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沢尻瑛子の場合 40


第八十三節


「せいぜい階段とかには気を付けるんだね。お巡りさんとか駅員さんとかに捕まったらその時は行動制限を解除してあげる。その後の事は知らんけどね」

「あなた…何の権限で…」

「はぁ?権限だぁ?うるせーよこの痴女が!」

 スカートに手を掛ける瑛子。

 必死に前方を押さえつける元・大男。

「ほう、段々意味が分かって来たみてえじゃねえか」

 チンピラみたいになっている瑛子の口調。

「お前らはまだスカートの真の意味を知らんだろ?幾らパンティ履いてスリップ付けても学園祭で女装してんのと本質的には変わらねえよ。けど、ノーパンだとえらいことになるのは…分かるな?」

「この…変態」

「男のくせにブラジャーつけて女の制服着てノーパンスカート状態のお前の方がよっぽど変態だろうが!」

「だってそれはあなたが…!」

「あーそーそー、本職の痴漢さんに遭っても全く無抵抗ってことにしとくんでよろしく」

「っ!!」

「とりあえずここ出たら全員解散な。別々にJR乗れや。一周以上したら降りていいや」

「…その後はどうするの?」

「とりあえず新宿歌舞伎町に行って、誰かに声掛けられるまでうろうろしてもらおうか」

「…っっつ!!!!!」

「とりあえず説明は以上!質問ある?」

 手を挙げる元・大男。

「またあんたなの?…何よ」

「あなたの目的は女の子の身を守ることだって言ったわよね」

「そうだけど?」

「今のあたしたちも女なのよ。それが新宿歌舞伎町で男たちの毒牙に掛かるのを自ら仕掛けるなんて矛盾してると思わないの?」



第八十四節


 間をあけて瑛子が答えた。

「まっっっっつつたく思わないね」

「…」

「あたしが言ってんのは『無実の女の子』ね。何にも悪いことしてないのにあんたがたみたいなクソ男にやられちゃうのを助けたいってことだから。…あんたがた『無実の女の子』じゃないでしょうが。敢えて言うなら『有罪の現・女の子』だもん。以上、論破終了」

「あ、あたしも!」

 今度は元・好青年が手を挙げた。すっかり口調や挙動が女子高生になっている。って瑛子がそうしたんだが。

「…今度は何?もうこれで質問終わりね。…どうぞ」

「じょ…うだんだよね?」

「何が?」

「あたしたち…本当にオンナになっちゃったの?本当に?」

「見ての通り触っての通りだけど?」

「これから一体どうしたらいいのよ!」

「んなこと知らないわよ。適当にやればいいんじゃないの?」

「そんな無責任な!」

「うるさい!」

 瑛子は一喝した。

「本当ならブチ殺してやっても良かったんだよ!それをそんな可愛い女の子にしてあげて、可愛いおべべまでプレゼントしたげたんだから感謝して欲しいわ全く。これからどうなるかって?本気で知らんし興味も無いわ。それだけ可愛くて若いんだからあんなことやこんなことして稼げばいいんじゃないの?良く知らんけど。将来のことだけど…それこそ知ったこっちゃないわ。せいぜいDV持ちの彼氏でも捕まえて不幸せに暮らすんだね!」

 女子高生の一群がゆっくりと歩きだした。

 慣れぬ女物の衣類…とりわけスカート…に持ってきてよりによってノーパン状態を強いられている。

 普通に歩いていてもめくれてしまいそうな短いスカートがただでさえ不安なのに、下半身が涼しいを通り越して寒い。


 ガレージのサビだらけの扉が遂に開かれ、可愛らしい制服…のミニスカートの下はノーパン…の女子高生たちは街に消えて行った。



(続く)


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