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風任せで人任せな俺がここにいる理由  作者: 明月 文


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13/22

012 遅れて来たお約束

「鑑定を頼めるか?」

「ほほう。今日はいいのを仕留めたな。」

「まあな。たまにはいい稼ぎもいいもんだろ。」


 俺はトリキャスを出た後、デアコアイルという町に来ていた。山地の間にある盆地の様な場所にある比較的小規模な城塞都市だ。

 山間地で周辺は森が多く、そこそこに魔物がいるという噂を聞きつけてやってきた。


 今日の俺は依頼の魔物以外にも予定外の魔物を斃した。ブラッドクラブだ。カニの魔物である。

 珍しいタイプの魔物で滅多に見ない。少し…いやかなりかな…大きめのタカアシガニだと思えば形状の想像は容易い。


 勿論、タカアシガニではなくて、ブラッドクラブという魔獣だから生態は大きく異なる。


 深海じゃなくて陸上を歩いているという事はもはや横に置いておくとしても、ブラッドクラブの何がヤバいって、まず甲羅がカメレオンの様に色を変える点だ。

 当然、使い道もカメレオンと同じく周辺の景色への擬態だが、ブラッドクラブのそれはもう光学迷彩に近く、しかもそれを積極的に利用して相手を襲う。これだけでも非常に厄介なタイプである。

 しかも口からブクブクと出る泡はそこそこに威力のある毒で、遠くまで飛ばしたりはしないものの、近接戦闘では皮膚につく事もあり、つけば即死したりはしないが、ちょっと爛れるどころでは済まない。

 長い手の先の挟みは強力なペンチみたいなもんで、切れ味も刃物並に鋭く、中途半端に挟まれても人間の腕なら軽く骨が砕け、バッチリ挟まれれば瞬時に斬り落とされている。彼はそのよく切れる手足を使って獲物を結構器用にチョキチョキ小分けして食べる。言うまでもなく肉食である。


 周囲に擬態して獲物を襲うのが習性だからか、動き自体は早くない。つか、かなりマッタリしているのが唯一の利点(?)で、しかも攻撃前には口から泡を吹く習性があるので光学迷彩とかもう関係なく目立つ。だから比較的厄介な特性持ちで攻撃力もそこそこ高いわりにランクはDの上位といったところだ。


 これで動きが早かったら確実にB以上だろうな。

 全長2~5mで鋭利な刃物を複数本持った透明な何かが森の中で襲って来るのである。口から泡吹くから分かるって言ったって、そりゃ正面のある程度遠くから気を付けて見ればって話で、人間には届かない2m以上先が彼らの間合いだ。これにスピードが付け加われば正にデカいプ〇デターそのものだ。


 何度目の説明か分からないが、俺の猟は罠のエサで近場に誘導し、木の上からボウガンだ。

 近寄る必要がないから動きがあまり素早くない敵に対しては有利だ。ブラッドクラブは動きと言う面ではそれ程相性は悪くない。もっとも甲羅も固く、木の最上で待ち構えていた場所からの狙撃では歯が立たず、木を途中まで降りる必要はあったが。

 ヤツの手の届く範囲まで降りなくてはならなかったら苦戦したかも知れない。

 一発目が甲羅に弾かれた段階で、ヤツにも気付かれ、さんざっぱら目の前で暴れられて結構怖かったしな。ギリギリの距離まで近づいて、ようよう甲羅は貫いたものの、自分が毒持ちだからか、毒の効きも悪かったし。

 少し大きくはなるだろうから木登りには苦労する事になりそうだが、もうちっと飛距離と威力のあるボウガンも用意した方がいいかも知れないな。


 まあ、俺の場合は、最悪、特技を使うという必殺技はあるにはある。

 だが、これはほぼ万能攻撃力がありそうだが、固いヤツを殺るにはそれ相応の威力が必要だ。ブラッドクラブは比較的固い方に入るから、初手から結構強いのが必要だったかもなあ。

