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「銀河騎士隆盛記 零」オッサン銀河騎士は太古の地球に不時着し、縄文文明期の古代剣法を習得し、その剣、五次元の域に達する。  作者: ジム・プリマス


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銀河騎士隆盛記 零 天の章(バサラバート編)1~14 カンデンの怒り

銀河騎士隆盛記 零 天の章


カンデンの怒り


 騎士カンデンは、惑星バサラバートへ帰還し、銀河ジンウ長老会と元老院議員団を前に、銀河辺境の恒星流に存在する次元断層の規模と、ブルーノーズ号が観測した空間振動の周期データーの以外の、ヒノ恒星系の座標と、その第三惑星アスラのと衛星の環境の詳細については、記録したデータが失われたと報告を拒否し、惑星アスラそして、群島ザパン、そこに住まう東の民と、その環境と文化については口頭のみの報告にとどめた。


 本当は、ヒノ恒星系の座標も、惑星アスラ、群島ザパン、東の民の、環境と映像と音声などを含めた、詳細なデータは、人型星間翻訳機PE57Qと、星間航行船修理特化型情報処理ロボットYWC2のメモリー内部に残っていたのだが、ブルーノーズ号の人工頭脳内部の航行の一部のデータと共に、カンデン自らの手で、記憶媒体に移した後に、完全に消去し、記憶媒体も破壊したのだ。


 銀河の宝石といっても良い、美しい水の惑星アスラと、地上の天国のように平和な、群島ザパンと、そこに住む天使のように、底抜けに陽気でまるで悪意のない、素朴な東の民の人々については、銀河連邦の影響から、遠ざけておく方が良いと考えてのことだった。 


 このことを知っているのは、従者のキンタのみだった。


 カンデンの口頭の報告が、群島ザパンの東の民に、古代から伝わる武術コッポについて、そしてコッポの老師ボーアについて、そして、そのすさまじい剣技、そして老師ボーアの下での、二年に及ぶ過酷な修行について、話が及ぶと、ジンウ長老会の面々から、失笑がもれはじめた。


 長老の一人、老師ガイゼルがカンデンの報告を遮って、発言した。「騎士カンデンよ、そのような銀河辺境の未開の惑星に、銀河騎士の剣を超えるような技が、伝承されておるはずがない。お前ほどの男が惑わされるとは情けない。」


 老師ガイゼルはあきれたような顔をして言葉を続ける。「未開の惑星の野蛮な呪術師に、薬でも盛られて夢でも見ていたに違いない。」


 その言葉にカンデンは、激しい怒りが湧き上がるのをおさえられなかった。敬愛する老師ボーアのことを呪術師と言われたことが、どうにも、我慢ならなかったのである。


カイゼル老師


3 

 カンデンの表情を読んだ老師カイゼルは「このワシの言葉が不服と申すか。」と言いうと、残り9人の長老の面々と、ひそひそと協議を始めた。


 一介の騎士に過ぎないカンデンの立場では、ジンウ長老会の言葉は絶対だった。長老会の前では、絶対服従することが最低の礼儀とされていたのだから。


 協議を終えた長老会から言い渡されたのは、七日の後、長老会立ち合いのもとで、銀河騎士団長、ドレフィスと、光線剣での真剣勝負をせよとのことだった。


 長老会を代表して老師カイゼルが長老会の決定を伝えた後、最後に「何か申し述べたいことはあるか?」と言った。その言葉を受けて、カンデンは手ずから作ったタケのトーウでの勝負にしてほしいと申し出たのである。 


 この言葉に対して老師カイゼルは「命を惜しむか。」と、ひとこと言うと、これに対してカンデンは「マスター・ドレフィスに怪我をさせたくないからです。」と涼しい顔をして、言い放ったのである。


 老師ガイゼルはあきれ果てた顔をして「長い漂流生活を続ける間に、銀河騎士の誇りすら忘れたか、見下げはてた男になり下がったものだな。」と言うと、言葉をつづけた。


「このワシの一存で、トーウというものによる最低の勝負を認めてやろう。しかし、もし騎士ドレフィスに敗北を期した場合、ワシの権限で、銀河騎士の称号を剥奪はくだつし、銀河騎士団より追放する。よいか。」と念を押した。カンデンは長老の前で、うやうやしくひざまずき「お言葉のままに。」と答えた。


 老師カイゼルは「その言葉、忘れるな。」と捨て台詞せりふをはいた。


 ひざまずいたままのカンデンを後にして、ジンウ長老会と元老院議員団の面々はジンウ寺院の公聴室を退室していった。


カンデン、喧嘩を売る


 カンデンはゆっくりと立ち上がり、フッと息を吐いた。ジンウ長老会に喧嘩を売るていになってしまったが、カンデンには、後悔はなかった。


 カンデンは老師ボーアとの立ち合いのことを思い浮かべていた.。


 老師の間合いに入ろうとしても、迂闊うかつに入れず、身動き出来なくなる、あの緊張感。あの高みに至るときの、武人として感じる、あの高揚感。


 コッポの老師同士の立ち合いが、半日にもおよび、勝敗は一瞬で決し、常に、その差は僅差きんさだという話を、少年ラケアに聞いたとき、カンデンは、胸がおどるような心地を覚えた。 


