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水木粗鋼の場合 18


第三十九節


「すまん。良く分からんのだが」

「バトルが終わった後も変身が継続するのは例外扱いなので、バトル継続状態でいうと、バトルはしていません。ですから、次のバトルが始まれば、そのバトルに最適な状態になります。結果として前バトルの残り香みたいな変身状態は『継続できなくなる』訳です」

「…まあ、理屈としては分かるんだけど、どうしてそんな七面倒臭いことを態々(わざわざ)解説するんだ?気合で戻っちゃうってんなら気合で戻しとけばいいだろうが」

「基本的にはそうなんですが、実は気力が足らずに戻れない時もあります。それに、やっぱり何度も変身してると、戻りにくくなる現象は起こりやすくなるみたいなんですよ」

「それ、誰かに確かめたのか?」

「ボクが出会って話せた人にはそういう人もいました」

「どうやら世の中には結構な数のメタモルファイターが(うごめ)いてるらしいな…」

「何しろ余りにも着慣れちゃって、今じゃスカート履いてても意識しないと気が付かないんだとか」

「普通に女じゃねえか」

(むし)ろ女性以上に女性ですね。社会人の女性にはプライベートで一枚のスカートも持ってない人もいますよ」

「やっぱりいるよな」

「女性にとってもスカートはスカートであって、男にとってのズボンとイコールって訳じゃありません。だから「スカート嫌いの女性」なんて幾らでもいますよ」

「ああ、なるほどね」

「マニアが喜びそうな話だと、別に性的にはごく普通なんだけどスカートが嫌で仕方がなくて学校の制服を着るのが屈辱だった女子生徒なんてエピソードもあります」

「…何のマニアなんだかサッパリわからん」

「とにかく、こういう風になっちゃった人であっても、協力者に『合意の上の引き分け』試合を始めてすぐに終わらせてもらえば、形式上変身が解けて元に戻れる訳です」



第四十節


「しかしそれって結構な末期症状だよな?いちいちそんなことをしないと元に戻れない状況でのメタモルファイトなんて危険極まりないから引退を進めるぜ」

「確かにおっしゃる通り。ボクもそうなったらこの趣味は封印すると思います」

「そうなのか?」

「図々しい話で恐縮なんですけど、ボクは将来に渡って女の子になりたい訳じゃないんですよ。自由になったり戻ったり出来る状態でいることに優越感を感じる方だから。(むし)ろリアルに女の子になっちゃったら面倒なことの方が多そうじゃないですか」

「…さいてーだな」

「言われても仕方が無いですね。でも、ボクは男とあれこれなんて無理です。まあそれはともかく、これまでの話で二つの前提条件が出てきました。よろしいですか?」

「何だっけ?」

「試合の『終了条件』を満たせば自動的に試合は終わり、変身も解けます。ただ稀に試合が終わっても変身状態が継続してしまう人もいる…ここまでいいですか?」

「ああ」

「試合が終わっているのに変身状態が継続している場合、多くの場合は変身状態は気合で解消出来ます。それでも戻らない場合、「次の試合を始める」ことで強引に形式上変身を解消することが出来ます」

「分かった。それで?」

「これらは全て「メタモルファイトは掛け持ち出来ない」という制限を利用したものです。この法則を厳密に適用すると、『メタモルファイターは同時に二人以上のメタモルファイターを変身させることは出来ない』ということになるでしょ?」

「…?一応そうなるが、でもそれって「一対二」とか「二対二」での試合形式をお互いに了承していればいいんじゃないのか?」

「こればかりは厳密な実験を繰り返した訳ではない上に、この能力は例外だらけなので分かり難いんですが、一対多で合意した場合の想定ではありません。あくまで「一対一」の試合を複数行う、ということが可能かどうかという話です」

「やっと頭の回転の鈍い俺にも分かって来たぞ」

 橋場が言う。



(続く)


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