 いや、迷宮初期の頃じゃあるまいし、Dクラス程度なら今はそんなに気合入れなくてもイケるか。


 この高い所には来ないという意味では弓師の俺と相性は悪くないが、硬いからちょっち厄介な相手であるブラッドクラブを倒して何が嬉しいって、その固い外骨格がそこそこいい値段で売れる点だ。主に防具系に流用されるらしい。

 そういった意味で、ギルドの受付も甲羅を持ってきた段階で何を殺ったのか分かるし、依頼対象外だが「いいのを仕留めた」と評したのだ。


 ちなみにネット辺りの小説なんかに出てくるギルドの受付と言えば、気立ての良い美人だったりするのがお約束だが、現実にはそんなのはいない。影も形も存在しない。少なくとも俺はこの世界では見た事がない。だいたい、つか100%、ムサい、ムサを極めた感じのオッサンだ。


 当たり前の話で、ここは質の悪いサラ金事務所の様な場所だ。

 店員も客も質の悪いのしかいない。

 仕事も危険、汚い、キツいの3Kを極めている。


 持ち込まれる案件は荒事、厄介事ばかりで、引き受ける冒険者は腕っぷしメインの脳筋系しかいない。アタマがメインのはずの魔法使い系列の連中だって魔法を覚える以外の脳みそは完全に脳筋系だ。暴れ方が腕っぷしか魔法かの違いだけである。

 そんな冒険者達は何か気に入らない事があれば脳の筋力も動員して簡単に暴れる。口の利き方がなってないとかを問題視し始めたら誰もいなくなる。

 店員、つまりこの場合はギルドの受付だが、この種の生まれつきの半グレで自然体でクレーマーな相手しかいない環境に耐えられる人間しか勤まらない。

 体がデカく、凶悪な顔をして、これまたバチクソデカい武器を背負った冒険者が少し凄んだぐらいでビビってる様では仕事にならないのだ。


 要するに可憐で素直なねえちゃんでは全く無理な職場環境である。

 逆に可憐で素直な美人のねえちゃんは、こんなドブ底でなくとも就職先はいくらでもある。


 だが見た目はムサくとも客商売ではあるし、ヤクザと一緒で凶悪な顔で態度が悪くとも腕っぷしのいい冒険者は歓迎される。

 前のキッチュの受付も、俺がEクラスにしては役に立ちそうだと分かってからは、愛想よく最後は仕事を回してくれたりしてたし、ここではDランクからの出発だからまるで素人じゃなかろう、とそこそこ愛想よく接してくれる。


 だが、ギルドに集う全員がそういう訳じゃない。


 何度でも繰り返すが、冒険者ギルドは前科者はおろか現役の犯罪者でも何でも受け入れる心の広い、昨今風の用語で言えばダイバーシティを最優先のプライオリティーとしてオーガナイズされている組織だ。

日本の組織に在りがちな年功序列も学歴差別もない。

 そして魔物を倒せるという能力だけが優先され、魔物を倒したという結果だけで評価が決まる所属員全員に平等な組織でもある。給与も仕事をした数とその困難度合いにほぼ正確に正比例する。中間管理職として仕事のデキない課長もいなければ、引退気分の天下りの部長もいない。これも現代風に言えばジョブ型人事制度に基づく完全実力主義のフラットな組織体である。


 だから逆説的に、他の心の狭い組織、別の表現をすれば通常一般社会では全く受け入れられない、超心の狭い方々や口や脳より先に手足で解決するだけの輩も多く集まってくる。


 アタマでは理解はしていたものの、実際にこの現実を思い知らされたのはギルドを一歩出た所でだ。

 少し暖かい懐を抱えてホクホク顔でギルドを出ると、数人の冒険者らしい、もう見るからに心と脳の稼働面積がイヤに狭そうな連中に囲まれた。


「……何か用かい?」


 こういう連中は良く言えば口下手だ。有体に言えば国語能力が大人に至るまでに全く養われず、コミュニケーションと言えば殴る蹴るだけだ。なので自分達で取り囲んでおいて自分達からは口を開かない。


