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風任せで人任せな俺がここにいる理由  作者: 明月 文


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024 初回の蛇

 思い起こせば最初の蛇系統の退治はタイス、今のサウザンリーフだった。

 そして、この世界素人かつ全く世慣れてない若造3人組の俺らに他の選択肢など無かったとも言える状況だったわけだが、今にして思えばこれが旅のケチのつきはじめだった。


「我が領内を荒らしているヒュドラの退治に是非とも勇者様のお力添えを賜りたく!」


 50ぐらいの壮年のオヤジに目の前でスライディング土下座をキメられても、当時、10代後半から20代半ばだった俺らはただ困るだけだった。


「いや…俺ら、なる早で魔王退治って任務を王様…えっと…国王陛下から受けているわけで…」


 マサさんがもごもご言ったが、相手は全然聞いている風がない。

 大公は更にアタマを地面に擦り付けた。


「そこを曲げて!曲げて!曲げて!この通りお願いする!」


 困った俺らは首を1回だけ曲げて斜め後ろを見た。

 後ろの護衛の女騎士4人は、俺ら3人から微妙に目を逸らす。


おい(怒)!

護衛!


「魔王を倒しに旅立たれてしまえば、次にこの地に立ち寄って戴けるのは相当後になりましょう!ならば立ち寄られた今!今!今!お願い致しまする!」


 そもそも、魔王城がある、と言われている方角と180度とは言わないが90度は確実に違う方角の今のサウザンリーフ、当時のタイスに来たのは、前宰相のタイス公、つまり今、目の前で土下座する50代が旅立つ我々勇者組を是非、激励したいと呼んでいる、という話だったからだ。立ち寄ったわけじゃない。


 場所的に立ち寄る予定とか全く無かったわけで、最初にタイス行きの話を聞いた段階から俺らのリーダーであるシイちゃんは既に気乗りしない調子だった。

 偉くなる人は危険予知に優れる。どの仕事が楽で評価が上がる仕事で、どの仕事が地雷だから先輩、同僚、後輩にスルーパスしなきゃいけないかを感じとる能力が出世には必須なのだ。

 そういった意味で小さいながらも俺ら3人組のリーダーとして偉い人派閥の端くれにいた彼は、この段階で既に不穏な雰囲気を感じ取っていたのかも知れない。


「行く必要あんのか?」

「タイス公…前宰相閣下は各国にも影響力のある御方です。覚えが目出度くなれば行く先々の各国へよしなに計らって貰える可能性があります。」


 護衛隊の隊長格であるアイーシャが言うが、シイちゃんのみならず、一刻も早く魔王城で魔王をぶっ殺して帰りたい俺もマサさんも全くの気乗り薄だった。


「そんな調子で行く先々でご挨拶してたら、着くのが遅くなるんじゃねえの?」


 シイちゃんが言えば、マサさんも同意して言った。


「向きもまるで反対だしな。」

「マーサが言う通り方角は確かに反対ですが、馬車なら3日とかからない距離です。ここでタイス公に恩を売れるのは逆にチャンスです。アイーシャ隊長の言う通り、公は元宰相で各国にも顔が売れている方。ご挨拶だけでもしておけば、必ず旅の助けになります。」


 白魔導士のリリアも言い、俺ら3人はう~んと唸った。

 何処の世界でもコネが大切なのは高校生、大学生、ゲーマー崩れのフリーターという全く世慣れてない俺らでも分かる。偉い人の顔は立てた方がいいのも理解している。

 理解はしているが、分かっちゃいない。そもそも政治家とか権力者とかに知り合いもいないし、この世界の常識もないから、タイス公とかの顔を立てるのがどの程度利くのかは想像が出来ない。