 今ならそれが、実感として理解、出来る。立ち会う相手が老師ボーアだとしたら、秘儀イチノタチをもってしても、容易に打ち込むことは出来ない。間合いの探り合いとなることは容易に想像,出来る。立ち合いが長引くのは避けられないし、勝敗は一瞬で決し、その差は僅差きんさになることは必至だ。


 果たしてこの境地に至る銀河騎士が、今の騎士団の中にいくたり居るだろうか。カンデンは、今度はため息を吐いた。従者キンタに口訣くけつさずけ、技の完成を急がせなくてはならない。キンタが自ら体得するのが最上だが、今の状況は、それを許さない。


 コッポの秘儀イチノタチを、銀河騎士に伝えることに、非常な困難が伴うことは容易に想像出来た。

 技を体得するための修行は過酷になるに違いない。自尊心の強いものほど、抵抗も大きいだろう。


 ジンウ長老会が、カンデンによる秘儀イチノタチの伝授でんじゅを、受け入れたとしても、ボーア仕込みの、厳しい指導についてこられるものが、何人いることだろう。


騎士団長ドレフィス


 七日の後、従者キンタを伴い、カンデンはジンウ寺院の演武場えんぶじょうに向かった。 


 カンデンの予想に反して、演武場えんぶじょうには、先日の公聴会こうちょうかいつかわされた、老師ガイゼルを含めた、ジンウ長老会の10人の面々だけが、先に到着していた。


 銀河騎士の作法に従い、カンデンとキンタはこうべれたが、それに応えるものは居なかった。


 演武場えんぶじょうは一対の長さが23メルト(1メルト、1メートル見当の設定)ある正方形で、高さが0.5メルトあり、四方に五段の階段が付いている。入口側が下手となり、挑戦者であるカンデンは下手側の階段を上がり、竹製のトーウを右手に、下手に立ち、上手に騎士団長ドレフィスが現れるのを待った。


 背面の扉が開く音がした。騎士ドレフィスが演武場に近づいていることは、当然のことながら、カンデンはジンウを使うまでもなく、知覚していた。カンデンの右手に立っている長老達の無愛想な表情が、一様に、柔らかく変化した。

 

8 

 銀河騎士の正装に身を包んだ騎士ドレフィスが現れると、キンタは彼の前に進み出て、ひざまずき、カンデンが手ずから作った、竹製のトーウを両手で恭しく差し出した。


「このように野蛮やばんなものを。」と毒づいた騎士ドレフィスは渋々、キンタの差し出したトーウを右手でつかみ取り、無造作に何度か、片腕で振り上げ、ビュッと風切り音をたてて振り下ろし「ふんっ、軽いな。」とひとりごとをいいながら、演武場えんぶじょうの角をまわって、上手の階段を上がり、カンデンの前に立った。


 光線剣は、その剣身である光線が、大気をプラズマ化させるために、振り下ろすと抵抗感を感じ、その時にブーンという振動音を発する。マスター・ドレフィスは光線剣と比べると竹のトーウを振り下ろすときの、抵抗感が少ないと評したようである。


ドレフィスの闘気


 カンデンの前に対峙した騎士ドレフィスは、不敵な笑みを浮かべていた。


 銀河騎士団長ドレフィス。多くの戦役に参加し、武功を積み、騎士団長の地位に登ってからは、さらに華々しい活躍をして、その威光は、銀河連邦全体にとどろき、その名を知らないものはいないと言われる男。


 銀河の辺境めぐりを繰り返すばかりのカンデンは、この男のことは、遠くから何度か見たことがあるだけで、近くで対峙たいじしたのは、今回が初めてだった。


 瞳の色は青で、輝く金髪をもち、身長は1.85メルテくらいだろうか、騎士団長に相応しい、威風堂々《いふどうどう》とした体躯をしていた。 


 カンデンはこの男を前にして何を思ったかというと、まず彼が思ったのは、挫折を知らぬこの男のもろさだった。不敵な笑顔を浮かべていることが、さらに底の浅さを感じさせた。


 しかし身のこなしは流石さすがだった。身体の中心軸がブレず下肢の動きに安定感がある。カンデンはあなどる想いを捨て、チハヤフルこころを取り戻した。


10

 カンデンは左手で持っていたトーウを、両手に持ち直して青眼せいがんに構えた。真剣勝負のていであるから、光線剣での真剣勝負と同じく、互いが剣のかわりのトーウを構えたところで、勝負は始まる。


 ドレフィスはトーウを振りかぶって上段に構え、闘気を身体にみなぎらせて、大胆に無造作に間合いを詰めてくる。彼は燃え盛る赤い炎の様な気迫に満ちていた。それに気圧されることなく,カンデンはすり足で少しづづ間合いを詰めてゆく。