 全く気乗りしなかったが、冒険者ギルドにおける一種のお約束な事態だ。

 男と長く見つめ合う趣味もないし、口下手な彼らに俺から話し掛けてやるしかなかった。


「おう、今日は結構稼いだみてえじゃねえかい。」


 こちらから口火を切ってやったのに、それでも口下手な彼らは「お前いけよ」とばかりに顔を見合わせた後、漸く正面の男が口を開いた。


「まあな。」


 俺が横を通り抜けようとすると、もう一人が前に立ち塞がった。


「(ハア…)用があんなら早く言えよ。」

「………新入りなら、俺らに何か一言合ってもいいんじゃねえか?」

「おう?こんばんわ?」


 俺のあからさまに小馬鹿にした態度に、早くも我慢出来なくなったらしい。

 心も脳もこぢんまりしているのだ。しかも8割方が活用されてない。


 後のヤツが俺の肩を小突いた。

 この種の連中は日本の偏差値40ぐらいの高等幼稚園生と一緒で小技にしても卑怯に出来ていて、後ろからしか出来ない。


 俺が少し前によろめくと、今、道を塞いだヤツが俺の腹辺りに前蹴りを喰らわせるべく足を挙げたのが見えた。取り囲んで小突き回すコンビネーションとしてはそう悪くない。


「がっ!痛って!」


 もっとも叫んだのは俺ではなくて前蹴りした彼の方だ。

 軽い脅しのつもりだったのか、思いっきり蹴らなかったから彼はその程度で済んでいる。


 口を開いた男…仮に彼はリーダー君としよう…は、前蹴り野郎の予想外のリアクション芸にちょっと何が起きたか分かりませんという顔だったが、俺の方もこの辺でめんどくさくなってきた。

 俺がこれ見よがしに拳を振りかぶると、流石に冒険者(だよな?)らしく、そんなミエミエ喰うかよ、と、しかも体格で劣る俺を見下した表情で、ブロックすべく反射的に腕を挙げた。


ガンッ!


「ああああああっ!」


 リーダー君はパッキリ折れたであろう腕を抱え、叫びながら2、3歩下がった。


「この野郎!」


 その横に立っていた痩身の男…ヤセは分かりにくいな、頭にバンタナを巻いてるからバンタナ君としよう…が素早くナイフを抜いて踊りかかってきた。

 距離がないのに軽いフェイントをかまして、ナイフはフェイントにモロにひっかかった俺の腹に吸い込まれる。対人戦闘として悪くない動きだ。喧嘩慣れしてると見える。職業はシーフかな?


ガッキンッ!


 俺の腹にキレイに刺さったはずのナイフが折れたのを一瞬、呆然と見て動きの止まった彼の顔面を、今度は俺がお返しとばかりに殴りつける。


ゴン!


「テメエ!」


 バンタナ君が折れた歯を撒き散らしながら崩れ落ちた後ろから、残る1人が剣を抜いて片手殴りに斬りかかってきた。

 流石にこれは俺からも丸見えだったので、横向きに避けた。


バッキン!


 後ろから衝撃を感じ振り向くと、最初に蹴りを入れて来た男が中途半端に折れ曲がった剣を見てビックリした顔ををしている。後ろから俺の頭を剣で殴りつけたらしい。


 後ろから殴りつけとかダメだろ!

 しかも剣でアタマとか、俺じゃなかったら死んでるじゃねえか!!


 流石に俺が怒りの表情で振り向くと、彼はちょっとビビった顔をした。

 その顔に、俺は更にイラっときた。つか完全にキレた。


そんだけやった後で今更ビビるとか、何だテメエ!


「あんだ!テメエ!!」


 俺は足を上げ、そのまま彼の膝に落とした。


バッキン!


