3トビウオと赤鴉
星界の海中で色々な種類の生き物がワイワイと楽しく宴会を開いています。
その様子をトビウオさんが離れたところで聞いています。輪の中には入りませんが、賑やかなところは好きです。
今回は虹ますさんが得意の歌を披露しています。世界の始まり、太古の昔から続く母なる海。ここに住まうことは生き物にとって、とても名誉なことなのです。
トビウオさんは母なる海にとても気に入られています。他の生き物が立ち入ってはいけない場所にも、トビウオさんは泳いでいけます。
だけれど、トビウオさんはそのためか元からだったのか、周りの生き物たちと自分は違うと感じています。考え方が大きくずれている、と妹には言われるのです。いろいろな生き物と話す妹ですから、やはりトビウオさんは自分が変なのだと思っています。
楽しい宴会で少し悲しくなってしまったトビウオさんは、酔いつぶれる生き物たちからそっと離れました。
行き先は海面です。
大きく跳ね上がって、キラキラとしたお日様を浴びて、そしてまた水に体を浸して。それをなん度も繰り返しました。
悲しいことは動けば少し気が紛れます。
そのうちにゴツゴツした海岸沿いにまでやってきました。
トビウオさんは妹に会いに行こうか、と考えました。妹は森の大きな木のうろに住んでいます。トビウオさんは頑張れば移動できるのですがとても疲れるのでどうしようかとしばらく考えています。
そこに、ばさばさと羽音が聞こえました。
トビウオさんが見上げると、真っ赤な翼が降りてきます。
赤いカラスさんです。
「トビウオだ。ここでぼけっとしていて、どうしたの?」
ちょっと荒い口調のカラスさんは、トビウオさんが久しぶりに海面から上がっているので声をかけたのです。
赤いカラスさんもまた、トビウオさんと事情は違いますが他の生き物たちとあまり話をしません。赤いカラスさんは少し似たところのあるトビウオさんに親近感を持っているので積極的に話しかけます。だけれど、トビウオさんは自分のことに手一杯で、赤いカラスさんのことをあまり考えてはいないのです。普段はほとんど会わないからなおさらでした。
だからでしょうか。トビウオさんは少し赤いカラスさんにそっけない話し方をします。
「赤、久しぶり」
「珍しい、こんな陸近くに来るなんて」
「頭冷やしにきた」
「トビウオは面白いなぁ」
赤いカラスさんは表情豊かに鳴きました。
「赤は何してたの」
「仕事をしてただけ」
トビウオさんは久しぶりに会話をして少し嬉しそうです。トビウオさんに言うと否定されると経験上わかっている赤いカラスさんはそのことについては何も触れません。
代わりに、トビウオさんの疑問に答えました。
赤いカラスさんは死んだ生物の魂を海まで運んで魂の余分なものを全部洗い流します。とても大切なお仕事です。
「その後は主の元で可愛がってもらうんだ」
「君は本当に黄金の君が好きだね」
「ふふ、それは当たり前」
「僕はご主人様そんなに好きじゃない」
「りすは白銀の君の自慢ばかりしてたけど、トビウオは違うのか」
「りすのあれは盲信」
「ふふ、りすにそう言ったら怒りそうだ」
トビウオさんは妹よりも冷静に自分の主のことを見ています。主がまだ未熟な頃から一緒にいたのです。トビウオさんにとっては、主は兄のような存在でもあるのです。
「灰は同意するよ」
赤いカラスさんの姉妹の灰色カラスさんともトビウオさんは仲良しです。似たような話をいつかしたことがありました。その時、灰色カラスさんは言葉にこそしませんでしたが、思うことがあったように微笑んでいました。
「姉様も主のことは好きだぞ」
「君がそう思うなら、そうなんじゃない?」
灰色カラスさんのお腹は真っ黒だったことを思い出したトビウオさんは話を切り上げました。灰色カラスさんは溺愛している赤いカラスさんに悟らせるはずがないと気づいたからです。
トビウオさんは似たもの主従だなと、黄金の君と灰色カラスさんのことを思いました。黄金の君は素直に見えますが、捻くれて一周回っているだけなのです。赤ガラスさんはそんな二匹に囲まれていながらも素直な性格をしています。
「ああ、もう仕事に行かなければ」
赤ガラスさんは忙しいので、バサバサと翼を広げて飛び立っていきました。
後に残ったトビウオさんは気が晴れたのか、
再び深い深い海の中に潜っていきました。




