one 出会い
「いらっしゃいませ」
店の中に入ると同時に、目の前に見えるカウンターから女性の声がかかる
女性にしては少し低めだが、愛らしさのある少女のような声、その声の主は俺のほうを向き自分の前にあるカウンター席を指差しこちらへどうぞと笑顔でジェスチャーしてくる、俺はそれに従い席に着く。
「メニューをどうぞ。」
カウンターの女性は俺に向けてメニューを差し出してくる。
どうやら、ほかに二、三個だけあるテーブル席にはメニューが置いてあるようだがカウンターの前の席にはメニューを手渡しして見てもらう仕組みらしい。
「ありがとうございます。」
俺は早瀬亜美――――名札に書いてあった――――さんに礼を言ってメニューを開く。
「へぇ~、メニュー少ないんですね。」
メニューを開いてみたら飲み物が三種類とケーキが四種類で七種類しか無かった、いやケーキをひとくくりにして考えるとたったの四種類だ
「実は、昨日開店したばかりで、これから徐々に増やそうとは思ってるんですけど…」「昨日できたばっかりなんですか!?」
客の少なさ、と言うか誰もいないことからまだ開店したばっかりじゃないかな?とは思っていたが、まさか昨日とは思っていなかった
「お客も、あなたが最初のお客さんなんです。」
少し恥ずかしかったのか早瀬さんの顔がほんのりと赤くなっている
「じゃあ俺が最初の客で、これが最初のオーダーってことになるんですね……、何かオススメとかはあるんですか?」
やっぱり、最初の客なんだからできるだけいい感想とかを言ったほうがいいと思いオススメを聞いてみる
「お勧めですか……、メニューがたったの七種類しか無いのでオススメっていうほどじゃないんですけど、それだったらチーズケーキとローズティーが私は好きですね。」
早瀬さんはこちらに向けてはにかんでその二つを勧める、多分この中で一番得意なんだろう、早瀬さんしか店員がいないところを見た感じ恐らく調理も担当するんだろうし。
それにチーズケーキとローズティーが好きなのも本当だろうなと思うし、チーズケーキは俺も好きだ。
「じゃあその二つをお願いします。」
「は、はいっ、少々お待ちくださいねっ!」
早瀬さんは緊張したのか少し噛んだようだ、こっちに背を向けてチーズケーキとローズティー、二つの準備をしながら「やっちゃった……。」と呟いている。
それからしばらくはヒマだった、チーズケーキは昨日の晩に作ったものを冷蔵保存してたんだろう、すぐにカウンターに出でてきた。
だが、それがこだわりなのか、もう一つのローズティ―は注文を受けてから準備するため、少し時間がかかった。
その間俺はとりあえず時間つぶしに店の中を見まわす。
店内は赤色を基本としたカラーのアンティークで配置されている、壁紙は赤地に濃いピンクのストライプで、テーブル席の机の上やカウンター、窓などに四、五本ずつバラの花が花瓶に挿して置いてあった、おそらくローズガーデンっていう店名はこの内装からイメージして付けたんじゃないかと思う。
そんなことを考えながら今度は早瀬さんのほうに目を向ける
正直言って綺麗な人だと思う。
背中の中ほどまである黒髪にどこか幼さが残る顔、でも妖艶で見るものを引き付けて魅了する眼、長いまつげに、厚くぷるんとしたピンク色の唇、高めの鼻にシャープな顎のライン、全てが芸術的と言っていいほどに均衡がとれた綺麗な顔をしている。
体型もスレンダーではあるものの、ちゃんと女性特有の膨らみやくびれも持っている。身長は俺が大体173㎝で俺よりもだいぶ小さいから160㎝ぐらいじゃないだろうか、女性としては標準ぐらいの身長かな?ガリガリでもブヨブヨでもない理想的な体。
世の女性が見たら一斉に羨ましがるだろう、それぐらい完璧な容姿をしている。
でも一つ残念な点を挙げればしゃべり方がちょっと子供っぽいことかな?
そんな批評を勝手に付けながら待っていると、「できましたー」とローズティーとチーズケーキをカウンターに乗せこちらにさし出す。
「すいません遅くなってしまって、こちらがチーズケーキとローズティーになります。」
早瀬さんは営業スマイルを決めながら丁寧に話す、おそらくこれが営業モードなんだろう。
「おいしそうですね。」
目の前に出てきたものに素直に感想を話す。
チーズケーキは綺麗にカットされていて、ケーキの上にイチゴか何かのソースがかかってて美味そうだし、ローズティーは鮮やかな赤茶色をして優雅な香りを放っている。
「ありがとうございます。初めてのお客さんだから張り切ってみたんです、だからローズティーも上手に淹れられていると思います」
そういって早瀬さんは俺の隣の席に座った。
「じゃあ、いただきます。」
俺が目の前のケーキとローズティーを食べる風景を早瀬さんは静かに見ている、どうやら感想を早く聞きたいみたいだ。
食べ終わって感じた味の感想は美味い!!その一言だった。
だからそれを素直に伝えて早瀬さんから帰ってきたのは安堵のため息と笑顔だった。
そのあとはいろいろと雑談をして時間が風のように過ぎて行った。
そして閉店時間が来て店を出る時に、明日もここに来ることを約束して俺と早瀬さんは互いに反対に向かって帰宅の道を歩いた。