 大胆に間合いを詰めていた、ドレフィスの動きが止まった。自分の気迫に少しも怯まないカンデンの、構えるトーウの切っ先が自分の喉に、急に伸びてくるような気がしてきたからだ。


イチノタチ、炸裂す


11

 ドレフィスは自分の皮膚にあわが生じるのを感じた。気づくと頬に一筋の冷汗が流れていた.。彼はカンデンの纏う闘気を感じた。それは静かに燃える高熱の青白い炎の様だった。 


 彼は迂闊うかつに間合いを詰めることも、打ち込むことも出来ない、抜き差しならない状態に追い込まれているのは自分の方だと知り、焦りを覚えた。こんな焦燥しょうそうられたのはいつ以来だろう。それはまだ騎士の従者だった頃のような気がした。

 

12

 カンデン、恐るべし。


 決して目立つタイプではない、控え目で、普段から物腰は柔らかく、印象は薄い。しかし、その男と対峙している現在、その眼には静かでありながら、確乎かっこたる意思が宿っている。その身はこけのむしたいわおのようで、それでいながら、その身から生じる不思議ならぎを感じる。


 この男の懐の深さを甘くみていた自分のことを後悔したが、もう遅い。


 えいっ、ままよ、とすべての気力をふり絞り、一瞬の勝機に賭け、素早い出足で間合いを詰め、カンデンの額にドレフィスは渾身こんしんの一撃をはなった。


 バルンという轟音ばくおんを生じて、唐突とうとつにカンデンのトーウは持ち上がり、次の瞬間、ドレフィスのトーウは右手側にはじかれ、バキンと音を立ててカンデンのトーウがドレフィスの額に打ち込まれた。


 竹の幹を組み合わせた軽いトーウで打たれただけなのに、その重い衝撃で目から火花が出た後、目の前が暗くなり、身体全体がしびれるのをドレフィスは感じていた。


 長老連の誰も異論をはさむことの出来ない、カンデンの圧倒的な勝利だった。


ドレフィス、いさぎよ


13

 カンデンは勝負の後、ドレフィスの前で一礼し、その構えを解きトーウを両手で、持ち直した。両肩が下がるのが見えた。試合の時とは違い、いかにも柔和な様子だ。


 偽物の剣を使う気安い試合だと甘く見ていた上に、カンデンという男の懐の深さを安く見積もっていた自分が、勝負の前からカンデンに既に敗れていたことを、ドレフィスは痛いほどに実感した。


 光線剣の真剣勝負ならどうだ。もう一度、カンデンにいどむことが出来れば、今度こそは油断せずに立ち会う、そうすれば無下に敗れることはあるまい。


 ドレフィスは自分の負け惜しみに苦笑しながら、もう一度、光線剣での真剣勝負の想定をする。何度、繰り返しても、頭から、唐竹割からたけわりに真っ二つなる自分の姿しか思い浮かばなかった。この力量の差にドレフィスは間合いのときに感じた、耐えきらないような渇望かつぼうを再び、感じていた。


 この相手の剣をはじき、ひたいを打つ、この必殺剣の奥義おうぎのことを知りたいと、切望している自分がそこに居た。この技を知るためなら、騎士団長の名誉など、どうでもよくなっていた。


14

 放心したように立ち尽くす騎士ドレフィスの姿にいきどうりを隠さない人物がこの場に一人いた。老師ガイゼルは声を荒げた。「止めじゃ、止めじゃ。このような勝負、ワシは認めぬ。カンデンよ、うぬはどのような魔法を使ったのか?答えよ。」


「私が用いたのは、イチノタチというコッポに伝わる奥義です。」やれやれといった顔をしてカンデンは答えた。この老人の意固地はカンデンをいらつかせる。しかし、こういう想いは隠して、表情をとりつくろえばよいものを、それを隠さないところが彼の面白いところだ。そういう飄飄ひょうひょうとしたところは、コッポの師ボーアに似たのかも知れない。


 カンデンの人を食ったような態度に、老師ガイゼルはますます苛立ち、語気を強めて今度はその矛先ほこさきをマスター・ドレフィスに向けた。


「マスター・ドレフィスよ、そちには光線剣での再勝負を申し入れる覇気はきもないのか、我が弟子ながら情けない。」


 師の言葉に対しての彼の答えは、カンデンにとっても少し意外であった。


「老師、真剣で立ち会えば間違いなく、わが身は二つに裂けましょう。いまの私の技量は、騎士カンデンに遠く及びません。銀河騎士の誇りにかけて、私は騎士カンデンに完全に敗れたことを認めます。」


 自分の立場にこだりのないいさぎよい態度だった。カンデンは彼の底の浅さを感じていた自分を恥じた。そして自分よりはいくつか若いこの男に、確かな伸びしろを感じた。そして、カンデンはこの男に興味を覚えていたのであった。


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