銀河騎士隆盛記 零 地の章(PE57QとYWC2+湯治編)86~87 本気の間合い
本気の間合い
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正面からの身切りは、目が邪魔をすると、手ぬぐいでしばって、目を隠して、行った。目隠しをしたコムロはタチを八双に構え、カンデンはコムロのかってタチを切り込んだ。
人生において、乗っている時というものがあるとするなら、今のカンデンがそうであった。カンデンはまさに葉一重の間合いで、コムロの身体を掠めてタチをふるった。胸を掠める時など、乳首の位置を正確に把握して、よけるほどだった。
コムロは稽古の後で、手ぬぐいを外してから「カンデン殿、見事な間合いでした。見切るこちらは、あまりの気迫に身が細る思いでしたぞ。」と感嘆の声を上げて、カンデンの気迫をたたえるほどだった。
カンデンの顔には,会心の笑みが自然に浮かんでいた。「無為自然」思いのままという境地であった。それにただ、自然に従っていたという感じだった。
その横でボーア老師は意地の悪い笑みを浮かべて「キンタよ師のカンデンに御する間合いのタチをふれるかな?」と謎かけをして、キンタを挑発した。
その言葉に答えて、目隠しをしたボーア老師に向かって、キンタは真剣に真摯にタチをふるった。その結果、ボーア老師の頬や、肩や、胸、腹に、全部で五か所に切り傷をつけることになってしまった。
他のところは皮一枚と言う、かすり傷であったが、胸の傷は、アシナシ様が糸で縫合するくらいの傷で、そこにはカネノカタの手で絆創膏が張られた。その横で、何度も詫びるキンタを、おいたをした孫をあしらうように、ボーアー老師は「この程度の傷、傷の内にははいらぬ。」とフっと笑って強がって見せた。
ボーア老師の傷の処置を終えた一行は、フツを手伝って、湯治用の屋敷を片付け、荷物をまとめて山を下りることにした。一行が山を下り始めた時、足元の雪は解け始めていた。
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山を下り、夕焼けの赤い光を浴びながら、カンデン一行は、雪の平原を横切った。さながら、一行は雪解けの使者という感じだった。一行が通った後は雪が二つに割れて、雪が消えていた。
サンマナの集落に戻って、コムロの一旦、屋敷に集まった時、カンデンとキンタにフツが湯治の為の食料の残りを分けてくれた。燻製のカモを二匹渡してくれた。二人が自分達の屋敷に戻った時には日はとっぷりとくれていた。ただ、月がすぐに出たので困らずに済んだ。
カンデンは持っていたオイルライターで、炉壺のシンに火をつけて、カマドに火を起こした。土器に水がめから水を入れて、白湯を沸かした。その火が燃えて消えて熾火になった時、燻製のカモを焙った。二人は、その日の夕食は焙ったカモと白湯で済ませた。