「きゃああああああああああっ!」


 彼は生物学的にない方向に曲がった足を抱えて、俺の嫁とかキモ過ぎる言葉をかけているお気に入りのエロフィギュアを壊されたオタクみたいな声を上げて地面を転げ回った。


「テメエ…ぶっ殺してやんよ!」


 最初に俺の前に立って話し掛けて来たリーダー君が、折れた方の腕はダランとしたまま、片手で剣を抜こうとしたが、もう彼らに先手を取らせる気はない。

 俺は前蹴り男の取り落とした曲がった剣を拾い、一歩前に出て殴りつけた。


「ガッ!」


 彼は咄嗟に剣を抜く動作を中断して片手でガードしたが、剣は折れて曲がっていても鉄の棒なのは変わらない。

 鉄の棒を片手で受けて思わず呻いた彼に構わず、俺は更に剣を振り上げった。


「ガッ!オイ!ゴッ!ヤメッ!ガッ!ヤメロッ!ヤメッ!ガフッ!」


 彼は尻もちをついて、折れた方の腕も動員してガードしたが、逆効果だ。

 剣が折れた方の腕に当たり、ギャッ!と叫んで思わずガードが下がったところで、今度は頭に少しいいのが決まると彼は崩れ落ちた。


 が、俺は構わず剣を振り続けた。


 本能的にアタマをガードして、というか抱えて蹲っても俺は無言で殴り続け、完全に動かなくなり、グッタリとして小便を漏らし始めたところで手を止める。


 残るは1人だけだ。最初に俺を小突いて、今は剣を持っている。

 小汚いグレーつかドブネズミ色の上着だから、こいつはミッキー君だな。


 ミッキー君は完全に怯えた顔で剣を抜いたまま後ずさった。


「おい、剣は捨てろ!」


 彼は黙って剣を捨てた。


「なんか、俺に用事があったんじゃねえのか?」


 彼は何を聞かれているのか分かりません、という表情で呆然としている。

 冒険者としてではなく、人間としてレベルが低い、というのは何処の世界でも勉強の出来不出来とは関係なく脳の回転が遅い、というのとほぼ同義である。


「ミッキー!お前に聞いてんだよ!」


 俺が一歩前に出ると、彼は助けを求める様に周囲を見たが、ここは冒険者ギルド入り口である。出て来た連中は、こちらをチラリと見ても、全員、素知らぬ顔で、倒れて呻いている彼の仲間を道端に落ちている犬の糞を避ける様によく見る事もなく物理で避けて立ち去るだけだった。

 そもそも関係のない揉め事に巻き込まれたいヤツは少ないし、冒険者同士のそれは素直にどつき合いである。今回と同じく武器を持っていれば当然使用される。見ないふりが普通なのだ。

 日本でだって駅でチンピラ同士が喧嘩していても大概の人間が見なかったフリをして立ち去るだけだ。


 チンピラ同士でなくとも、小柄なヒョロい兄ちゃんが刃物を持って暴れているのを見て、勝てると踏んで格好つけて取り押さえようとした挙句、刺されて死んだ唯の素人さんの例もある。

 逆にデカいガタイの半グレ高校生が電車内で態度が激悪かった小柄なニイちゃんを景気良く怒鳴りつけて自分から喧嘩売ったまではよかったが、相手がタトゥーとかではなく本物の刺青だらけなのを見て震え上がり、土下座させられ顔を踏みつけられても何も出来ず、駅員に泣きつくしかなかった例もあったな。


「お前だよ!ミッキー!返事はどうした!」

「え!俺?あ…はい…」


 ボケっとしてんじゃねえよ!と思いはしたが、よく考えたら、コイツ、ミッキーって名前かどうかは分からんな。つか確実に違うだろう。けど関係ない。俺の中ではコイツはミッキーなのだ。


「何の用事か、聞いてんだよ!」


 俺は彼らに用事がない。

 彼らが目の前で手足が千切れて血を吐いて倒れていても、何もしないと言うより、道端でハエが死にかけてるのと同じで自分の足が汚れない様に踏まない程度には認識するが、意識には残らない。

 彼らの方から俺に声を掛けてきたわけで、用件は彼らがまず話すべきだ。


「あ、いや、その……あ、いや、金、持ってんのかなって…」


 俺の懐事情がお前らに何の関係がある!?


