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第四話:再会、そして再戦

かつての仲間との再会。

そして、変わった自分を試す“再戦”。


火力信者・ケンジが再び手を取るのは、

かつて離れてしまった「誰かとプレイする楽しさ」だった。


炎は、破壊のためではなく──

共に歩むために、灯される。

密行寺――


閑かな境内を抜け、杉の木立を通ると、やがてひときわ古びた書院が見えてくる。


「あ、来た」


小さく手を振る青年。白いフードに縁が擦れたバックパック。


かつてのフレンドリストで一番上にいた名前。晴人ハルト


「……久しぶりだな」


「ほんとにな。何年ぶりだよ、ジロ……じゃなくて、ケンジ」


「ジロでいいよ。こっちが本名だし」


晴人は、照れくさそうに目を逸らした。けれどその瞳には、あの頃と変わらぬ色が宿っていた。


「呼び出しといてなんだけど、驚いたぜ。お前、寺通いなんてキャラじゃなかったろ」


「うん……まぁ、変わったのかもな、いろいろと」


ケンジはポケットから取り出す。赤と白の縞模様の御守り。


その中央には、見慣れぬ梵字がひとつ、祈りのように刻まれている。


「なあ、晴人。お前、まだ“Echoes of Logos”やってるか?」


「ああ、細々とな。仲間とやる分には、まだ面白いゲームだ」


「じゃあ、俺と一緒に来てくれないか。あの時の続き、やり直してみたいんだ」


一瞬、風が止んだように感じた。


晴人はケンジの目をまっすぐに見据え、そして――小さく頷いた。


「……やり直そうぜ、俺たちの火力バランス」


数時間後。


ケンジと晴人は、ゲーム内で再びパーティを組んでいた。


共闘クエスト《凍光の遺跡》――


初見殺しのギミックと属性バランスが問われる高難易度ダンジョン。


かつてなら、ケンジは炎属性の超火力で正面から殴り抜けていただろう。だが今回は違った。


「後衛に回る。支援と範囲火力は任せろ」


「了解。じゃあ俺は前でタゲ取る」


ゲームの中、ケンジの動きは以前よりも柔らかかった。


「火力」はそのままに、今は仲間のために振るわれる「灯火」になっていた。


クエストの最後、氷の巨獣を倒した瞬間、ケンジは画面越しに小さく笑った。


(これだよ。……俺が、欲しかったのは)


かつてのように、勝利を仲間と分かち合う喜び。


誰かと共にある、という感覚。


「ジロ、次のアプデで新しいレイド来るらしいぞ。今度はもう一人、声かけてみようぜ」


「……ああ、そうだな」


そしてその夜、ケンジは再び密行寺を訪れる。


書院の障子を開けると、すでに阿闍梨・浦見真観が畳の上に座していた。


「ようこそ、火力信者殿」


「……やっぱ、呼ばれてたんすか」


「火は、灯れば煙を立てます。あなたの火も、随分と清らかになってきました」


「ありがとうございます、阿闍梨さん。俺、もう一度信じてみたくなったんす。火の強さじゃなくて……火を向ける、その“想い”を」


真観は微笑み、静かに言った。


「かつて仏陀も、火を見て思索にふけったといいます。


“心にある火を、いかに焔とせず、灯火とするか”――


それを学ぶ者を、我々は“沙門”と呼びます」


ケンジは御守りを胸に、深く息を吐いた。


「“脳内沙門”か……悪くないっすね、その名前」


静寂のなか、真観の笑みが、ゆっくりと深まった。

ここまで読んでいただき、ありがとうございます!

第四章では、かつての仲間との再会、そして火力信者としてのケンジの“変化”を描きました。


「火力」=「俺つえー」だけじゃない。

その力を“誰かのために”使えるようになった彼は、ようやく「本当の意味での成長」を始めたのかもしれません。


次回はいよいよ真観との本格的な対話へ。

「悟り」へと続く火の道を、ケンジがどう歩むのか──ぜひお楽しみに。

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