エピローグ:その男、火力か阿闍梨か
MMOの片隅、ギルド仮拠点「六道庵」にて。
“火力信者”ケンジと、“脳内沙門”真観の語らいが今日も火を灯す――。
本編では見られない、ゆるくてちょっとアツい焚き火トークをお楽しみください。
※仏キャラ(?)と中二ギルド名にご注意ください。
ログアウト前。ギルド仮拠点「六道庵」――という名の、ただの野営地にて。
焚き火を囲んで、ケンジはぽつりと呟いた。
「いや〜、やっぱMMOっすよ、師匠。リアルにはない自由がある」
「だから、師匠ではなく“脳内沙門”だと何度言えば――」
「いやもう“脳内師匠”で定着してるんで」
「そんな中途半端な定着やめい。記憶に悪い」
「えー、じゃあ“燃える坊主”ってのは?」
「それでは火葬だ。縁起でもない」
「そもそも“脳内沙門”って名前からしてヤバくないすか?」
「“称えよ、わが脳内寺院”。なかなかに中二心をくすぐるとは思わんか?」
「誰がくすぐられるかァ!」
ケンジが肩を抱えて震えるのをよそに、真観はひとつ咳払い。
「それにしても、よくここまで来たな。君は最初、“課金で殴る”ことしか考えてなかった」
「いやぁ、あの頃はまだ若かったんで。リアル四年だけどゲーム年齢は中学生ぐらいで」
「ゲーム年齢とは」
「てか師匠は? なんでこんなに平然と仏キャラやれてるんすか?MMOのどこで修行したんです?」
「…『念』のあるところに『仏』あり」
「意味わからんけどかっこいいからずるい!」
真観はふと御守りを取り出して見せる。赤と白の縞模様に、中央の梵字が微かに発光していた。
「ちなみにこの御守り、現実の写しじゃなくて、ゲーム内の“護符ガチャ”で一発ツモだ」
「まさかの運ゲーッ!? それ運営の慈悲じゃないっすか!」
「“物欲センサー”を無にすれば、欲しいものは来る。無欲こそ最強」
「この人、煩悩マシマシで課金してた俺の心をえぐるのうますぎる……ッ!」
そのとき、システム通知が表示された。
――【ギルド『六道結社』に加入しました】
「なぁ師匠、なんでギルド名そんなに厨二なんすか。“結社”て!」
「“道”を継ぐ者は、何かと儀礼を重んじるのだ。あとカッコいいからだ」
「結局そこかァーー!」
ケンジが顔を覆って笑うと、真観もつられるように微笑む。
ログアウトの時間が近づく。火はゆらゆらと燃え、やがて小さくなっていく。
「じゃ、また明日も姻INします。火力信者Lv62、これからも師匠の背中追っかけますんで!」
「……火力は、爆発ではない。照らす火であれ。忘れるな」
「名言出たーーーッ!? いや、もうそれ、ログイン画面に表示してくれよ!」
火のゆらめきが消えるその瞬間、二人はログアウトの光に包まれて消えていった。
だけど――
六道の業火は、夜な夜な燃え続けているのであった。
読了ありがとうございます!
今回は、浦見真観とケンジの過去(あるいは日常)を描く、
ちょっとバカで、ちょっとイイ話のスピンオフでした。
本編では見せない彼らの“火種”が、夜の焚き火でこっそり燃えていたかも?
ギルド「六道結社」の他メンバー視点や、
「煩悩ガチャ」「護符ビルド」などの設定も今後展開予定です。
感想・いいねが六道の業火となり、続きを燃やします
また“照らす火”のもとでお会いしましょう――。