水木粗鋼の場合 01
第一章 水木粗鋼の場合
第一節
「…負けました」
セーラー服美少女が頭を下げる。
「…悪いな。ルールなもんでさ」
橋場が目の前に立つ。
「はい、覚悟してます」
観念したのか両手を身体の前に揃えるセーラー服の女子高生。
「あ…いや、そうじゃなくて両手を身体の前に持ってきてみてくれんか?」
「…?こう…ですか?」
夢見る乙女みたいなポーズになる。
その瞬間だった。
ぶわり!と風を煽ぐ音と共にスカートが舞い上がった。
「きゃあああああーっ!」
黄色い悲鳴が響き渡る。
同時にくったりと力が抜け、その場に崩れ落ちる女子高生。
*橋場英男 メタモル・ファイト戦績 四勝〇敗一引き分け 性転換回数二回
第二節
予想通りだった。
橋場はかつてから「メタモル・ファイト」の決着の論理について考えていた。
「メタモル能力」
それは、触っただけで相手の男の肉体をたちまちの内に女の肉体へと性転換させ、その上強制的に女装させてしまうことが出来る能力のことである。強制的な女装とは、その瞬間着ている服を女物に変形させることでなす。
にわかには信じがたい能力であるが、確かにそうなのだ。
能力者は大勢存在するが、その能力の個性は「衣装」である。
橋場英男の場合は「セーラー服(冬服)」だった。
全身真っ黒で、ふくらはぎまでの丈の長さのスカートというのが特徴だ。どうやらストレートロングの髪形も含まれているらしい。
この能力の存在を橋場に教えてくれた斎賀健二は「紺色のベストで、赤いネクタイのブレザー」への変身能力を持っている。
偶然出会ったバトルマニアの武林光は「クリーム色ベストに紅いリボンのブレザー」への変身能力だ。
「変身能力」といっても自分が変身するのではなく、「対戦相手を変身させる能力」であるのがミソだ。
更に、変身させた後の相手の行動をある程度操り、言葉遣いや仕草なども半永久的に矯正してしまうことも可能である。
「メタモル能力者」はそうでない一般人相手にこれを発動することが可能だ。
ただ、明確にメタモル能力者に対して敵意・害意がある場合にのみ自衛手段としてしか使うことが出来ない。
とはいえ、一度発動してしまえば性転換してしまった相手の肉体は二度と元に戻ることは無い。例え中年男であっても、女子高生にされてしまえば肉体は思春期の少女に変化したっきりだ。その後は少女として、女として生きて行かなくてはならない。
変身後の肉体はに能力依存するので、二十代半ばの女性へと変える能力なども存在する。
この「メタモル能力」を持つもの同士が戦うのが「メタモル・ファイト」である。
(続く)




