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沢尻瑛子の場合 20


第四十三節


「あんた何よその態度は?敬語使ってもらえるかな?」

「うるせー!…教えたら戻せよ?あぁん」

 ぶわりと舞いあがるスカート。

「きゃあああっ!」

 瑛子が思い切りスカートをめくりあげたのだった。

 再び胸倉を掴んで突き上げる瑛子。

「テメエ調子に乗ってんじゃねえぞ!さっきあたしに飛び蹴りかましてくれたよなあ!ああ!その仕置きが済んでねえぞビッチが!」

 我ながら余りにも乱暴な言葉遣いに気が滅入ってきた。

「そのスカートの長さじゃ巾着とか出来ねえけど、ノーパンで山の手線一周とかやってみるか?どうだおら!」

「そ!そん…」

 泣きそうな顔になる女子高生。

 自業自得ではあるが、我ながら次から次に浮かんでくるえげつない責苦に呆れる。


 清美はすぐに見つかった。

 言葉通り細マッチョの高級スポーツカーの中で気絶していた。

 何やら薬物を服用させられたのか、軽く泡を吹いて意味不明の言葉を呟いている。


 即効で救急車を呼び、その間に「女子高生」をボコった。


 背後から羽交い絞めにしてきた男は瑛子が「女子高生」に掛かり切りになっている間に這う這うの体で逃げてしまっていた。



第四十四節


「あー気色悪い!気色悪い!お前男のくせに女の制服なんて着てんじゃねえよ!」

「仕方が無いだろうが!お前が無理やり服を変えちまったんじゃねえかよ!」

「知らねえよ!」

「だったらすぐに脱いでやるから今すぐ元に戻せよ!」

 ふんぞり返った態度と可愛らしい女子高生姿のギャップが相変わらずヒドい。

「とりあえずやることやっとけ。清美の携帯に『嫌いになったから二度と合わない。さよなら』メールしろ」

「はぁ?」

 瑛子のパンチが女子高生の頬を捉え、首が回転して衝撃が反対側まで吹き抜けた。

「…」

「次はその首をもぎ取ってやる。言われた通りにしろ」

 完全に脅迫している。だが、これはやり遂げなくてはならない。

 女子高生の両手が目に見えてぶるぶると震えている。必死にスマホを操作している。

「終わったら清美のやらしいデータを全部消しな」

「…何でそんなことしなきゃいけねえんだ」

「次はお前の恥ずかしい写真を世界中にばらまくぞ。今ここでひん剥いてな」

 とても年頃の女の子が発する脅迫ではないが、背に腹は代えられない。

 手が震えまくるので操作に時間が掛かったが、どうにかメールを送り終える。

「約束だぞ。もうお前らには近づかん。データも全部消去するから元の男に戻せよ!絶対だぞ!」

「いいから早くしろって」

「終わったぞ。これでいいか?」

 むすーっとしている瑛子。

「次に現れたらどうなるか分かってんだろうね?」

「分かった!分かってるから!」

「あたしや恵理、清美は勿論のこと、家族やクラスメートの誰かに手を出したりしたら…」

「分かったって!誓うよ!もうお前らの学校には近付かん。当分!」

 ぶんぶんと両手を振る女子高生。

「当分?」

「…永遠に…近づきません!」

 考えている瑛子。

「…まあ…いいわ。やってみる。期待しないでよね。どうやって変えたのかも分かんないんだから」

 さっきは「こいつが女の子ならなあ」と念じながら触ることで発動した。

 だから「戻れ」と念じながら触れば同じ条件のはずだ。

「あーちょっと待て」

「…何よ」



(続き)


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