銀河騎士隆盛記 零 地の章(コッポ修行編)13~14 無刀の太刀、如何?
無刀の太刀、如何?
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こうして、カンデンはボーアからコッポに伝わる、秘儀イチノタチ(尾張柳生新陰流の技、落とし面)を授けられ、それを会得した。
ボーアのもとで、また他の技の修行を完成させたいカンデンだったが、ポリ・ラピタ族の水先案内人イムルによって、海を隔てた、南の地よりもたらされた、天然水晶の大きな結晶を譲り受けることになり、そういう訳にもはゆかなくなった。
カンデンには銀河騎士の一員として、出来るだけ早く星間航行船を修理し、銀河連邦の元老院にもどり、辺境恒星系の調査の報告をする使命がある。ザパンに漂着してから、もう二冬の年月が過ぎていた。
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水晶の返礼のために、イムルに自分の光線剣を贈ろうとするが、必要ないと断られ、東の民の族長ダイに贈ろうとするが、ダイはコッポの老師ボーアに贈るのがふさわしいという。
銀河騎士として、ほかの銀河騎士達にコッポの秘儀イチノタチを授けたいという思いもあり、今では、最も尊敬するコッポの師ボーアに、故郷に帰還することを報告し、秘儀イチノタチを他の銀河騎士に、授けるための許可を師に求めた。
ボーアは、自分の課した、厳しい修行を完成させ、それを乗りこえても「和」の心を保つことの出来るものには、技を伝えても良いが、そうでないものには伝えてはならぬと、カンデンを厳しく戒めた。
イチノタチの真髄「チハヤフル」こころを保たねば、それは災いを呼ぶ。そして闇に落ちて「アラブル」こころを持つ者が現われた時は、技を伝えたもの、そしてそれに連なるものが、これを正さなければならぬ、と言い渡した。
そして最後に、アラブルこころをもつものがどれほど強かろうが、チハヤフルこころさえ忘れなければ、負けることはないだろう。恐れることはないと言い。この言葉を口伝として残せとカンデンに伝えた。
そして最後に彼に一つの公題を託した。それは「無刀の太刀、如何?」という謎のような言葉だった。それは中央銀河標準語に翻訳すると、「光線剣なき光線剣は成立するか?」という問いであった。
それから、カンデンはまだ、秘儀イチノタチを会得できないキンタのことについて、師に、口訣(口頭で技の秘訣を与えること。)を与えるべきかどうか問うた。それに対してボーアは、教えてやるがよいと答えた。
ただし、口訣を授けても、技を会得できるかどうかは、本人の修行、次第だと言い、理屈を知っていることと、それが出来るということは、まるで違うことじゃ。と言った。ただ、師は最後に、キンタはやるじゃろう。やつは歩みは遅いが、武骨があると言った。
師の言葉はカンデンにとって、我がことのように嬉しかった。




