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水木粗鋼の場合 22


第四十七節


「やはりそう来ましたか…ならば」

 スマートホンをいじり出す女子高生。メガネがそのままなのは武林の趣味か。

 本人が意識しないように努めているのか分からないが、橋場はその発育の良すぎる乳房にどうしても目が釘付けになりそうになって慌ててそらしてしまう。

 普通に突っ立っているだけで下半身の肌色の占める面積が大きいこと。可愛らしさとエロさの同居する悪魔みたいな「制服」だ。

「般若心経か?」

「ええ」

「えー!もお戻っちゃうの~!」

 水木がぶーたれている。見た目と肉体が完全に女子高生だから許されるが、これがさっきのデブだったら殺意が抑えられていたか自信が無い。

「僕は解除条件で本当に戻れるのかの実験を済ませるまでは安心できないんでね」


 調査から発見、読み上げまで数分というところだった。

 晴れてそこには元のブレザーの男子高校生が立っていたのだった。



第四十八節


「じゃあ、そういうことで」

 溌剌とした表情の女子高生、水木以外の男どもはへろへろになっている。

 あの後、全部水木のおごりってことで残された三人組は、水木の見事そのものの女声パートのカラオケ三昧を聴かされる羽目になったのだ。

 澄み切った美しい声での熱唱は、よほど練習していたのであろう、既に金を取れるレベルだった。

 それはいいんだが、流石に色んなことがありすぎて疲れた。


「メアドは斎賀さんに教えておきましたんで」

「…お前、本当にその恰好で帰るつもりか?」

 橋場が一応心配する。

「あれ?心配してくれてるんだ」

「お前じゃなくてお前の親とか家族の心配だよ」

「あーそういうことかー」

「もしかして一人暮らしなんですか?男子学生寮ってことは無いですよね?」

「普通に都内の一戸建てで実家暮らしですが?」

「…息子が女子高生になって帰って来たら親は驚くだろうが」

 驚くどころではあるまい。

「いえ?何度も見つかってますけど問題ないですよ」

「何度も見つかってるってお前…」

「まさかあの息子と同一人物だなんて思われませんから大丈夫ですって!一応恋人か何かだと思われてると思います」

「差支えなければ教えてほしいんですが…お付き合いしている人は?」

「いませーん!自分の身体以外は魔法使いでーす」

 頭を抱える橋場。

「とにかく今日は有難うございました!一日に三着もコレクション増えたなんて最高です!」

「はあ…まあ頑張れ」

 そうとしか言えない。

「…」

 武林は何も言わない。

「ということでそれじゃ!」



(続く)


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