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水木粗鋼の場合 15


第三十三節


「お互いがお互いに勝敗について合意するならどんな状態でも試合は終わります」

「ん?つまりどういうことだ?」

「実際にはありえないんですが、ボロボロに負けている場合に負けている側が『自分の勝ちってことにしてくれ』と申し出て、勝っている側が仮に同意してしまうと『合意の上の勝敗付け』が成立します」

「なるほど。分かってきました。本来なら『精神屈服』という『強制条件』でしか決着しないのに、試合をするプレイヤー同士が結託してしまえばどのタイミングで勝つのも負けるのも自由自在と言う訳ですね」

「ええ。メタモル能力は本来自衛のための能力なので、メタモルファイトは『お互いの合意がある』ことが能力のリミット解除の条件だったんですが、それを逆手にとって『お互いの合意』を道具としてメタモル能力を使いこなそうってことです」

「ちょっと待った」

 橋場が割り込んだ。

「合意の上で、『無効』と『勝利・敗北』を確定出来ると言ったよな?」

「ええ。言いました」

「なら『合意の上での引き分け』は可能か?」

 空気が止まった。

「流石ですね。可能です。英語ですとインテンショナル・ドローと言いますけど、『合意の上での引き分け』は制度としてありです」

「それは『無効』と何か違うのか?」

 これは武林。

「試合が成立したかしないかは重要な要素ですよ。幾ら無効試合を積み重ねてもキャリアにはなりませんから」

 斎賀が引き継いだ。

「とりあえずここまで説明すれば十分でしょ。斎賀さん」

 ブレザー美少女が隣のジャージ美少女に向き直った。

「この制服も名残惜しいですけど、存分に楽しみましたのでこれでいいです。いいですか?」

「いいですよ。スク水着せられるとは思ってませんでしたが」

「なら引き分け成立で」

「はい」

 言うと同時だった。

 ぼうん!と煙が舞い上がった訳ではないが、一瞬にして二人は元通りの姿になったのだった。



第三十四節


 茫然としてそれを見ている武林。理解が追いつかないのか。

「…」

 あちこち撫で回している斎賀。

 ジャージの下に服が出現してしまったらしい。

「…スク水になった服の上からジャージを着たせいですね。能力によって変わった訳じゃないジャージがそのまま残ったのでこんなことに」

 と言いつつジャージを脱いでいる。

「ですね」

 サイズが倍ほどになった水木がそこにはいた。先ほどの『妖精』と比べるとまるで『妖怪』だ。

「じゃあ、はしばさん。約束通りお願いしていいですか?」

「…さっきまでの『合意の上での勝敗、引き分け』のやり方がこっちへの報酬ってことだったよな?」

「ええそうです」

「ならこれからこっちが何かしてやるんだから更に教えて貰いたいんだがいいか?」

「橋場さん!それは言い過ぎですよ!」

 にっこり笑う水木。無駄に肉の多いその肉体は不気味というに十分だったが、先ほどの美少女の面影が透けているのもまた事実だった。

「もちろんそのつもりです。ただ、そうであるなら教えたやり方をボクに掛けて欲しいんですけどいいですか?」

「自分が実験台になるってか?」

「まあ、ちょっと特殊な裏ワザってところです」



(続く)


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