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風任せで人任せな俺がここにいる理由  作者: 明月 文


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002 見たくはなかった二度目の魔法陣

ちょこまか直しながら進む、かも知れません。

 と、いう事で、帰って来る気は全くなかったのにデカくて複雑な魔法陣の真ん中辺りに今、立ってる。細かい場所はよく分からんが、この状況は見た事がある。所謂、異世界召喚ってヤツだ。しかも2回目ってヤツだ。


 見慣れた、とまではいかない。過去に1回見ただけだ。

 そして今回、俺史的には2回目に見た魔法陣の中には俺を含め、立っているのは6人だ。


……前回に比べればかなり少ないな。


「よくぞ参られた、勇者達よ!」


 6人の内訳は制服3(男子2、女子1)、ジャージ1(女子)、私服1(男子)、スーツ1(男子)。勿論、スーツ1は俺だ。

 メンバーは別にどうでもいいが、これから起きる事を考えれば人数は重要だ。


 もっとも気にしても仕方がないという面もある。

 どうやってもこれ以上は増えない、かつ自分では増やせないのに気にしたって仕方がない。


 なので俺は注意の対象を反対側に向ける事にした。


 前回とほぼほぼ変わらむ呼びかけに俺は相手をしげしげと確認した。

 前回とは相手が違う。中心に立つ俺と同年代のゴージャスな恰好の比較的若い男には見覚えがない。まあ、でも、多分、王様だな。前回に比べるとだいぶ若いけど。


 ゴージャスガイの周囲も見た。

 バッと見、知ってそうな人間はいない。だが服装的には以前見たのと同じ様に見える。


「我々の世界は今、危機の瀕しておる!」


 突如、中央の王様(?)が吠えたが、ハイハイ、その件は前回も聞きました。


「勇者よ!その力で魔王を打ち倒し、我らを救って欲しい!」


 2回目は結構冷静に聞けるが、召喚も狙った人物、またはなんぞ基礎能力の高い人間を呼び出している感じもしないガバガバ召喚だし、説明も頼み方も実にザックリでアバウトだな。

 そもそもラノベとかの異世界召喚者は何かチートな能力持ちの事が多いし、それはそれで結構な事だが、やはり基本的な能力が高い人間である事に越したことはないと思う。具体的に言えば、同じ剣聖の能力を持つ異世界人を呼び出すなら、棒も握ったこともないその辺の中学生より警察学校の剣道師範の方がいいと思うし、魔法使いを召喚するなら俺みたいなFラン卒じゃなくて東大卒の方がより使えるだろう。けど前回もそうだったが、何か基礎能力が高い人間を選んで召喚している様子はない。


 ガバガバ召喚も理解出来んが、大体、こんな程度の説明で、魔王退治という異常に困難度の高い仕事を丸投げするとかありえん。


 だいたい仕事ってのは報酬の話が先だ。

 それもなしで、初っ端から「やれ!」って話なのは何様のつもりなんだ!?


…ハイハイ、王様ですね、ハイハイ。


 まあ、もっとも、会社の上の人(親会社出身)に言わせると、欧米辺りの交渉とかだと、相手はまずは到底飲めそうにない向こうの要求とかを一方的に捲し立てて、こちらが少しでも逡巡した様子を見せると机を叩いて「さっさと中国に帰れ!」と怒鳴るらしい。日本人がイギリス人、フランス人、ドイツ人の区別がつかないのと同様に、欧米人は人種的にも地理的にも日本人、中国人、韓国人の区別はつかない。区別がつくのは俺らがイエローだという事と、サルが人間より偉くないのと同じくイエローやブラックは自分達より下だ、という事だけだ。

 けど、こちらが向こうの無理筋要求にイエスと言った瞬間に恵比須顔で肩を叩いてハグして「旨いスシバーを知ってるんだ。今から(お前の奢りで)一緒に行こう!」とかってくるらしい。ちなみに日本人は欧州で中華系またはコリアン系経営のスシモドキ屋でカリロールとか食べても嬉しくない。韓国人なら逆に東洋人ならスシバーが嬉しいだろう、と見られてキズつくかも知れない。


