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沢尻瑛子の場合 08


第十五節


 待ち合わせ場所に指定されたのはウチの共学校の近くでも死角みたいなところだった。

 時間帯によっては奇跡みたいに人通りが少なくなる。

 かつて荒れていた時期にはギャングみたいになってた不良生徒たちのたまり場で、向こう三軒両隣のヤクザすら避けて通っていた…なんて都市伝説まである。

 そんな伝説を持つ瑛子の通う高校だが、今では学ランにセーラー服からオシャレなトラッド調のブレザーになり、よくも悪くな軟弱な軽い生徒たちばかりが集まるどこにでもある高校となっている。

 男子生徒たちは一部の運動部の部長クラスには暑苦しいのもいるが、大半の男子生徒は女子生徒みたいななよっとしたのばかりである。とてもではないが、番を張ったり構成員として周囲を睥睨へいげいする使いっ走りなんて勤まりそうではない。


「聞いてた特徴と違うな。本当に恵理ちゃん?」


 そこには確かに細マッチョの男がいた。


「…清美は?」


「まあまあ、そんな怖い顔しないで。清美は今車の中だから。で、キミ誰?」

「…清美の友達の沢尻瑛子だけど」

「ああ!瑛子ちゃんね!君も聞いてるよ。とっても可愛いんだってね!」

 何故か瑛子は本能的に嫌悪感を感じた。

「はあ…」

「で、今日は何の用?恵理ちゃんを呼んだと思ってたんだけど」



第十六節


「その前にこっちからもいいですか?」

 抑えようとしても、どうしても口調がとげとげしくなってしまう。

「…何かな?」

「あなた清美の彼氏ですよね?」

 一瞬笑顔が消え、すぐにニヤ付き顔に戻る。

「まあ、そういうことになるかな」

「恵理に声を掛けたって聞いたんだけど、それってふたまたってことですよね?」

「…」

 無言でぽりぽりと頭を掻いている細マッチョ。

「いや、そうじゃないんだよ」

「そうじゃなくないでしょ!」

 自分でも驚くほどキンキン声が出た。

「あたしたちは清美を裏切れないから今日はお話を訊きに来たんです」

 細マッチョは明らかに聞こえる様に『チッ!』と舌打ちをした。

「何ですかそれ?」

「あーごめんごめん」

 すぐに作り笑顔を取り戻すが、余りやる気が無いのかすぐに戻ってしまう。

「ちょっとこっち来てくれるかな?清美について大事な話があるんだ」

「気安く呼び捨てしないで!」

「…」

 見る見る内に細マッチョの眉間に青筋が立っていく。口角がプルプルと震えている。怒りを抑えているのがモロ分かりだ。



(続く)


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