「けどなあ…別に激励とかして貰わんでもいいんだしなあ…」


 リーダーのシイちゃんはそれでもブツブツ言っていた。言葉には出さないが俺らも同感ではあった。

 いいリーダーとは部下に共感出来るリーダーである。


「……っち!仕方ねえなあ。ちと回り道だと考えるっきゃねえか。」


 唸ったところで、この世界の常識などない俺らには護衛の連中の説得に抗する程の知識も経験もない。

 結局はシイちゃんもタイス公へ挨拶に逝く事に渋々同意した。


 いいリーダーとは部下に共感した上で、最後は部下に流される事無く判断を下せるリーダーである。

 部下に共感した上で決定する。面倒だがそのひと手間が部下の納得を生むのだ。大事なのはプロセスなのだ。

 アタマごなしに結論だけ命令するのは、宗教か独裁者でリーダーではない。あるいは更に上の上司の主観、つまりお気に入りだから間違って上に立ってしまったアホである。宗教指導者も独裁者も下が考える事を放棄した瞬間に生まれるが、俺らは休むに似たものであっても放棄はしてない。少なくともこの場にはアホをお気に入りだからという理由でリーダーに据える上司もいない。


 だが、いいリーダーが正しい判断を下せるとは限らない。

 リーダーだって間違う事はあるし、何よりいつでも選択肢そのものが無限にあるわけではないからだ。良い方と悪い方の2択であればいいけど、悪い方、もっと悪い方、玉砕の3択の場合だってある。悪い方しかなく、しかも行けば逃れようがないという意味でこの場合もそうだった。


 だが、招待を受けた段階では分からず、女性陣に押し切られる形で仕方なく来てしまった挙句、確かに歓待はされた。そして豪勢な食事会が終わると目の前で中年のオヤジのスライディング土下座に遭遇しているわけだ。


 食事会出席だけで恩が売れるという軽い話だったのに、いつの間にかヤバそうな魔物を退治するという超重い話になってしまっている。しかも空気から言ってお断りは困難だ。

 甘い話には落とし穴しかない、という標語にどっぷし首までハマってるのがその時の俺らだった。


「……そのヒュドラってのは…何だ…手強いのか?…つか、手強いんすか?」


 シイちゃんの問いに中年はガバッと顔を上げた。

 その瞬間、シイちゃんは「ヤベ!シマッタ!」という顔をした。あたかも引き受ける様な物言いになってしまったのに気が付いたのだ。が、もう遅い。


「いや!我々ではとても手に負えませぬ。しかし勇者様なら然したる相手ではないと思います!」


 全く説得力のない、よく聞けば何を言ってるのかもよく分からない意見に俺らは猶更困ってしまう。


 しかし、相手は引きそうにない。

 その雰囲気だけは分かった。


 こちらでは一番、身分の高い人間が周囲に人もいる前で土下座して頼み込んでいるのだ。


 結局、俺らのリーダーであるシイちゃんが溜息をついた。


「まあ…じゃあ…練習だと思って逝ってみる?」

「逝くの字の違いに突っ込んだ方がいいのか?」

「いや、何かのフラグもヤなんで止めといた方がいいすね。」


 壮年の顔がパッと輝いた。


「逝って下さるのですか!」


 俺らは顔を見合わせた。


「字の違いは最早フラグじゃないすか?」

「シイちゃんも公爵もわざとやってるとしか思えんな。」



「この湖に流れ込む川の奥地に滝があります。その滝の裏の洞窟の奥にヒュドラは棲んでます。」


 ヒュドラとかってキ〇グギドラの小型親戚が暴れてるって村に来てみると村長を中心に大勢の村人が出迎えてくれた。老婆に至っては「ありがたや、ありがたや」とか拝んでいる。

 護衛の4人組は地方に討伐とかに行ってると聞くので多少の経験はあるのかも知れないが、そんな立場になった事が無い俺ら日本組3人は、とにかく居心地の悪さしか感じないまま、村長宅に案内された。

 そして、挨拶もそこそこに村長からの説明を受けている。


「我々では全く手出しが出来ませぬ。申し訳ありませんが勇者殿に是非とも、是非とも…」


 一見すると人の好さそうな村長が顔をくしゃくしゃにしてアタマを下げ、村長宅で「とはいえ長旅でお疲れでしょう。軽く食事をされてから…」と言われ、食事を食べ始めた後は記憶が無くなっていた。



