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沢尻瑛子の場合 35


第七十三節


 ガレージの中にいた男全員がその場に集められていた。

 合計は九人だった。

 大男まで含めて全員直立不動である。


 瑛子は自分の能力について徐々に把握し始めていた。

 経験上だが、明らかに悪意、害意を持って襲い掛かって来る相手に対し、「女になれ!」と意識して接触することで相手を女にしてしまうことが出来る。

 何故か分からないが、服まで変形し、その服装は瑛子の母校の女子の制服のみだ。

 女に性転換させた後はかなりの程度精神的なコントロールをさせることが出来る。


 そして、この「女にする」行程はかなり自由度があり、身体の一部分ずつゆっくりと変形していき、服も部分部分を変形させることも出来るのだが、本人も女になって女装していることも意識出来ないほど一瞬で全てを終わらせてしまうほどに素早く行うことも出来る。

 更に、コントロールだけを先に行うことも出来るらしい。


 瑛子は見よう見まねで全員をコントロール下に置き、目の前に整列させたのだ。

 当然、汗臭い男どもに紛れて一人だけ可愛い制服の女子高生が隅でもじもじしている。先ほどの好青年である。


「えー…おっほん!」


 何やら演説前みたいな瑛子だった。

「本日はお日柄もよく…じゃなくて」

 軽くボケてみた。

「あんたがたは罪も無い女の子たちを暴行し、薬漬けにし、自分たちの欲望のままにセックス三昧にさせてきた!」

 改めて言葉にするとやはり許せない。



第七十四節


「この罪断じて許しがたい!よって死刑に処する!」

 「何だと!」「ふざけるな!」そんな声が上がる。

 瑛子は実験がてら、その場で直立不動で動かない程度に縛りは掛けたのだが、敢えて喋ることは出来る様にしておいた。

「あーうるさいうるさい!ちょっと黙って!」

 ぴたりと黙る男ども。

「…と、言いたいところだけども、死刑は勘弁してあげる」

 「当たり前だ!」「今にみてろよ!」などと悪態再開。

「やかましい!」

 一喝。

「あんたがたのせいでどれだけの無実の女子高生が泣いて来たか分かってんでしょうね!親友の清美だってあんたがたにクスリ打たれて今入院してるんだよ!」

 「ヤレたんだからいいじゃねーか!」「お前の相手もしてやるぞ!」とのヤジが飛ぶ。

 瑛子の眉間にビキビキと青筋が立つ。

「…ほう、つまり何の反省もしていないと…」

 「女とやるのは人間として当たり前だろうが!」「モテねえからって見苦しいぞ!」とヤジ。

「別にセックスするなって言ってないでしょ!恋人とか、ガールフレンドとか…一緒か…とにかく、人に迷惑かけないで!さもなきゃ一人でやってればいいでしょうが!なんであたしたちを襲うのよ!」

「いいか」

 大男が発言を求めた。手を挙げようにも上げられないからだ。

「…どうぞ」

「それこそあんたには分からんだろうが、男ってのは貯まって来たら発散しなきゃならんように出来てる。それを罪だと言われたんじゃ存在することも出来ない」

「…だからってレイプしまくっていいって訳じゃ…」

「それにな」

「何よ」

「オレたちばかりが一方的に襲った様なことを言ってるが、半分くらいは『無実の女子高生』に求められたんだぞ」

「…え?」



(続く)


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