 ま、要はこういう初手から無理難題がグローバルでは普通の交渉ってヤツなのかもしれんってことだ。ましてやここは異世界だ。グローバルを超えた超グローバル社会である。


 所謂グローバルスタンダートとかはともかく、王様(仮)の突然の叫びについてだが、無論、シカトしたままでもいいのだし、召喚とは聞こえがいいが要は超グローバルな誘拐または拉致によって我々を連れて来た挙句、詳細説明ゼロ、報酬の話もゼロで返答だけを求めるという彼らの常識のなさを小一時間、詰めたいところではある。

 シカトしたままはないにしても、ネット用語的に言えばもっとkwskと言ってもいい(そうは言ってもwktkはゼロだからkwskは使いどころが違うか…)場面だと思うし、つか先ずはいきなり連れて来られた我々にこのザックリな話でいきなり返答を求めるという彼らの常識のなさをやはり小一時間、詰めたいところでもある。


 だが、このまま曖昧な流れで、前回同様、いきなし試練の迷宮とかにブチ込まれるのも困る。

 今なら少なくとも俺1人でなら昔ほどには苦労しないとは思うが、そうは言っても1日や2日でどうにかなるものでもない。難易度はともかく、1時間程度はおろか1日や2日ではとても出れない魔物溢れる地下迷宮に閉じ込められて嬉しい人間はいないだろう。


 目立つのは嫌だったから迷ったが、周囲の連中はザっと見、いずれも俺より若く頼りになりそうにはない。

 一瞬は迷ったものの俺は結局、返答する事にした。


「申し訳ないが、お断りさせて戴きたい。」

「なにっ!」


 なにっ!じゃねえだろう。受ける奴いるのか?

 と、思ったが、前回は一緒に来たイケメン君がアッサリ受けたんだった。挙句、本人は死んでりゃ世話ない。


 今、2回目ってことで冷静に考えるとアイツ、マジでアホとしか言いようがなかったな。

 その場面を油絵に描いて額に入れて飾っておきたいぐらいだ。

 タイトルは「ただのバカ」…はちと酷過ぎるか。彼はイケメンにありがちなちょっと自然体なマウンティングがキツいだけで、気のいい陽キャで人間的にはそんなに悪いヤツではなかった、んじゃないかな、と思うし。

 ま、アレだな、「若気の至り」ぐらいかな。


「申し訳ないと思っているなら口の利き方があるだろう!」


 何様のつもりなんだよ!

…ああ、王様ですね(笑)。ハイハイ(2回目)


 しかも優秀な偉い人にありがちな本筋である魔王退治を断られている方じゃなく、申し訳ないという言葉尻(言葉頭?)と態度の悪さを責めてきている。

 どこの世界でも、偉い人の論破の方法は理屈ではなく、まずは話の無防備な横っ面を殴りつけるか、内容とは関係ない態度を責めて出足を止め、権力をたてに正面から圧をかけて、先ずはこちらから御免なさい、僕が間違ってましたと言わせるのがデフォのルートだ。

 援助を求めて、と言ってもその割には「援助しないとあなた方も大変な事になりますよ?」と援助して当然でしょうみたいな小生意気な態度で来た小国のトップに対し、大国の幹部がまず「大統領閣下とご面会の場はスーツで来るのが最低限の礼儀作法だ!スーツすら着て来ない君のその態度は非礼だとは思わないのか!」と怒鳴りつけたのも一緒だ。

 会社の会議なんかだと偉い人に説明グラフを見せれば、最初から嫌な目付きでねめつけた挙句、まずは「…色使いが非常に見難いね」と難癖をつけ、グラフ内の一番小さい「その他」の内容の詳細の説明を求め、「だいたい言葉遣いがなってないよね」と説明内容と無関係な部分だけを居丈高で責める。そうして相手が精神的に動揺している隙を突いて、説明とは無関係に自分の言い分だけを押し通す。

