プロローグ 01
プロローグ
「おっちゃん…大人しく金を出せば痛めつけないで済ませてやるぜ」
ガムをくちゃくちゃと噛んでいる少年。
右手には鉄パイプを持って左の手の平にぺしぺしと当てている。
「何だよこいつ?男のコスプレイヤーか?」
その隣にウンコすわりをしている少年が毒つく。
ため息をつく男性。
「オタク狩り…ですか?」
すらりと背の高い男性だった。年齢は三十前後というところか。
口ひげを蓄え、紳士的なたたずまいである。
何より、英国調のスーツが印象的だ。
「だったら何だってんだよ!?」
三人目が背後から声を掛けてきた。
「おめえらの金はあれだろ?どうせアニメだのフィギアだのに使っちまうんだろうが?」
「俺たちがもっと有効活用してやんよ…出せ」
メガネを中指でくいっと上げる紳士。
「…困りましたね。『オタク』の皆さんは私たちの大切なお客様です。あなた方にいたぶられるためにこの街に来ている訳ではありません」
「いいから出せやゴルゥア!」
周囲を見回す紳士。
「…常習犯でいらっしゃる様だ…。未来の見えぬ根無し草でいらっしゃる…ならば手加減はいりませんね」
「やっちまえ!」
不良たちは一斉に殴り掛かった。
(続く)