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沢尻瑛子の場合 04


第七節


 おっさんはもう原形をとどめていなかった。

 そこにいたのは、生乾きの腐臭を放つサラリーマンのスーツに押し込められた美少女だった。

「あ…ああ…」

 自らの異常事態に気が付いているらしいが、うろたえることしかできていない。

 周囲の乗客は、立錐の余地も無いためにそもそも視認できないし、出来ても余りの突飛な出来事に事実であると認識出来なかった。

「おっさんさあ、若い子に嫌われるのって、見た目が不細工とかもあるけど、やっぱ不潔ってことが一番だよ。それが分かんないかなあ」

 青くなってガタガタ震えている美少女には余り分かっていそうになかった。

「ま、いいわ。あたしに出来る範囲で清潔にしといたから。でも、そのダッサい服装じゃだめね」

「…んぁっ!」

 恥ずかしそうにぎゅっと目を閉じ、小さく声を上げるおっさんだった美少女。

 サラリーマンスーツの内側で、トランクスが変形してパンティとなり、生まれたばかりの少女の下腹部に吸い付いたのだ。

「大げさだなあ」

「!!!!!」

 目をくわっと見開く美少女。

「ああっ!」

 火が出そうなほど顔が真っ赤になっている。

 ワイシャツの下に着こんだTシャツが生き物の様に変形し、ブラジャーとなって膨らみ掛け…いや、十分に発育した乳房を鷲掴みにしたのだ。

「おおげさだっつーの。あたしでも毎日してるよ。そりゃそうか」

 変化は止まらない。



第八節


 どこからともなく出現した柔らかくてすべすべの女物の肌着…スリップが乙女の柔肌をやさしく包み込んだ。

「ふぁ…」

 思わず陶然として力が抜けかけるおっさんだった美少女。

「はいはい、まだまだ」

 ワイシャツのボタンの合せが逆になり、表面がより柔らかい素材となる。

 ドブネズミ色のネクタイが、真っ赤なリボンとなった。

「んー相変わらずこれはインパクトあるなあ」

 どこからともなく出現したベストが上半身を覆い、立派に成熟した乳房をかたどった。

 手に持っていたカバンは、女子高生仕様のバッグとなっている。

 見た目がほとんど変わらなかったのは、革靴と靴下くらいのものだった。

「そ…そんな…これは…」

「事態が飲み込めて来たかしらん?仕上げ行くよ」

「や、やめて…それだけは…」

「ここまで来てやらんのはかえっておかしいでしょう…が!」

「あああっ!」

 おっさんだった美少女の素脚周辺から下腹部に掛けて一気に風が吹き込んだ!

 一度に素っ裸にひん剥かれてしまったのか!

 …そうではなかった。

 恐る恐る視線を降ろすおっさんだった美少女。

 胸の丘陵を越えたその先にあるものが視線に飛び込んで来た。

 それは可愛らしいチェック柄のプリーツミニスカートと、そこから生える健康的な生脚だった。

 それは通勤電車ではよく見慣れたものではあった。ただ、現在観ているそれは「主観視点」からのものであるというのが最大の違いだ。



(続く)


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