 もっとも、その場合なら役に立とうが立つまいが反論、あるいは代案があるだけマシで、通常はただコチラの言い分を押し潰しただけで終わりだ。却下するだけで指示も提案もなく、タイムリミットは迫っているのに結論は出さないだけだ。

 この行動は会社人事マネージメントレベルとかだと、業績目標をお互いに擦り合わせの末、上司と部下、双方納得の上での今期の目標設定と表現されることもある。


 心の中でボケツッコミを1人で2回もこなして、俺は冷笑した。


「私の国は礼儀作法を重んじる事で世界に知られている。たとえ申し訳ないと微塵も思わずとも相手を慮って、初めに申し訳ないと添えるのが通常の話し方に過ぎない。我が国では枕詞という通常一般の話し方だ。」

「むむ…」


 いきなり怒鳴りくれてきた相手(※王様)は、ちょっと混乱した風だった。


 そっかあ、この程度のヒネリでも話が通じないのかあ。


 会社でもそうだったけど、偉い人は何もトラブルのない偉い日々が続くと、部下から「サーイエッサー」以外の返事を聞くと、思考が止まっちゃうんだよなあ。


「こう言っては何だが、むしろ、全く申し訳なくとも何でもない場合に使われる言い回しだ。」


 近くに立っていた高校生らしい制服3は、俺の真面目くさったトドメにポカンとしていたが、学生服軍団より少し年上に見えるジャージの女の子はクスっと笑った。


「その様な話を聞いているのではない!」


 お?立て直したか?

 意外と早いな!


 いずれにせよ彼らがどのような話を聞いてようが俺とは関係ない。


 会議というものは、世間一般では皆で知恵を出し合うみたいな誤解が多いが、大概の場合、主催者が自分のシナリオで何事かを実行する、あるいは出席者に実行させる事を宣言する場に過ぎない。

 「3人集まれば文殊の知恵」という諺は複数人で相談すれば1人の時より良い案が出るかも、という意味とされるが、大概の会議の場合、最初から結論は決まっていて「皆様もご参加の会議で原案通りと決まりました。ご理解下さい。」と納得せい、という意味だ。


 要するに上では既に決めてしまっているご見解に後から文句を言わせないのが主目的だから、本来、議論をするなら少数の有識者だけ集めればいいところを、少しでも関係ありそうな多くの人間を集める。3人分のスペースを1人で占領している部長クラス以上を除けば、出席者はすし詰めで酸素が不足している会議室で開催前から既にグッタリと精神を削られ、発言する気にもならない。


 それでも勇気を奮ってか、あるいは空気を読めずに発言または質問でもすれば、内容が正しければ正しい程、上の人は不機嫌そうな顔になり、良くて「……じゃあその点は君が次回までに検討して来るように!」と予期せぬ重い宿題になってしまい、悪ければ「分からないなら黙ってろ!」と怒鳴られて終わりだ。しかもどんなに筋悪な話であっても、結局、本筋は変更されない。

 怒鳴られた方は上の方のご機嫌を損ねてワンペナなのは分かるので、次の会議以降はどんなに有益な情報、見解を持っていても発言しなくなる。もっとも会社評価はスリーアウトチェンジではなくワンアウトおしまいDeathだから上司も彼の意見は求めていない。


 ちなみにこの結論が最初から決まっている類の会議手法には賛否両論あった。

 最初から結論が決まっている、異論は一切許さないなら会議とかしなきゃいい、あるいは説明会と銘打て!という多数のリーマン経験者の意見は否定的な方だ。但し、これは主に立場の弱い方からの見解なので赤提灯の飲み屋なんかでは多数派だが素面の昼間は大きな声にはならない。

 経営学者やコンサルタントなど自分の意見を常に押し付けることが可能なお立場の方々がTV、ネット、書籍で大声で主張する肯定的見解は、逆に、結論の見えてない会議は無駄に長く議論が続くだけで収拾がつかず意味がない、主催者たる者は予め結論と異論反論を排除できる理屈を持って会議に臨むべし、というものだった。

