沢尻瑛子の場合 07
第十三節
「瑛子!瑛子!」
「んあ?」
ぼうっとしていて気が付かなかった。
ここは休憩中の教室である。
「どした?」
「どしたじゃないよ。今日放課後いいかな」
「何よ?デート?」
「あたしと?馬鹿言ってんじゃないよ」
「あたしは構わんけどね」
にやりとする瑛子。
声を掛けて来たのはクラスメートの河野恵理である。
瑛子の肩をどつく恵理。
「真面目な話だっつーの!」
「別にいいけど。清美も一緒にね」
「その清美の話なんだけど」
眉間が歪む瑛子。
「…そうなんだ」
教室の前の引き戸が音を立てて開く。
「授業始めるぞー」
第十四節
恵理の話を総合するとこういうことだった。
仲良し三人組の内の一人、瀬戸口清美がこの頃彼氏が出来たらしい。
ここまではいいが、問題はその彼氏が親友が二人いるということを嗅ぎ付けて恵理の携帯電話番号とメールアドレスを入手したらしく、誘いを掛けてきているというのだ。
相手が相手だけに軽率に誘いに乗る訳にもいかず、かといって無視するのも怖い。
もしも浮気ということだとすると、清美にチクるのは避けたい。
穏便に済ますにはどうしたらいいのだろうか?
…とまあ、そういうことだった。
言葉は乱暴で横柄だし、クラスの男子にも弟を相手にするみたいなどつき漫才のツッコミみたいな恵理だけど、そういう優しいところがあるのがいかにもだ。
些細なようで深刻な悩みをよくぞ打ち明けてくれた!ってことで瑛子はひと肌脱ぐことにした。
清美には彼氏のことについてそれほど詳しくは聞いていない。というより彼氏が出来たのがごくごく最近のことなのでまだそう言う話に至っていないのである。
話のあちこちを繋ぎ合わせて推理した限りでは、もう身体を重ねてるらしい。
まーセックスだよね。
十七歳ともなればそういうこともあるだろね、としか思わなかった。
相手の男はモデルみたいに格好良くて細マッチョのイケメンなんだとか。
ただ、何をしている人なのかイマイチ分からない。大学生だともフリーターだともモデルだとも言われている。正にそういう話を清美から聞こうとしている矢先だった。
「キミが恵理ちゃんかな?」
(続く)




