水木粗鋼の場合 10
第二十三節
「情報ったってどんな情報だよ。一応一般的な法則は知ってるつもりだが」
「ふふん、皆さんはどうせガチ対戦ばかりしてきたんでしょ?だからメタモル・ファイトがどういう条件で終息するのかを突き詰めたことって無いんじゃないですか?」
「ここは聴きましょうよ。こちらから提供するサービスなんてタダみたいなもんなんだから」
「サービスって何だよ?」
「だから一緒に写真に納まってあげたりですよ」
「…」
すぐに答えが出せない橋場。
「じゃあ、まずカメラマンお願いします。ボクと斎賀さんで撮りますから」
「え?そうなの?」
「だってこの制服って、斎賀さんの学校のでしょ?これで男女生徒お揃いになるじゃないですか」
「まあ…そうだけど」
「何だよお前は。自分に被害が及ぶと途端に動揺しやがって」
橋場が呆れて言った。
「しかしその…これがヘンな証拠として使われたりしたら」
にやりとする橋場。
「ああ?もしかして将来彼女が出来たりした時に、別の女と手ぇ繋いで仲良くカラオケボックスの写真見られたら困るってか?」
「…まあ…」
「こいつ男だからって言っとけばいいじゃねえか」
「通じませんよこんな可愛い子捕まえて」
水木が小さく「きゃっ!」と言ってもじもじしている。
物凄く可愛いんだが、中身とのギャップを考えると冷や汗を背中が流れ落ちる。こいつはいつもこういう場合には女の子としてこういうリアクションを取ろうとか考えて生きているんだろうか?
「それに『男だ』って言い訳が仮に通っちゃったらそれはそれで問題ですよ」
「…ある意味そっちの方が深刻かもしれんな」
三人とも同意見だった。
第二十四節
「大丈夫です!決して外には漏らしません!こういう写真はボクが自分で愛でるのが目的なんですから!」
何というか言いにくいことを自信満々に言いやがる。子猫みたいに可愛らしいのが余計にムカつく。
「わーった!わーったよ!写真の腕前は期待すんなよ」
水木はノリノリで斎賀の腕にしがみついたり、身体を預けたりしまくった。完全に彼女でございという雰囲気である。
結構な枚数を撮ってデジカメを渡して確認してもらう。
「いいですね!有難うございます」
「一曲も歌ってないのに充実したカラオケになりましたね」
「駄目駄目!まだ約束は終わってませんよ!」
「…何がです?」
「こちらの能力もお返しにするって約束したでしょ?」
近い距離で目を見開いた女子高生が迫る。
「そ…うでしたね。あはは…」
「男女の写真は目一杯撮れたからここから女の子同士の写真を…」
橋場は「ふっ!」と吐き捨てる様にため息をついた。
何なんだこの変態どもは。
同列に扱われた斎賀が気の毒だが、提案に最初に乗ったのは斎賀で間違いない。
「…差支えなれば、水木さんの能力を訊いても?」
「希望しないなら教えるし、サンプル写真もあるからお見せしますけど、折角体験するんだからサプライズの方がいいんじゃないですかぁ?」
「そ…うですね」
「状況的にも十分だし、いざという時の為に着替えも持ってきてますから」
「着替え!?一体どんな格好なんです?」
「論より証拠。いいですか?」
少し考えている斎賀。
「…約束でしたからね。お願いします」
(続く)