銀河騎士隆盛記 零 天の章 49~50 タチの顛末
タチの顛末
49
ベルセラが小ホールで、いつものように黒樫の木剣で素振りをしていると、先生が黒光りしている反りのついた、棒のようなものを手に下げてきた。
先生はベルセラに素振りをやめて、汗を拭いて、自分の前に立つように言うと、手に提げている棒のようなもの(漆塗りの鞘)の先の、灰色の部分(サメの皮を張り付けた柄)の縁についている、黒い楕円形の部品(鉄製の鍔)を右手の親指で押して、ブツンと音をさせたと思ったら、左手で柄を握って、鞘から、タチの銀色の刀身をツツーっと抜き出した。
それは鋼鉄で出来た、ベルセラには、信じられないほど大きな、アスラの太古のタチという剣をアシナシ様(YWC2)が模造した、本物の刀剣だった。
ベルセラの私見では、人を切れる本物の特大のナイフであり、先生が何故、そんなモノを所有しているのか、彼女にとっては、まるっきりの謎だった。
それは勿論、アスラにいる時にボーア老師からカンデンが授かった、あのタチだ。それが、どうしてここにあるのか、ここで話は少し遡る。
50
カンデン一行の乗ったブルーノーズ号が、銀河自由連邦軍、銀河辺境星系の中継拠点のあるカイ恒星、第五惑星カイムリ星、軍師団同星の衛星軌道上にある、医療防疫検閲センターに入港し、医療防疫と検閲を受けた時、カンデンとキンタは樫のトーウ(木剣)と竹製のトーウを、私物として認めてもらうために、持ち込みを申請したが、ボーア老師から授かったタチをどうするかをカンデンは決めかねていた。
問題なのはタチのような大型の刀剣を、管理する法律が銀河連邦には存在しないことだ。刃渡りが0.5メルト以内のナイフ類を常時、携帯するには、連邦警察の所持許可が必要だし、サイドロック式のナイフ類は携帯することは、建前上は禁止だが、犯罪でも侵さない限りは、とくに取り締まりもされていないというのが現状だった。
歴史的な由緒のある刀剣なら、文化財として登録することはあるし、出来る。しかし、アスラで精製したとはいえ、アシナシ様(YWC2)が模造したタチが、文化財として認められるかどうかは微妙なところだ。
ここで馬鹿正直に文化財として申請をしたところで、それが受け入れられるか、それにどのくらいな時間が必要なのかも分からない。そこでカンデンは賭けに出た。タチをブルーノーズ号の船内の、修理工具ロッカーに隠してというか、堂々と放り込んでおいて、見つかって咎められたら、その時に考えようという結果に落ち着いたということだ。




