卒業式で貰った返事はまだ保留
「卒業式での返事はまだ保留」の林くんSideになります。
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「泉、俺もついて行くよ」
「林くん……別に良いのに」
「いや俺が行きたいだけだから」
泉の親友と俺の親友に気を使って自販機に向かう泉に、声をかけた。泉を困らせるだけだと分かっているのに、どうしても泉から返事を聞きたくて仕方がない。
――ペタペタ
――コツンコツン
何と切り出したら良いのか迷ってしまい、少しの間沈黙が生じる。しかし、このままでは駄目だと十歩進んだところで単刀直入に尋ねた。
「泉、けじめついた?」
「…………ごめん…………実はまだなの……」
「そっか……分かったよ。ちゃんとけじめが付いた時にまた新たな返事が欲しい」
あぁ、やっぱりそうか。泉はまだ泉の親友に想いを寄せていた。まあ、今までの様子から何となく勘づいていたけど、少し悲しいものだな。
最初に泉が関わってきたのは2年半ほど前。俺と親友の原はいつも一緒に行動していて、講義を受ける時は前の方の席に座るのだが、その時普段真ん中ぐらいに座る泉と親友の南が、俺達の前に座ってきたのだ。
これからは前に座りたいから仲良くして欲しいと女子に話しかけられ、大変驚いた。だが、原はそれをアッサリと受け入れて2人と打ち解けていた。口下手である俺は、この時不安しか無かったが、すぐに打ち消されることとなる。
泉は積極的で、俺でも気軽に話せるほど明るかった。一方で南は内向きな性格だったが、泉のサポートのもとスムーズに会話が出来ていたのだ。
こうして、俺達はすぐに仲を打ち解けていくわけだが、そんな中で泉に惚れていることに気づいた。また泉を目で追っているうちに、泉は南に想いを寄せていることも。そして好きだからこそ諦めて、原と南をくっつけようと奮闘していることも次第に気づいた。
しかし、泉に対する気持ちは増幅するばかり。とうとう原と南が付き合って3ヶ月が経った頃に、泉に告白をした。
「泉のことが好きなんだ。だから俺と付き合ってくれない?」
やはり返事はごめん。しまいには南が好きだからと告白し、俺を突き放そうとした。それでも諦めきれなくて、それでも良いって答えた。すると、泉は卒業式まで待ってと猶予を設けたんだ。これはチャンスなのか分からなかったが、ものにしたくて今まで頑張って食い下がってきた。
そして、今日の卒業式に返事を聞いた結果が涙ながらの保留だった。
ゆっくりで良い。気持ちに整理がついて、もし俺に気が向いたらどうかその時は受け止めて欲しい。
――泉が好きだという気持ちを