそれでまた全然別の話」

「何で人殺してもいいわけよ」

「それが『正当防衛』あと『緊急避難』」

「正当防衛は分かるけどもう一個は何?」

「ざっくり言えば自分が殺されそうになった場合、それを避けようとして何かをし、結果として相手が死んでしまっても殺人罪には問われないってこと」

「ま、そりゃそうだよね」

「ただ、可能な限りそういった最悪の場合は避けなきゃダメなんだ」

「意味わかんない」

「相手が襲い掛かって来て、こっちもパンチして相手をダウンさせたとする」

「うん」

「この時点で少なくとも生命の危機は脱したから、その場を逃げるのが正解。うずくまってる相手を更に殴り続けて殺したらこれは罪に問われる」

「何でよ。起き上がってくるかもしれないじゃん」

「そうかも知れない。けど、とりあえず逃げたり縛り上げたり別の選択肢がある。だから殺しても仕方が無いほどの行為の違法性は阻却されきらない」

「お前の言葉遣いは難しくてわかんねーよ」

 イライラしているのか、語気が荒くなる瑛子。

「…ごめん」

「で?結局なんなんだよ」

「瑛子さんはその…乱暴されかけたんだよね?」

「あー。犯されかけたね。取っ組み合いまでしかしてねーけど、一段落したら多分やられてた」

「だったら問題ない」

「女にする辺りもか?」

 また考え込む群尾。



第九十六節


「…実際に見た訳じゃないけど…もしもそうならかなり大胆で画期的な解決方法になるかも」

「はぁ?」

「性犯罪って非常に厄介なんだ」

「よーするにスケベ男のことだな」

「そう。女性にとっては許されざる悪人だろうけど、残念ながら現在の法律だと捕まえても死刑には出来ないし、余りにも長期間の服役もさせられない」

「納得いかねー」

「だと思うけど実際そうなんだ。そして性犯罪は再犯率…つまりまた女性相手に乱暴する犯罪を繰り返す率…が非常に高いんだ」

「スケベは治らんってか」

「これをどうするかは社会問題になってる。日本でもだけど、アメリカや他の国は特に困ってるんだ」

「…まさか、女の刑にするのが丁度いいってのか?大胆だな」

「察しが早くて助かる。でも、それに近いことは実際に試されてるんだ」

「お前…何でも良く知ってんな」

 元々乱暴な言葉遣いだったが、緊張がほぐれて来たのか段々こちらも全開になってきた。

「うん。所謂いわゆる去勢手術は知ってるよね?」

「ちんちん切り落とす奴?まさかあれをやってんの?」

「いや、流石に人道上問題があるから物理的に切り離したりはしてないはず」

「レイプ犯のちんちんなんぞ切り落としちまえばいいんだっての!」

「だから、女性ホルモンを注射で注入したりする『心理的去勢』が試されてるんだ」

「…何それ?精神的にオンナにして女を襲わせない様にするってこと?」

「女になり切る訳じゃないけど、男性の攻撃性…それは性欲にも繋がるんだけど…を抑制する効果はあると見込まれてるんだ」

「知らんかった…つーかやってることあたしとあんまり変わらんじゃん」

「そうなんだ。もしもそんなふうに男を女に出来るなら、きっと女性への性的暴行事件の被害者は確実に減るはずだよ」

「ま、あいつらはもうちんちん無いからそれ使って女に悪いことは出来ねーし」



(続く)


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