「持ってたらどうなんだよ?あ?」

「いや…別に…ただ持ってんのかなって…」

「答えなきゃいけないか?ええ!おい?」

「いや……別に…ただ知りたかっただけだから…」


 俺が睨みつけると、ミッキーは更に後ずさった。


「とっとと、どけよ!バカヤロウ!」


 彼はどく、というより壁際に張り付き、俺は手に持ったままだった曲がった剣をその辺に放り投げて、その横を素通りして宿へ帰った。

 宿に荷物を置いたら、行きつけの飲み屋へメシを食いにいく予定だ。



 次の日、ギルドに顔を出し、掲示板でウサギの魔物、バーサーガーラビットの退治の依頼を見付け、剥がして受付に持っていった。

 バーサーガーラビットは簡単に言えば、ちと大き目の雑食のウサギで、増えると普通のウサギよろしく田畑を喰い荒らす。雑食で野菜も好きだが人肉も含む肉も好物なのが普通のウサギとは違う。説明が遅れたが言うまでもなく魔獣である。

 攻撃面から見ればジャンプしながらの普通のウサギより軽く数倍は素早い動きと、群れで襲ってくるのが厄介な魔物だが、皮膚は通常のウサギと変わらず、罠猟の俺からすれば、彼らが襲ってこれない高さまで昇ってしまえば楽勝だ。

 群れで来て、仲間が殺られれば後先考えずに次々に襲い掛かって来るバカな習性があるから、木の上から狙い撃つ俺からすれば、上手くハマれば入れ食いと言っていい。


 いい依頼があった、と早くも捕らぬ狸の何とやらではないが、少しホクホク顔で受付に向かったが、受付は俺の持って来た紙を受け取り、受付日を台帳に記載しながらボソッと言った。


「お前が昨日、玄関先でやったアイツらな…」

「はあ。」


 冒険者ギルドは集まっている面子から問題の起こりやすい場所だ。

 だから、冒険者同士が揉めたからといってギルドがいちいち介入したりはしない、と聞いている。


 中学校では生徒同士のイジメに一々介入しないのがデフォルトであるのと同じである。仮に死人が出ても、更には加害者が誰の目にも明らかな場合でも死亡との因果関係は不明とされる点も一緒だ。我々ギルド員もそういうもんだと理解している。

 その場で大っぴらに双方が武器でも構えて揉め始めれば別だろうが、その場合でも「外でやれ!」と言うのが精々だろう。学校では教室で数人でフクロにしてるのを見ても先生は「もう授業が始まるからやり過ぎはダメよ」のと注意するのと一緒だ。

 現に昨日、揉めた時も、玄関口の直ぐだったから、中からもよく見えていただろうが、誰も止めには来なかった。


 なのに、今更、何か文句でも言う気なのかいな?


 だが、俺の若干の警戒と不快感を他所に彼は変な事を言い出した。


「お前を仲間に誘いたかったんじゃねえかな…」

「はあ?」

「奴ら、仲間内に魔法使いとかもいねえから、遠間で戦える弓使いのお前さんを誘う気だったんじゃねえかな。」


 ……よく考えてみれば、彼らが何の用事だったか碌に聞いてないか。

 いやいや聞いた。ミッキーは俺の懐具合を聞きたかったと言ってた。


「アイツら、ああやって新入りに絡んでな、どっちが強いか分からせてから仲間にすんだ。」


 全く意味が分からない。だいたい最初からそんな感じの切り出しじゃなかった。もしそうなら懐具合は何も関係ねえだろう。

 そもそも田舎の工業高校じゃあるまいし、殴りつけて言う事を聞かせる行動を、仲間に誘ってるとか友達になりたいとかって表現するのはおかしい。


「アイツら、俺とコミュニケーションをとりたそうには見えなかったぜ?それに俺は誰かの下につく気はねえよ。」

「だろうな。」


 受付は淡々と依頼の半券を千切り取って、カウンター越しに渡してきた。


「まあ…アイツら、あんなんだから、結構、色々揉めてんだが、あんなやられ方も初めてだからな。」

「かもな。」


 俺は彼の話を聞き流して、半券を受け取った。

 今、考えれば俺が何も気にしてないのは丸分かりだったろう。


「そいじゃ、行ってくるわ。」

「おう、気いつけてな。」


 これも今考えれば、受付が珍しく声を掛けてきた意味が分からなかった俺は、周囲のベテランからはバカに見えただろうなあ。


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