 気が付くと俺らは薄暗い洞窟の中に転がっていた。


 手足を動かそうとしても動かない。手は後ろ手になっているから分からないが、足を見ると縄でギンギンに縛られている。手も直接は見えないが、後ろ手に縛られてるっぽかった。


「タカト?」

「へい?」


 首を曲げると横にシイちゃんが寝ていた。やはり足は縛られていて手は後ろ手に回されている。


「んだ、こりゃ?」

「いや、俺に言われても…」


 シイちゃんの後ろで何かがモゾモゾ動く気配がした。マサさんである。


「縛りプレイも嫌いじゃないけど…俺は縛られるより縛る方がいいなあ。」

「……ゲームで縛りプレイって、意味が違くないすか?」

「確かに縛り方が亀甲とかじゃねえな、コレ。」

「いや、縛り方とかの話じゃないっすよ。つかエロゲ知識全開、今は止めときません?」

「エロゲじゃなくて、現実かも知れんぜ?」

「…!マジっすか!マジに亀甲とかやってたんすか!?」

「んなわけねえだろ。」

「ですよねえ。」


 その時、奥でジャリっと音がした。

 初めて聞く音だが分かる。大きくて何か危険なものが這うとても不快な音だ。

 

 その人間の本能に響く音に流石の俺らも軽口も叩けずビクッとして音のした方を見ると、暗闇の中に大きな蛇の姿が浮かび上がった。

 俺らが通常、デカいヘビと認識している動物園とかでみる南米産とかとは比べ物にならない大きさで、見ても一瞬、何だか分からなかった。しかも首が複数ある。


「ほう!今回の贄は力がありそうではないか!」

「…!!!!」


 見た目は巨大な多頭の蛇である。

 それが人間の言葉を発しているのは不思議な絵面だ。全く慣れない。口の動きと発する言葉が合ってない。海外映画の吹き替え版みたいな感じだ。

 しかも口がデカいからか臭い息がモロにかかる。よく考えてみれば蛇が歯磨くはずもないしな。


 俺らはヤツの大きさに圧倒され、不自然な絵面で発せられる言葉に驚き、口臭で息が詰まって声も出せずにいると、言葉を発したヤツと違う首がニヤあっと笑った。


「村の連中も知っておる。」

「「「……!」」」

「我は水を操る。キャツらが作物を得るのに必要な水は我が止めてしまえば得られぬ。だから彼らは定期的に我に贄を供する!」


 周囲の首が楽しげにウネウネと動いた。

 そして後ろの方の首が俺らを覗き込む様に前に出て来て言った。


「お前達は恒例の贄として我に供されたのだ!」


 村人のヤツら、ハナから俺らに討伐は期待してねえのかよ!


「随分親切に色々教えてくれんだな。」


 やはり俺らの中で最初に我に返った(かつ口臭に耐える耐性を身に付けた?)のはリーダーのシイちゃんだった。

 

 シイちゃんの言葉に最初に声を発した首が心なしか嬉しそうな(?)感じになった。


「大概の人間はここに連れてこられた段階で口も利けぬ。我を見た瞬間に失神する者もいる。だがお前達はそうでもない。たまにはその戯言に付き合うのも一興と思うてな。」


 シイちゃんが不機嫌そうに顔を顰めた。

 彼(?)の見解が不愉快だったのか、口臭が超不快だったのかは分からない。


「生贄は俺らみたいな他所者が連れて来られるわけだ。」

「なかなかに賢しいな。」


 シイちゃんの言葉に最初の首が目を細めて感心したように言った。


「お前の言う通り、多くはこの地に来た流れの冒険者や旅人達よ。だが時には得られず、村の若い娘が供されることもある。」


 何故だか首はウネウネと得意げに動いた。


「我はより強く、より賢く、若く健やかな贄を望む。その方が良き我の血肉となる気がするからだ。」


 今まで声を発さなかった手前右の首が満足そうに結論した。


 なんだ!気がするって程度の話か!


