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two  幼馴染

「それじゃあ、SHRショートホームルーム終わるから一限の準備して待ってろよー。」


机に突っ伏してうとうとしていた俺の頭の覚醒をうながしたのは、朝のお休みタイムの終わりを告げる担任の声だ


「うーす。」「ういーす。」「はーい。」「分かりましたー」「先生っ!!早弁していいー?」


クラスメイトは各々テキトーに返事をして授業の準備に友人とのトーク、馬鹿な奴は早弁など、普段と同じようにに時間を費やしている。


その中に一人だけいつもと違う行動をとる奴がいる


「昨日はごめんね、あんなことでケンカしちゃって……」


そのいつもと違う行動をとる奴―――桜井春香サクライハルカはHRが終わると同時に俺に近づいてきて、顔の前で両手を合わせながら謝る


「別に謝る必要ないだろ、こっちが悪かったんだし」


春香は昨日俺がローズガーデンに行く前に、学校の教室であったケンカ…まあオレが春香の弁当を昼飯として勝手に食べたことで春香が怒って俺が逆切れした明らかに俺が悪いケンカなんだが、わざわざ謝りに来たらしい。


そんな春香に、俺は謝らないで良いことを伝えて、正方形の教室にある縦と横6×6の三十六席のうち自分的にかなりいいポジションにある席、廊下側最後尾にいちばん近い後ろ側のドアから教室を出ようとする。


「待って!どこ行くの?」


しかしドアの取っ手に手を掛け、半ば力をかけ始めようとしていたところへ背後から声がかかる―――春香だ。


「どこって……トイレだよ。」


俺は春香のどこに行くの?と言う質問に対し素直に答える


「なんで?もうすぐ授業始まるよ?」


「だから始まる前に行っておくんだろ!!」


春香が再度繰り返した質問に俺は、さっきから我慢している決壊寸前のダムに注意しながら少し語尾を荒くして叫ぶ。


すると春香は、ビクンッ!!と体を震わせて、上目遣いで「怒ってる?」と弱い声で恐る恐る呟くように言う


どうやら少し怖がらせてしまったようだ


「ゴメン……ちょっと怖かったよな。」


「ちょ、ちょっとびっくりしただけ…こ、怖くは無かったよ?」


俺の謝りに対し春香は懸命に何でもなかったということを伝えようとしてくれる


それにしても今日の春香はなんか変だ、さっきからなんか人の顔をチラチラ見ては目が合うたびに凄い速度で目をそらして、妙にこっちの反応をうかがっているような感じがする。


「それで?別に怒っては無いけど、なんで怒ってるかなんて聞くんだよ。」


「だって昨日一人で先に帰っちゃたし、今日だってなんか冷たいんだもん。」


春香は下を向いて、文句を言うように細々と呟く。


………そういうことか、春香がおかしい原因が分かった。


春香は昨日のケンカで、まだ俺が怒ってると思ってるんだな、だからずっとこっちの反応をうかがってるんだろう


「それは、ほら、昨日はケンカからそんなに時間が経ってなかったし、今はちょっとトイレに……」


「だったらもう怒ってないの?」


「怒ってない怒ってない、だからもうトイレに……。」


俺はもう自分が怒ってないことを春香に弁解しながら、ダムの水を抜きに行くためにドアを通ろうとして……


がしっ!!


またも春香が俺の手を掴んでいく手を阻む。


「じゃ、じゃあっ、今日は一緒に帰ってくれるよねっ!」


春香が心持ち明るくなった顔で言う、だがこれは厳しいお願いだ。


「ぇ……、いや、今日はちょっと約束があって…。」


「なんで!?だって昨日は一人で帰ったんでしょ、誰と約束したの?」


春香の顔が一転して明るいものから泣きそうなものに変わる。


「いや、それは………。」


俺は早瀬さんとの約束を春香に教えるかどうか言いよどむ


早瀬さんとの約束を春香に教えたら、百パーセントついてくると言ってきかなくなるだろうし、逆に教えなかったら春香は絶対に諦めない、自分が納得する理由を見つけるまで、それこそローズガーデンまでついてくるだろう。


「ねぇ、本当はまだ怒ってるの?ごめんなさいっ!ちゃんと謝るからっ……。」


春香の目からはすでに大粒の涙があふれ出している。



ここまで必死になられると、普通の人は粘着質な性格だと思うかも知れない、でも春香がこんな性格になったのには原因があって、それは春香の過去、特に俺と出会う前の時代に関係がある



実をいうと俺は生まれた時からこの町に住んでいるわけじゃない、8年前、ちょうど9歳で小学三年のときにこの町に引っ越してきたいわば余所者



その引っ越してきた日にたまたま最初に友達になったのが隣の家の春香だった


春香は最初なにも喋らなかった、こっちから話しかけても頷くだけ、ハッキリ言って暗く、気味が悪かった、でもしばらくしたら自分から喋るようになって笑うこともあった。


その日は春香と一日中遊んですごした……でも次の日初めてその地区の学校に行って俺は唖然とした


春香は、その暗い性格と、今はセミロングに変わっているがその時は腰辺りまである黒髪で前髪も完全に顔を覆い尽くしていたいわゆる貞子ヘアーという見た目で十何人かの男女生徒にいじめられていた。


だから、元々人見知りで内向的な性格が悪化して、髪も相手と目が合わないようわざわざ伸ばしていたんだろう、それにこれは今もだが身長が低いせいで相手をどうしても見上げてしまい、相手からも見下ろされるという威圧感も関係している。


そんな春香のいじめられっこライフは、ケンカの強かった俺が何人かの男子ハルカをいじめていたをノックアウトすることで終わったんだが……



多分その時からだろう、春香が粘着質っぽくなりだしたのは。



今までとは生活がガラリと変わり、春香の性格も少しずつではあるが明るくなりはじめ、思い切って髪も切った、身長はどうしようもなかったけどそれでも春香は日増しに明るく元気になっていった。


でもそれと同時に、いじめが無くなってからの春香の生活は確かに明るく楽しいものに変わったが、逆に今度は俺がいなくなったら元のいじめられる生活に戻るんじゃないかと言う不安で、今じゃ休み時間や登下校とかのけっこうの時間を俺の傍で過ごしているという粘着ぶりだ。


まあ、こうなった原因の多くは自分にあるからあまり文句は言えないが、できれば早く自立してほしい。


「分かった分かった、ちゃんと話すからもう泣くな、なっ?」


とりあえずこの教室と言うギャラリーがいる空間でこれ以上悲劇のヒロインっぽいことを続けるわけにはいかないから、そろそろなだめないとな


…………コクッ……………


春香は下を向いて頷きながら目元を何故か俺の服の袖で拭っている。


結局、迷った挙句選んだのは春香をなだめながら約束のことを話すという逃げの一手だった。





キーンコーンカーンコーン………。



「あ、トイレ行ってねぇ」





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良くなかった方でも感想よろしくお願いします。

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