水木粗鋼の場合 11
第二十五節
橋場と武林はドン引きしていた。
「これは…」
「はい!出来上がりです!」
「…」
美少女となって渋い表情の斎賀。
「で?どうよ」
「はあ…」
「じゃっじゃじゃーん!これぞ人類の英知!旧スクール水着でーす!」
その言葉通りだった。
恐らく年齢設定としては、現在の高校生よりも若干低い程度。中学生と高校生の中間くらいにさせられた斎賀は、ブルーのワンピース水着たる「スクール水着」姿にされていた。胸に「さいが」とネームが縫い取られており、マジックで書いたみたいな名前まで入っているというディティールの懲り方である。
「…そういう能力だったんですね?」
「そーおなんです。変身した後もそのまま街中歩けそうな女子高生の制服の能力を持ってる皆さんが羨ましくて…ボクの能力は交換条件持ちかけにくいんですよ…」
と肩を落とすブレザー女子高生。
「なんつーマニアックさだ」
「ド変態め…」
漢二人組は、さっきからカラオケボックス内に流れる濃厚な女っぽさの雰囲気の洪水に吐きそうだった。
女に対してある種の爽やかさを感じている内はいいが、生々しさみたいなものを感じ始めると途端に嫌悪感の方が勝ってくるから不思議だ。
「えーとですね。名誉の為に申し上げますが」
第二十六節
「いわゆるスクール水着というものはですね、ハイレグの切れ込みもそれほど深くありませんし、ビキニタイプに比べても露出度は非常に低いし、体型も強調しない優れたものなんですよ!「スクール水着」って言うとアブない!なんてのは一部のフェチの方々が言いだしたものであって、「ブルセラ」なんてものが流行する前は『野暮ったくてダサい女物』の象徴だったんです!そこは忘れないで欲しいですね」
「あーはいはい」
また講釈が始まったので適当に流す。
「じゃあ、写真いいですか?」
「アキラ、頼むわ」
「はぁ!?何でオレが!」
「オレはさっき撮ったんだよ!いいからやれって!」
嫌がる武林を説得する形で、カラオケボックスの中に出現した女子高生ふたりのホモソーシャル的な写真を撮りまくった。
水木が取り出してきた「着替え」とは女子のジャージだった。
なるほどこれなら水着の上に羽織るのも簡単だ。
交換条件が成立しても余りにも外出向けでない能力であるため、常にアイロンの効いたジャージを着替え提供の為に持ち歩いているんだそうだ。
(続く)