 彼らの立場からすれば、彼ら的に正しい、ややもすると正義とすら言い切る話を俺らを巻き込んで俺らにやらせる為に会議と称する命令伝達会を開いている訳だから、当然、最初から結論は決まっている。以上、俺の命令に従って動け!だ。


 この場合も、一応相手は俺らに魔王退治を依頼し、俺らの了解をとっている様な口振りだが、これは小学校の先生が遠足でヒステリックに「聞いてない人は置いて行きますよ!いいですね!」と壇上で叫んでいるのと同じで「よくない!」という答えはハナから想定外だし、質問でもすればこれ幸いと魔王退治は引き受けた事にされた挙句、結局は俺らが解決策を考えるハメになるのは目に見えてる。


 話の流れ的に口が滑って多少余計な事は言ったかも知れないが、取り敢えずお断りだけは入れたので、後は俺はシカトしていると、今度は制服男子で一番、ガタイのよさそうなのがダルそうに口を開いた。


「なに?その態度?さっきの話だと俺らにマオー退治とかって頼み事あんじゃねえの?それが、いきなし怒鳴りくれるとか、マジ一気にやる気なくなるわ~」


 口調こそダルそうだが、ヤンキー臭い、今風に言うとちょっとヤンチャな感じで彼が言うと、周囲の数人はその態度にビビった感じは全くなかったがハッとした顔をした。そして更に数人がバツの悪そうな顔をした。彼らとしてもいきなり無理を言ってるのを今更ながらに理解したのだ。

 考えてみれば当たり前かも知れないが、彼らも偉い人的な自分本位かつ我田引水な、これも今風に言えばリーダーシップのある仕事の進め方が基本なだけで、別に個人として見れば悪い奴らばかりじゃないんだろうなあ。


「勇者殿達も本日は混乱していると思われますし、今日のところはこの辺りで…」


 周囲のうち、最も王様近くに立っていた壮年のオッサンが比較的若い感じの王様に耳打ちする様に言った。


 思いっきり聞こえてますがな。

 そういうのは聞こえない様に言って欲しいなあ。


 対する王様は彼の方をチラリと見て、また「ぬぬぬ…」と唸ったが、ふっと息を1つ吐いた。

 その顔付から鑑みるに、漸く通常の大人並に落ち着いたらしい。自分の思っている事をモロに顔に出さないのはビジネスの基本なんだけどねえ。まあ、彼からすれば我々に何事か言い渡すのはビジネスではなく、単なる命令なのか。


 何様のつもりなんだよ(笑)!

 ああ、王様ですね。ハイハイ(3回目)


「ふむ。致し方あるまい。」


 すかさず王様を落ち着かせた壮年がパンパンと手を叩いた。

 侍従と思しき数人が俺らの後辺りに跪く。


「勇者の方々。いきなり呼び出されて混乱されておるのは我々も承知している。」


 いや、承知してなかっただろう、今の今まで。


 俺の心の中のツッコミ(4度目)は当然、シカトされて王様を落ち着かせた壮年は取り繕った笑顔で続けた。


「まずは少し休まれて、後程、我々の話に再度耳を傾けてはくれまいか?」


 壮年、つか王様の隣に立っていたから多分、宰相だか摂政だかの言葉に俺らは顔を見合わせ頷いた。

 俺にしても現状では何も分からず、これ以上の対応はとれないから仕方がない。


 王様も我々から原料の値上げ要請の話を聞いた本社の購買本部長の様な上辺だけの穏やかな顔で頷いた。

 それを確認して宰相(仮)は俺らの背後に視線を飛ばして言った。


「勇者殿を休憩室へご案内せよ!」

「「「ハハッ!」」」


 まあ、現段階では何ともしようがないから連れていかれるしかないわけなんだが、最後まで俺らの意見は聞かれなかったなあ。




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