 TVの料理番組でチューリップの葉は実は栄養価が高いんですって話と一緒で根拠薄弱だな。

 冷静に考えればチューリップの葉がそんなに栄養価が高いなら昔から食べているはずだが、チューリップの葉の料理もサラダもない。けど料理業界とその意を受けたTV業界は時折その種のぶっとび無理筋な話題作りを試みる。そして騙される、と言うと言い過ぎかもだが、ノせられてしまう視聴者も多い。


 俺が下らない事を考えながら呆れていいると、ヒュドラは首をうねらせながら俺らをジロジロとねめつけて言った。


「お主らはなかなかに良さそうな贄だ!良き贄を用意した褒美として向こう3年。いや5年は村からの贄の取り立てを猶予してやろう。」


 なるほど!

 村人なり公爵なりがわざわざ手間暇かけて俺らをここへ寄こした理由は減税、いや免税狙いか!

 けど食材と同じ感想を言われても嬉しくない。それ以外の理由が分かってもやっぱり嬉しくない。


「なるほどね。」


 ここらで嫌気がさして来たのか、マサさんが納得した声を上げた。


「全ての生物は水を宿している…」

「ほう、卑小で醜悪な見た目と異なり、なかなかに詩的な表現ではないか!」


 マサさんの言葉にヒュドラが感心した様に、と言うよりは小馬鹿にした様な声を上げた。

 俺らは当然、黙ってる。


「…祖は万物の源なりせば、全ての生命の逃れられぬ定めなり…」

「……?」


 ヒュドラの話している首が器用に小首を傾げた。

 シイちゃんも俺も、マサさんの邪魔にならない様に、なるべくその集中を切らすような余計な音を出さない様に黙っているだけだ。


「源なりしものは気中に、己の中に、そして魔の宿しものにもあるものなれば…」

「…?…お主、何を言っている?」

「我、その動きを今ここに止めんとす。」

「…!!詠唱か!」


 マサさんがカッと目を見開いた。


「アブソリュートフリーズ!」


ガッチン!


 ヒュドラの全身が一瞬で凍りついた。

 詠唱に気付いた蛇の、その7つの首の1つが、マサさんの僅か2、3m程手前まで迫って来た所だったが、マサさんに齧り付く前に口を思いっきり開いた形で凍りついて止まった。

 

 それを冷静に見ながらシイちゃんが呟く。


「……結構、アブねかったんじゃね?」

「いやあ、唱えちまった後だけど、俺も間に合わねえかもって、ちっとビビった。」


 マサさんは真性魔法使いだ。詠唱して魔法を発動して敵を倒す。

 マサさんの魔法の面白い所は、基本、オリジナルな点だ。何でか知らんけどマサさんの本には魔法の種類とか仕組みっぽいものは書いてあるけど肝心の呪文がないらしい。だから彼の使う魔法の詠唱内容は全てマサさん自身が考えたものだ。

 試練の迷宮の最後の方にはゴブリンメイジみたいな会話可能、魔法も理解する連中もいたが、マサさんのオリジナルの魔法は当然通常の詠唱とは違う。これが地味に役に立った。何故ならマサさんが魔法を唱えても相手は咄嗟に魔法と判断出来ないらしく、発動に対応するのが一歩も二歩も遅れる例が多かったのだ。

 今回のヒュドラにしても最初は「詩的」とかって表現を褒めた程で最後の方まで詠唱とは気が付かなかった。


 しかもマサさんオリジナル魔法は通常の魔法に比べて威力が高い。小魔法程度の詠唱で中魔法の威力が充分出せ、小魔法に毛が生えた程度の長さの詠唱でもモノによっては大魔法並の威力が出る。

