表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/4

あとがき


■あとがき


 まず最初に申し上げます。

 成熟し、真っ当な判断力を有し、自らに責任を負える大人となったあなたは、このあとがきは、読まないほうがよろしい。

 ここで引き返してください。

 作者からの老婆心です。


 ……


 ……


 ……


 ……


 ……


 この物語は、もちろん、アサギという、二百年以上を生きる妖怪のような少女を描いた物語です。


 しかし、そのモチーフは、人魚姫でした。

 何かと引き換えに、一時の恋を得る。

 では、人魚姫は、なぜ声を失わなければならなかったのか。

 なぜなら、声は、届いてしまうからです。

 そう、その、想いが。

 届いた瞬間、それはひそやかで一途な恋ではなく、大人の駆け引きになります。

 だから、本当の恋をするために、声を失わなければなりませんでした。


 同じように、膨大な経験で合理的な判断が可能な、アサギは――あるいは、大人であるあなたは――本当の恋はできません。

 説明不可能な衝動に身をゆだねることができません。

 湧きおこるような情熱に身を焼かれることもできません。

 海の底に沈む人魚は、老いを得て衝動も情熱も失った、あなたです。


 人魚姫は、王子の幸福のために、泡となって消えました。

 アサギの情熱は、初恋の人の幸福のために、泡となって消えました。

 ともに、『隣国の姫君』あるいは『リョウコ』という、記号のような存在に、大切なものを奪われて。


 あなたから情熱を奪ったものは、もはや記号でしかありません。

 抗い戦う対象でさえありません。

 あなたが、『経験を積み上げながら生きてきたこと』、そのものだからです。

 そう、あなたは、エンディング後の、人魚姫。

 ただ『生きる』という記号に、何もかもを奪われた、アサギ。


 さて最後に。

 あなたは、リョウコという『隣国の姫君』に、何を見たでしょうか。


 もう一度だけ、引き返す余地を与えます。見ないで去ってもよいです。


 ……


 ……


 ……


 ……


 ……


 もし、リョウコが、その前世を、誰にも――ハルキにさえ――秘密にしている、カノコだったら?


 ……さあ、もう一度、ゲートポータルへ戻って。三つ目のゲートが、あなたを待っています。物語の意味が反転する恐怖を、どうぞお楽しみください。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