烏
僕はカラスが嫌いだ。
田舎に住んでいるからか分からないが、町のいつどこに行ってもカラスを見る。今日もギャーギャーカラカラ鳴く耳障りな音で目が覚め、庭に実っていた柿を、我が物顔で勝手に食べていた。学校に行く途中、人間が出したごみを散らかし、道路にいた猫の死体を突きおいしそうに食べていた。最悪の気分で教室に着き、グラウンドを見ると巣があるのか知らないが裏山から大量のカラスがグラウンドに集まってきた。カラスに一度舐められるとことん人間様のことを舐めてしまうらしい。今僕が銃を持っていたら、間違いなく撃ち殺してやるのに。
夕方学校終わり、一番嫌いな時間だ。ウジ虫のように町中に沸いていたカラスたちが裏山に帰る時間だ。暮色は黒く塗りつぶされ、不規則に動く黒い点から鳥類とは思えない下品な鳴き声が町中に響く。裏山を焼いてしまいたい。
僕は夜が好きだ。
夜はあいつらが巣にこもり、目の中に入れなくて済むから。だからよく静寂を楽しむために夜中に散歩をする。今日は特別な散歩だった。なんせカラスの死体があったから。なんで死んだかはよく分からないがいつもの散歩道の真ん中にあった。興味本位で近づいてみると、改めてこいつらの醜悪さに気づいた。死肉を啄むための大きなクチバシ。獲物を殺すためにあるんだろうなという長いツメ。そして何より自然淘汰では考えられないほどの黒い羽毛。まじまじ見ていると、死体と眼が急に合った。僕は心臓を掴まれた。夜の闇と体色で死体の眼が開いてたことに気づかなかった。ここにきて僕の体に恐怖が走った。だって、死体だと思っていた黒い塊はまだ生きてるかもしれない。カラスの眼には僕がはっきりと映っていて、僕を獲物としてこちらの様子を見ているだけではないのだろうか。もし、僕がここでカラスに長いツメで襲われしまったら。大きなクチバシで体中を突かれてしまったら。そして、僕の一部を食べてしまったら。食べられたあの猫はカラスの一部となったのだろうか。頭からつま先までの血が冷たくなるような感覚だった。僕にカラスを触れる勇気はなかった。
次の日、友達と学校に向かっている途中、いつものようにごみに集まる大量のカラスを見かけた。昨日のせいか知らないが、なんだかカラスがこちらを見ているような気がした。それが怖くて、友達に「カラスが多くて本当に嫌になるね」と愚痴を言ってやった。友達は答えてくれた。
「烏から見たニンゲンもそう見えるんじゃない?」