 そして今回もそれを最大限利用して攻撃したのだ。


「しっかしマサさんの口先時間差魔法攻撃、結構役に立つっすね。」


 単純なマサさんは俺の誉め言葉に思いっきり胸を張った。


「だろう!」


 何となく、いやホントに特に理由はないがなんとなくマサさん1人が胸張ってるのが納得がいかず、すかさず俺は突っ込んだ。


「事前に効果がイマイチ予想できねえのが微妙なトコっすけどね。今回だってこんなデカいのが凍るかどうかはハッキリせんかったんでしょ?」

「うん、まあ…けど大体の威力は想像がつくんだぜ。」

「何で?」

「カンで。」

「カンかよ!」


 シイちゃんが突っ込んだ通り、問題はオリジナル詠唱が故に初めての場合、事前に威力が想像しづらい点が欠点だ。

 利くか利かないかも含めて、とにかく1回詠唱してみないと分からない。マサさんが迷宮で苦心していたのはこの点だ。


 とにかく魔法だから利かなきゃ意味がないし、逆に利き過ぎると周囲の俺らも危ない。

 現に最初の内は唱えた挙句威力が足りないならまだしも、何ぞ間違えて発動しないとかもあったし、最後の方は逆に威力があり過ぎて、俺らがフレンドリーファイアを喰らいかけた事もあった。俺は見てないけど、一番最初の頃は練習では何ぞ語句を間違えて火を出そうとして水が出たとかも結構あったらしい。


 しかも種類を増やそうと思ったら全ての詠唱を一々自分で作らなくてはならない。

 マサさんが敵と戦ってない時も常にアブナイ人宜しくブツブツ言ってたのは、種類を増やす為に詠唱文句を考えていたからだし、自分の作った魔法を自分で暗記する必要があったからだ。エロゲ大帝は基本アブない人……というのがないではないが、100%ではないと言う事だ。


「死んだんかな、コレ?」

「水使うとか言ってたし、氷、溶かしたら生き返るとかってマジナシっすよ?」


 俺らのフラグなボケに当然、マサさんは言った。


「悪いけど多分、死んでない。」


 マサさんの俺らには都合の悪い答えに、シイちゃんが口を尖らせた。


「なんで分かる?」

「いや、何となく。俺にはヤツの気配がまだ感じられるんだ。」

「気配を感じるとか何気に達人っぽいこと言ってるけど、マサさん、ケ〇シロウじゃなくて魔法使いっしょ?」

「しかも鈍感系だよな。」

「何で鈍感系!?俺はそんな女の子に囲まれてそうなラッキースケベに溢れた人生送ってねえぞ!?」


 予想もしなかったマサさんの何でか嬉しそうな反論にシイちゃんが一瞬「その返しは考えてなかった!」という顔をしたが、すぐさま正直ベース言い返す。


「ああ…悪い。表現マジった。そんな褒めたつもりは全然ない。微塵もない。ミジンコ程もない。むしろ普通に貶す方の鈍感だ。」


 マンガなら俺らの周囲にはボケっとした顔のミジンコが沢山飛び回っているであろう中で俺も追撃する。


「漢字の意味、辞書的な方向っすよね。」

「シイちゃんの言ってる意味がなんで分かる?」

「いや、何となく。」


 この頃になると俺らのキャラは固まっていた。

 ボケ、ツッコミ、ツッコミだ。言うまでもなくマサさんが大ボケ、俺とシイちゃんがツッコミ×2だった。

 今にして考えると、自虐ネタを中心にボケを一手に引き受けていたマサさんの存在は偉大だったなあ。


「うん、まあ取り敢えず時間稼ぎと思えばいいんじゃないすか?」

「コイツ、さっき得意は水って言ってたじゃん。利きが弱いとヤバいかも知んねえぜ?」

「…ああ、じゃあもう少し強めにする?」


 マサさんが何か小声でブツブツ言いながらゴロンとうつ伏せに転がった。動物園の楽な環境下で太り過ぎのトドが寝返りをうったみたいな感じだ。そして後ろの手のまま小さく手を振ると、ガッチンとヒュドラは更に凍った。


ヒュドラはまだ死んでませんが次は女性陣の話。

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