eight 目覚めと来客
うーん、とりあえず読んでください
「………………?」
俺は重たい瞼を持ち上げ、暗い意識の底から思考を取り戻す。
どうやら寝ていたようだ……
仰向けに横たわっている背中に感じるふわふわした感触からして、ベッドか何かに寝かされているんだろう。
………どこだ…ここ……?
仰向けに寝ている俺の目に映る天井は、見慣れた我が家の天井でも、ましてや去年の春、最後に見たときのおぼろげに記憶に残っている春香の部屋の天井でもなかった。
無機質でひんやりとした空気の漂うコンクリートの天井、周りを見わたしてもパッと目につくのは壁一面に張り巡らされた写真とその隙間に見えるコンクリートの壁
俺が知らない場所であるのは間違いない、だが……
「なんで俺の写真が……。」
壁に張り巡らされている写真をよく見ると、どれもこれもすべて俺がメインでとられている写真ばかりだ、中には小学校の運動会の写真から、撮られている俺ですらいつ撮られたのか分からない寝顔写真なんかまである。
正直言って少し不気味だ。
それよりも、確か俺は春香の家で何故か急に眠たくなって、それから……
「そうだ………、春香は……。」
俺は一度思考を切り替えやっとのことで春香の存在を思い出す。
「ぅっ!!……、なんだ!?足が!……」
だが、思考の途中で、足が強烈な締め付けと痛みを伴っているのに気付き、体を起こして自分の足を見る
「な、縄!?」
自分の足首を見ると、そこに食い込んで足を拘束している縄のロープが目に入り、疑問と驚愕の入り混じった声を上げてしまう。
なんでこうなったんだ……。
どうしても自分がここに拘束されている理由が分からない、そもそもなんで俺はこうなるまで起きなかったんだ
疑問と驚愕が入り混じる頭の中で考えるのはこの状況の原因であろう春香がどこにいるか。
「とりあえず縄を切らないとな、ハサミは…ないよな……何か道具は………。」
とりあえず辺りを探ってみるも何も見つからない…、そもそもこの部屋の中には自分が寝ているベッドと、壁に張り巡らされた俺の写真以外何もない。
「ポケットになんか入ってなかったかな…。」
俺は拘束されていない両手で、制服の上着やズボンのポケットを探る、が
「何もねえ………。」
基本、ポケットには物を詰めない性格だからか、制服のポケットはどこも空だった。
「どうするかなー……。」
結局、打開策は見つからずそのまま時が過ぎてゆく。
「今日は来なかったなー…」
そう呟いて、私、早瀬亜美は薄く開いた唇から小さく吐息を漏らす。
店内の壁にかかっている時計は19:59の位置に針を進めている、閉店まであと一分。
それを見てまた小さく溜息をつく。
昨日の帰り際、春香ちゃんはどこか不機嫌っぽかったけど、京也君は別に普通だった、だから今日も誰かと一緒に来てくれるんじゃないか……と、そう思ってたんだけど
「そんなに都合良く毎日来てくれる訳ないよね……。」
まだ、初めて会った二日前よりかは仲良くなったと思うし、何かとお店のことも気にかけてくれている、様な気がしたからひょっとしたら今日も来てくれるんじゃないかなんて都合のいいこと考えてたんだけど…………。
「寂しいなー、京也君来てくれないかな~…………。」
店の立地が悪いのか、開店四日目にしていまだに寄って行ってくれた人は京也君と春香ちゃんだけ、今日にしても昼の二時から晩の八時までの間、ずっと一人でカウンターに立って紅茶やケーキの準備をしていた。
いくら自分が好きで始めたとはいえ、店の中でずっと一人でいるのはさすがに寂しい、昨日、一昨日は京也君が来てくれたしそこまででは無かったがいい加減人の温もりがほしくなる。
「京也君が来てくれたらな~………でも……いい加減自分でどうにかしなきゃいけないな、京也君だって毎日来てくれるわけじゃないし。」
そう自己完結して、閉店の作業をするためと厨房に向かおうとして、
カランコロン………。
来客を告げるベルの音が耳に届いた
カランコロン……
閉店間近のローズガーデンに現れた客とは一体!!
誰なんでしょうね~
次回をお楽しみに!